Vol.2 No.3 2009
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シンセシオロジー 研究論文−194−Synthesiology Vol.2 No.3 pp.194-200(Sep. 2009)1 研究の目的と背景我が国は地震の多発国であり、毎年のように大きな被害がもたらされている。特に活断層の活動による地震は、内陸部の地下浅い場所で発生するため、被害がより甚大になるという特徴がある。したがって、活断層から発生する地震を少しでもより適確に予測できるようにすることが、効果的な地震防災を行うという観点から非常に重要なことである。近年、全国的規模で活断層の調査研究が推進され、多くのデータが得られているが、それらに基づく将来予測についてはまだ十分なものとは言えない。しかしながら、十分に確からしい情報でなくても、現時点において可能な限り合理的かつ統一的な考え方に基づいた情報を社会に発信することは、一研究者としてまた地質の調査をミッションの一つとしている研究機関として非常に重要なことと考え、本研究を実施した。活断層とは、過去から繰り返し活動し、今後も活動して大地震を発生させる可能性のある断層のことである。その活動の繰り返し間隔は、通常千年から数万年と非常に長い。1回の地震の際に断層がずれ動く量は数メートル程度であるが、数万年、数十万年と繰り返し同じ方向にずれ動くことにより、数十メートル、数百メートルのずれが累積し、その結果、そのずれが上下方向であれば隆起する側は山地となり、沈降する側は盆地や平野となる。また横ずれ(水平方向のずれ)であれば、谷や尾根が大きく屈曲する。このような地形学的観点からの活断層の研究は、1960年代から70年代前半にかけて急速に進展した。その背景には、日本列島が太平洋のプレートに押されて圧縮されているというプレートテクトニクスの考え方が普及したことがあげられる。すなわち、活断層の活動によって、日本列島の山地や盆地の地形が発達してきたというわけである。このように、活断層研究は、「なぜ山は高いのか?」という地形学、地質学の究極のテーマの一つを解明しようという研究としてスタートしたのであり、これが第1種基礎研究と位置づけられるということができよう。その一方で、活断層の活動により大地震が発生するという観点から、活断層の過去の活動時期と活動頻度から将吉岡 敏和活断層の過去の活動から将来の地震発生を予測するため、活断層を固有の活動繰り返しを持つ活動セグメントという単位に区分し、それぞれの活動セグメントがあるときは単独で活動し、あるときは隣接する活動セグメントが連動するという「カスケード地震モデル」を採用した。これにより、野外での調査結果に矛盾することなく、統一的な基準により活断層の将来の活動確率を評価することが可能となった。その成果を「全国主要活断層活動確率地図」として公表した。活断層からの地震発生予測− 活動セグメント固有カスケード地震モデルによる活断層の活動確率予測 −Toshikazu YoshiokaEvaluation of earthquake occurrence from active faults- Evaluation of rupture probabilities of active faults using the Cascade Earthquake Model based on behavioral segmentation -In order to assess the probability of the occurrence of future large earthquakes based upon the past activities of active faults, we divided active faults into behavioral segments, and adopted the cascade earthquake model, that is, a model that considers that an earthquake is sometimes caused by a single segment and sometimes caused by multiple segments. Using this model, we can evaluate the rupture probability of active faults by a uniform standard without any inconsistencies with field data. The result was published as the Rupture Probability Map of Major Active Faults in Japan.キーワード:活断層、地震、予測、活動確率、活動セグメントKeywords:Active fault, earthquake, assessment, rupture probability, behavioral segment産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター 〒305-8567 つくば市東1-1-1 中央第7Active Fault and Earthquake Research Center, AIST Tsukuba Central 7, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8567, Japan E-mail: Original manuscript received March 5, 2009, Revisions received July 6, 2009, Accepted July 7, 2009
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