Vol.2 No.3 2009
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シンセシオロジー 研究論文−237−Synthesiology Vol.2 No.3 pp.237-243(Sep. 2009)1 はじめに日本には、高度成長期に作られたコンクリート構造物などの社会インフラや工場プラントなどが多く、これらの老朽化が問題となってきている。これらを安心して使用するためには、検査機器をその場に持ち込み、ものを壊さずに劣化状況を検査する非破壊検査法が必要とされている。非破壊検査法には、超音波を使うもの、電磁波を使うもの、X線・放射線を使うものなど様々な方法がある。この中でも特にX線透過法は、人体のレントゲン検査と同様に検査対象物の内部の透過イメージを得ることができ、検査結果がわかりやすいことから、様々な分野で利用されている。しかしながら、X線透過法でプラント配管の減肉検査などを行おうとすると、材質が鋼製の配管は高いエネルギーのX線が必要で、それに対応するX線源は大きく重く、狭い箇所の検査が難しいという問題があった。また、出力の大きなものはヒーター・フィラメントの余熱の時間が長く使いたい時にすぐ使えない、エネルギー消費が大きいという欠点もあり、利便性が悪いためにX線透過検査がなされない場合も多い。これらの問題が解決されれば、検査機会が増え、事故や故障の確率を減らすことができると考えられる。そこで、筆者らは、乾電池のようなどこにでもある電源で駆動できて持ち運びしやすく、100 keV以上の高エネルギー高出力X線を発生できる可搬型X線発生装置の開発を目標として設定し、開発を行ってきた。その結果、カーボンナノ構造体を電子源とした乾電池駆動高エネルギーX線発生装置の開発に成功した。このX線発生装置は、単三乾電池わずか1個でも100 keV以上のX線を発生し、条件によっては100枚以上の高精細X線透過像の撮影が可能であり、可搬型X線源として実用になる。これを利用すれば、交流電源や重いバッテリー無しに、その場にX線源を持ち込んでX線透過検査が可能になることから、新しい非破壊検査用X線源として期待される。本稿では、開発した乾電池駆動高エネルギーX線発生装置について述べるとともに、従来から行ってきた研究がいかにこの成果に結びついたかについて考察する。鈴木 良一電子加速器の小型化及び省エネルギー化、乾電池駆動超小型電子加速器という産総研の有する要素技術と、企業が開発したカーボンナノ構造体電子源の技術を統合することによって、単三乾電池1個で駆動し、100 keV以上の高エネルギー高出力X線を発生でき、高精細なX線透過像を得ることができる実用的な可搬型X線発生装置の開発に成功した。本稿では、これらの要素技術について述べるとともに、各要素技術がいかに成果に結びついたかについて考察する。乾電池駆動可搬型高エネルギーX線発生装置の開発− X線非破壊検査におけるイノベーションを目指して −Ryoichi SuzukiDevelopment of battery-operated portable high-energy X-ray sources - Innovation in X-ray non-destructive-evaluation -We have developed a practical portable high-energy X-ray source, which can generate high energy X-rays with energies greater than 100 keV enabling the taking of high-definition X-ray transmission images using an R6(AA) battery as a power source. This result is a consequence of the integration of the compact and energy-saving electron accelerator technologies of AIST and the carbon nanostructure technologies of private companies. In this paper, we discuss these elemental technologies and how to integrate them.キーワード:X線、非破壊検査、乾電池駆動、電子加速器、省エネルギーKeywords:X-ray, non-destructive evaluation, battery operated, electron accelerator, energy saving産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2Research Institute of Instrumentation Frontier, AIST Tsukuba Central 2, 1-1-1 Umezono, Tsukuba 305-8568, Japan E-mail: Original manuscript received May 15, 2009, Revisions received July 14, 2009, Accepted July 16, 2009

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