Vol.2 No.3 2009
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−246−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)報告:学問と技術の統合- 横幹連合・統数研・産総研合同ワークショップ -した。産業界からもポジティブな意見をいただいています。今後のSynthesiologyの展開においては、論文を一層充実させ、産業界や大学の方々にも広めていきたいと考えています。他の学会、組織の皆さんとどのような関係を持ち、連携していくかは、今後の課題です。第1種基礎研究論文投稿査読・ピアレビュー② 政府(経済産業省等)(研究のスポンサー)研究資金学術論文誌③ 公的研究機関、大学(研究者)税金ニーズの提示④ 学会(研究者)① 国民、産業界(研究成果の受益者)研究成果の国民・産業界への還元プロセス新しい学術誌論文化第2種基礎研研究“一般化製品”「製品」、統合技術、リスク評価書、技術規格、計量標準、標準物質、データベース、地質図、特許「個別適合メガネフレームの製造・販売支援技術」産総研デジタルヒューマン研究センター副研究センター長シンセシオロジー編集委員 持丸 正明構成学の研究の論文化についてメガネフレームの設計・製造・販売を例にして述べたいと思います。このメガネフレームは個別適合を目指したものですが、要点は 「あなただけ」を「だれにでも」です。初めに産業化に伴って生活の質が向上すると我々の背が高くなることを指摘しておきます。明治以降、特に戦後、日本人の平均身長が伸びています。ただ全員の背が伸びたのではなく、実は今はいろいろな身長の人がいるという時代です。平均寿命の伸びも併せ考えてみると世代間での大きな身長差が生じている時代とも言えます。こうなると同じものを大量に作って大量に売ることができません。そこで私は「あなたの身体を測って合うものを作り提供しましょう」と考えました。そういうサイクルを回すと人の身体のデータが集まり蓄積できます。データが社会的に蓄積されると「あなただけ」から「だれにでも」に変えることができます。私たちが目指すのはマスカスタマイゼーション(Mass Customization)で、多くの人の個別の注文に応じてものを作ることです。店と工場が一緒になっている、そんなスタイルです。メガネの例では、店で顔を測って、サイズに応じてメガネを選び、どのように似合うかをシミュレーションして、ファッション性とフィット性の両方を推奨できるものを作ろうということになります。ただ、このシナリオの中にはいろいろな技術を含みますし、数多くの外部との共同研究が全部寄り集まっていますので、プロジェクト報告書としてまとめることができません。技術としては、まず測る、それをモデル化・統計処理し、ものを作って売る、その過程でデータを継続的に蓄積してデータバンク化する、そういうことです。それら全体の“構成”がシナリオになります。かつて経済産業省の委託研究で開発した頭部形状計測システムは、短時間に精密に人の頭部を、しかもあごの下や耳の後ろなども測れます。12台のカメラを備えたとても大きな機械です。耳の後ろは、メガネのつるがかかるところでとても重要です。測ったデータをモデル化しますが、データ自体は点群情報(座標値)にすぎません。メガネ設計に活かすには解剖学的な情報やメガネとの相対的位置関係の情報を加える必要があり、そうすることにより、コンピュータで設計可能な状態になります。具体的にはメガネ設計に重要な特徴点を利用し、全体で211点、366ポリゴンという多面体を構成します。どの人も366個のポリゴンで、何番目の点は必ずどこに対応するというのが全部一致していますからとても筋の良いデータになります。これで目鼻の距離を出したり、平均値や標準偏差を求めたりといった統計処理が可能になり、形状の個人差の分布図を表すこともできます。実際に日本人男性56人の顔形状を計測し、第1軸に“頭部の奥行きと彫りの深さ”、第2軸に “顔の幅と眼窩の高さ”の情報を入れて2次元で分布図を作成してみると、これで80数%の個人差を表現できることがわかりました。情報を増やしていくと、5次元で90数%になります。つまり耳の位置と骨の位置はメガネ設計に重要で、2次元でも大きな特徴を捉えれば、相当な範囲の個人差をカバーできます。このように統計処理したものに新たなサイズ分類を加え、メガネメーカーと共同してメガネフレームを作りました。その際、合理的な説明はできないのですが、メーカーにとって幾つ作れるのかはとても大事なので、製造と流通にかかるコストを勘案しつつ、顔形状の特徴で個人差を4つのグループに分けました。どのグループについても出荷量が同じくらいになるよう調整されています。次に、作ったメガネフレームの適合性評価を行いました。圧迫力とかずれ量、そしてフィット感を伴う心理評価です。新しいフレームは顔形状にぴったり合っているので、圧迫力が小さくても、頭を振ってもずれたりしません。このことはメガネをかけたとき、古いフレームと新しいフレームとで受ける感じが劇的に違うことでわかります。しかし、驚いたことに総合的なフィット感になると予想したほどの違いが出
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