Vol.2 No.3 2009
35/74

研究論文:ガス中微量水分測定の信頼性の飛躍的向上(阿部)−225−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)3 微量水分の国家標準の確立微量水分の国家標準は、 標準値の分かった一定の水分を含むガスを発生させる装置(微量水分発生装置)と、その標準値の不確かさ評価を行うことで実現される。国家標準を確立するとき、一般に、自国の国家標準器を外国の国家標準器で校正してもらうことで最終的に国際単位系にトレーサブルにする場合があり、開発途上国はこの方法をとることが多い。一方多くの先進国では、一次標準と呼ばれる自ら国際単位系に直接トレーサブルな標準を開発する。技術力、経費、国内産業のレベル等を総合的に勘案してどちらにするかを決めるが、我が国の場合高度な半導体産業やプロセス産業を有することから、産総研としては自ら一次標準を開発することとした。その上でさらに重要な決定は、微量水分発生装置の発生方式の選択を行うことであった。ここで産総研は、他国の標準研究機関とは異なる非常にユニークな選択を行った。その理由は、我々がユニークな方式の具体的構想をもっていたこと、ユニークな方式がうまくいけば世界最高精度を達成することも不可能ではないこと、また世界的に見て異なる複数の方式で国家標準を維持したほうが、1種類の方式で統一するよりも、標準の信頼性を高められることである。3.1 発生方式の選択微量水分の発生にはいくつかの方法があるが、産総研は拡散管法と呼ばれる方式を採用した。図4は、拡散管方式微量水分発生装置[5]の概念図を示している。ステンレス等の金属を材料とした、水溜めと拡散管からなる拡散管セルを、温度・圧力が制御された発生槽内に入れる。セルの水溜め内部には水が入れてあり、中の温度に応じた圧力の水蒸気が発生している。水蒸気は拡散管の中を通り発生槽内へと移動する。これを流量制御された乾燥ガスと混合することで、微量水分を発生させる。ガス中の水の物質量分率は、単位時間に蒸発した水分の質量測定(水分蒸発速度の測定)と単位時間に流れた乾燥ガスの質量測定 (質量流量の測定)から決定する。一方、産総研以外の他国の標準研究機関の多くは、低湿度・微量水分発生装置の中核に霜点発生法と呼ばれる方式を採用している。図5に霜点発生装置の概念図を示す。温度一定の氷の水蒸気で飽和している飽和槽内にガスを流し、水蒸気とガスとを混合することで湿潤ガスを発生させる。飽和が完全となり平衡状態が実現していれば、氷の温度と等しい霜点の湿潤ガスが発生する。低温の氷(−75 ℃以下)を使えば微量水分の発生も可能である。発生ガス中の水の物質量分率は、氷の温度測定と発生槽内の圧力測定、それに氷の蒸気圧式と水蒸気増加補正係数用語3 [6][7]を使って決定する。簡単な原理だが、湿度の発生法としては信頼性が高い方法である。表1にこれら2つの方式の長所・短所の比較を示す。拡散管法の長所として、霜点発生法で必要とされる飽和の実現・確認が不要というのがある。霜点発生法では飽和槽での完全な飽和が前提となるが、低温領域へ行くほど、氷からの蒸発水分量が少なくなることや、蒸気圧が温度変化に敏感になることから、外乱の影響を受けやすくなり、平衡状態の実現が困難になる。さらに、飽和が実現されていたとしても、その確認を行うことは容易ではなく、そ温度圧力制御乾燥ガス(N2)ガス中微量水分拡散管セル拡散管水溜めガス中微量水分氷気体熱交換器温度一定飽和槽ありなし一次標準としての実績必要なし必要ゼロガス必要なし必要微小な質量変化の測定必要必要必要なし蒸気圧式と水蒸気増加補正係数必要なし飽和の実現と確認霜点発生法拡散管法発生方式図4 拡散管方式微量水分発生装置の概念図表1 拡散管法と霜点発生法の比較図5 霜点発生装置の概念図

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です