Vol.2 No.3 2009
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研究論文:ガス中微量水分測定の信頼性の飛躍的向上(阿部)−229−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)かさが急激に増大する。そのため、本研究で必要とされる流量範囲を小さい不確かさで測定するには、複数台の流量計を準備し、その全てに対して校正を行う必要があった。さらに、図8で見られた標準値と指示値の差は、主に流量測定の不確かさからくるものと考えていた。以上の理由により、2005年の前半頃から、別原理のより信頼性の高い流量計の導入を考えるようになった。気体小流量の測定で、最も信頼性の高い流量計は臨界ノズル(音速ノズル)式質量流量計[19][20]と考えられる。市販用の臨界ノズル式流量計については、計量研究所と流量計製造業者の共同研究による開発が行われており[21]、2000年頃から販売が開始されていたので、これを2005年に導入し、JCSSを利用して国際単位系へのトレーサビリティの確保も行った。気体の圧力・温度の測定データとノズル形状に関するデータを使って流量を独自に計算し、流量計の指示と比較することで動作原理の確認をした。この流量計を使った実験を行い、流量制御法に改良を加えることで、0.15 %以内の標準不確かさで流量制御が可能であることが確認できた [22]。図10はこの流量計導入後に行った標準値との微量水分計の指示値の比較実験の結果である。図8と同じように標準値と指示値の差を相対値で示している。図8で最大11 %だったものが全て6 %以内に収まっており、またその差もほぼ一定となっているのが分かる。この差については、CRDS微量水分計で使われている、水の吸収断面積の温度の影響も含めた不確かさで説明できることが分かっている[22]。3.3 不確かさの評価xwの標準不確かさu(xw)は、(1)式右辺の物理量の間に相関がないとして、 (3)と表される。ただし、右辺のu(A)は物理量Aの標準不確かさを表す。u(A)はさらに、u2(A)=c12u2(a1)+c22u2(a2)+… (4)の形で表される。ただし、ciは感度係数でu(ai)は物理量aiの標準不確かさを表す。ciは理論的な考察から決まる場合もあれば、実験的に決める場合もある。また、どのような物理量の不確かさを(4)式のu(ai)として考慮するかも重要である。小さなものは無視してよいが、無視できる大きさかどうかは時間をかけて調べてみるまで分からないことが多々ある。また無視できると思っていたものが、実はそうではなかったというケースもある。一例を挙げると、水分蒸発速度の測定を複数回行うと測定値にばらつきが見られるが、そのばらつきが発生槽の温度と発生槽内の圧力のばらつきでは説明できないことがあった。長期間のデータを集めたところ、室温の変化との間に相関が見られたので、エアコンを使って室温を意図的に大きく変化させる実験を行った。図11に室温と発生槽の温度を示す。室温を変化させても発生槽温度には変化がないように見えるが、この間に磁気吊下天秤で測定した水分蒸発速度は図12(a)に示されたように室温に依存して変化しているのが分かる。これが温度変化による磁気吊下天秤の指示への影響のせいではなく、確かに水分蒸発速度の変化によるものであることは、図12(b)に示されたCRDS微量水分計の測定データを見ると理解できる。すなわち、CRDS微量水分計の測定値も室温に依存して変化している(CRDS微量水分計の測定値の温度の影響は補正してある)。図12(a)と図12(b)の実験からそれぞれ求めた室温変化に対する蒸発水分量変化の感度係数はよく一致した。この現象は、発生槽に流れ込む窒素などを通じて外部から発生槽内へ熱流入が起き、それによってモニター用温度計がある場所の温度(設定値付近で制御されている)差の相対値 / %物質量分率 / (nmol·mol-1)0105-10-5020050100150250 測定時間 / h温度 / ℃010030020024282630RoomGenerator図10 臨界ノズル式流量計導入後の標準値と指示値の差(相対値)[(指示値−標準値)÷標準値]×100を示している。図11 室温変化に対する発生槽の温度変化u(xw)FFF2=u(N)u(Nb)Nu(F)u2(xb)222+++

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