Vol.2 No.3 2009
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−249−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)報告:学問と技術の統合- 横幹連合・統数研・産総研合同ワークショップ -まり重要視されていなかったようなところで、2つのディシプリンの知識をもって新しく何か研究が進められる領域が見つかってきたときに、そこを学際と言うのだろう。融合というのは、その学際領域が発展し自立して、1つの領域を作ってしまった状態を言うのだろう。そのように考えています。では、横断(横断型基幹科学技術)とは何か。従来の縦型とも言える物理や機械や土木の分野に、統計や最適化や制御と言った異なる原理をもつ科学技術が横串を通すように使われる。するとそれは “領域フリー”の分野であり、横型分野とも横型学問とも呼べる、これが横断の1つ目の定義だろうと考えられます。吉川産総研理事長(当時)の唱える「領域無限定の科学」に相当するでしょう。縦型と横型の接するところで新しい課題がずいぶんたくさん生まれていますが、この他にもあるのではないかと横幹連合の中で議論になりました。縦型の学問分野の知識を総合して何かを解決する、あるいは俯瞰してものを見る。融合をさらに広域化したような、マルチディシプリンの考え方です。これが横断の2つ目の定義です。さらに、縦型・横型それぞれの分野の知識や技術を融合・統合して、新しい社会的価値を生み出そうとする学問を横断であると捉える第3の定義もあります。それを3つの軸で、第1軸に従来の縦型学問分野、第2軸に横型学問分野、第3軸に技術の社会化という軸で表すといいのではないかと議論したのです。ところで、最初は横型の学問という考えで集まったのが横幹連合でもあるのですが、横型の学問同士の融合もあるはずで、その原理は何か、それを社会的な価値へと高める、社会的なアウトプットを出すための技術があるだろうと考えるに至りました。そういうところこそ横断型基幹科学技術であると言うべきだとすると横型の学問というのは、横断型基幹科学技術の基礎科学であると認識されました。知の統合の事例について、インタビュー調査をもとにして紹介します。1つは内閣府からの委託による 「イノベーション戦略に係る知の融合調査」で、企業、大学、公的研究機関を含め、27の事例を調査しました。プロジェクトリーダーや経営幹部に、イノベーションがどうやって起こり、そこに知の融合・統合がどう関わったかということを尋ねて報告書にまとめたものです。もう1つは横幹連合の中に作った 「横断型人材育成推進」に関する調査研究会において、横断型人材がいた場合のイノベーションの成功例、横断型人材の能力や適性、企業内での横断型人材の育成などを約10の企業にインタビューをしてまとめている報告書です。1例目はある電線メーカーにおける光ファイバーの開発事例で、ガラスをコアにした光ファイバーの製造に関するものです。この開発で実際に役立ったのは実は樹脂系技術で、これにより長大かつ大量の光ファイバー製造が可能になりました。また、解析には自ら持っていたシミュレーション技術が活きたようです。開発の中心人物の専門は電子工学で、業務上必要な技術としてガラスやセラミックスを独学で勉強したということで、このような人材がいてはじめて新しい技術が確立されたと言えます。また、製品ではなく商品、つまり“売れる”ものを作るという考え方が重要であって、要素技術、生産技術、商品開発技術のトータルでテーマを選定しています。マーケティングもポートフォリオ分析も研究ステージの管理も導入していますので、これらの知の総和が成功につながっています。2例目はある電子機器メーカーでのデジタルカメラの開発事例です。従来の光学式カメラではできない新しい機能を付加するため、液晶モニターをつけたり、コンピュータにつなげるようにしています。デジタル化により小型化、低価格化もできました。このメーカーはもともと電卓やデジタル時計、電子辞書などを手がけていたのですが、画像には圧縮率の高いJPEGに着目し、また、技術者自身が市場に出かけてユーザーのニーズ調査をしたところ「撮った画像をその場ですぐ見たい」とのユーザーの意向がわかり、それならば液晶モニターをつけようという発想になったようです。コンピュータに画像を取り込める特徴を活かすため、商品としてのデジタルカメラをパソコン売り場で売り出したことも成功の一因と考えられます。異分野の知を導入することが必要なのだということがわかります。企業風土の点では、この会社にある「消費者の求める、消費者が喜ぶ製品を作る」という意識、異分野の技術者を含めて自由に討議できる雰囲気、技術者が商品の企画や開発にまで関わる体制が特徴として挙げられます。これにより横型の連携がとれ、複合型の技術を創出しやすくなり、成功につながったのでしょう。まとめてみますと、新たな課題の多くは縦と横の接点で起こっている、また、社会的な価値を創出することで課題縦型分野(第1軸)横型分野(第2軸)横型分野の融合化横断型基幹科学技術とは?縦型分野と横型分野の知識や技術を融合化・統合化して、社会的な価値を生み出す学問分野横断型基幹技術社会的価値経済的価値技術の社会化(第3軸)知的資産の増大制御情報システム最適化統計生物物理機械電子土木
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