Vol.2 No.3 2009
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研究論文:ガス中微量水分測定の信頼性の飛躍的向上(阿部)−230−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)と拡散管セル内の水の温度(室温によって変化する)に差が生じて観測されたものと考えられる。これらの詳細については文献[23]で議論しているのでそちらを参照されたい。発生槽の温度がよく制御されているように見えたので、拡散管セル内の水の温度も同様に制御されていると思い込み、このような不確かさ成分があることに最初は気付かなかったが、以上の実験から、u(N)に含まれるu(ai)として室温変動があることが分かり、その感度係数も実験的に求められた。(3)および(4)式にある他の物理量に関しても同様に実験・考察を行ってこの2つの式を完成させていく作業が不確かさ評価となる。その際、結果を整理し見やすくするために、不確かさの評価をまとめた表を普通作成する。この表が完成すれば、不確かさ評価は完了となる。詳細部分は省略するが、本研究で完成させた不確かさの評価表を表2に示す。標準確立における不確かさ評価は、装置開発と同等かそれ以上に難しい作業である。3.4 微量水分標準の確立のまとめ 3.2.1~3.2.3で示した研究成果などから最終的に、12 nmol/mol(ppb)~1200 nmol/mol (ppb)(大気圧下での霜点が約−100 ℃~−75 ℃に相当)の微量水分発生が可能な微量水分発生装置の開発に成功し、発生範囲に関する目標が達成できた。また不確かさに関しては、12 nmol/mol(ppb)における相対標準不確かさの目標値11 %に対して、表2から分かるように3 %程度で実現されているので、こちらも目標が達成できた。これらによって微量水分標準が目標どおり確立された。 本研究においては、測定装置の選択が極めて重要であった。磁気吊下天秤、CRDS微量水分計、臨界ノズル式流量計の導入がなければ、微量水分標準の確立は大変厳しかったと考えている。CRDS微量水分計と臨界ノズル式流量計は当初は導入を考慮していなかった装置だが、最初に使用した別の装置の問題点に比較的早い段階で気付くことができ、その後の早い時期に新装置の導入を行えたことが開発の成功につながったと考えている。また、本稿では記述を省略したが、装置導入前には製造業者と特別仕様に関する打合せを何度も行い、導入後も必要に応じて装置改造を行うなど、本研究に特化した測定装置作りに注力したことも成功の鍵だったと考えている。4 校正サービス体系の整備本研究で確立した微量水分標準に基づき、産総研は2007年5月より、12 nmol/mol(ppb)~240 nmol/mol(ppb)(大気圧下での霜点が約−100 ℃~−85 ℃の範囲に相当)の範囲で計測器の校正サービスを開始した。2009年5月に校正範囲を拡大し、現在は12 nmol/mol(ppb)~1200 nmol/mol (ppb)(霜点約−100 ℃~−75 ℃に相当)の範囲で校正サービスを行っている。また、(財)化学物質評価研究機構は、磁気吊下天秤無しの拡散管方式微量水分発生装置を整備し、CRDS微量水分計を仲介標準器として産総研へのトレーサビリティを確保する方法で、2009年7月より12 nmol/mol (ppb)~1200 nmol/mol(ppb)の範囲で校正サービスを開始した。5 高性能な微量水分計測器微量水分標準と校正サービスの整備が行われても、高性能な微量水分計測器がなければ信頼性の高い測定を行うことができないため、それを見いだす作業が必要となる。ここでは微量水分標準に基づき市販の微量水分計の一部0.430.440.531.62.12.95.22.20.530.780.420.350.3000.3000.3000.3000.3000.3002.3760.9900.1980.0990.0400.0240.2490.1040.0210.0590.0240.0144.6021.9180.3840.7150.2860.1721200.0500.0100.0050.0020.0012.00 標準値不確かさ成分 ・水分蒸発速度・吸着・脱離水分・乾燥ガス流量・ゼロガスの残留水分合成標準不確かさ相対合成標準不確かさ [%]*単位は全てnmol/mol(相対合成標準不確かさを除く) 質量減少速度 / (µg・h-1)物質量分率 / (nmol·mol-1)温度 / ℃温度 / ℃24262830242628309510011.012.0(b)(a)0.925 nmol / (mol℃)→0.132 µg / (h℃)0.142 µg / (h℃)13.0図12 水分蒸発速度の室温依存性転載許可を得て文献[23]から転載表2 微量水分発生における不確かさの評価表
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