Vol.2 No.3 2009
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研究論文:ガス中微量水分測定の信頼性の飛躍的向上(阿部)−231−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)に対して行った、予備的な性能試験について紹介する。5.1 CRDS微量水分計の性能試験3.2.2で述べたように、標準確立の過程でCRDS微量水分計が高性能であることが明らかになった。図13に発生装置で発生させた微量水分をCRDS微量水分計で測定した例を示す。応答性・安定性よく測定できているのが分かる。これは逆に、産総研の微量水分標準の応答性・安定性のよさの実証にもなっている。CRDS微量水分計は1 nmol/mol(ppb)程度までの測定が可能で、12 nmol/mol(ppb)~1400 nmol/mol(ppb)の範囲において優れた直線性を示すことも標準との比較で確認された。5.2 他の市販計測器の性能試験従来から使われていた鏡面冷却式露点計についても、一部の機種について同様の性能試験を行った。試験した鏡面冷却式露点計は2社の製品で、カタログ記載の測定範囲の下限は両製品とも霜点−100 ℃(14 nmol/mol(ppb))以下となっている。結果を図14に示す。今回の試験では、A社の製品は指示の正確性と安定性に問題が見られ、B社の製品は応答性と正確性に問題が見られた。鏡面冷却式露点計は霜点を直接測定できるので、湿度の計測器としては最も信頼性が高い装置であるが、微量水分領域になると、いかに鏡面冷却式露点計といえども測定が容易ではないことが今回の結果から分かった。微量水分計として最も普及している従来型の酸化アルミ静電容量式センサーについても、一部の機種について性能試験を行った。試験したのは5社の製品で、カタログ記載の測定範囲の下限は全て霜点−100 ℃(14 nmol/mol (ppb))以下となっている。センサーへ流すガス流量は0.6 L/min~1.0 L/minとし、センサー部に吸着している不要な水分を除去するため、実験を始める前に12 nmol/mol(ppb)の微量水分を使って1ヶ月間以上のパージ(残留水分除去)を行った。パージ期間を長くしたのは、従来型酸化アルミ静電容量式センサーは乾燥を要する工程などで水分検出用の警報器としてよく使われており、通常センサー部は非常に乾燥した雰囲気内に長い期間置かれているので、それに近い状態で性能を調べるためである。試験は約12 nmol/mol(ppb)~100 nmol/mol(ppb)(霜点約−100 ℃~−90 ℃)の範囲で行った。5社のうちの1社の製品は測定レンジ以下とのエラーが表示されて測定できなかった。残りの4社の製品の結果を図15に示す。今回試験を行ったこれらのセンサーには、指示の応答性、正確性、感度に問題があることが分かった。同様の試験がBOC Edwards社とNPLの共同研究によっても行われており、そこでも300 nmol/mol(ppb)→850 nmol/mol(ppb)の水分濃度変化に対して応答に8時間以上かかる機種があることが報告されていた[24]。従来型の酸化アルミ静電容量式センサーは、酸化アルミニウム細孔内での水分の吸着平衡を利用するので、微量水分領域では平衡に達するまでに長い時間を要し、そのため応答が遅くなるものと推測される。したがって、微量水分領域での測定のためには、応答性を高める技術開発が必要と考えられる。従来は微量水分標準がなく、また微量水分領域で水分濃度を素早く変更させることも難しかったので、微量水分計の性能、特に応答性については高い信頼性で試験する方法がなかったが、微量水分標準の整備と微量水分発生技術の発達から、近年それが技術的に可能になってきている。測定時間 / h測定時間 / h物質量分率 / (nmol·mol-1)物質量分率 / (nmol·mol-1)A社製品B社製品標準値指示値標準値指示値002040600100200010020030040050100150標準値指示値1501001005000200測定時間 / h物質量分率 / (nmol・mol-1)図13 微量水分標準とCRDS水分計の指示との比較図14 微量水分標準と鏡面冷却式露点計の指示との比較

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