Vol.2 No.2 2009
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−178−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)座談会:シンセシスな研究について遠藤 私はインクジェットを使ってプリンタブルデバイスをつくる研究をしています。読んだ論文は『フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発』(1巻3号)で、光技術研究部門の鎌田さんらが執筆した論文です。ユーザーが自分の欲しいものを自分でつくるという、「だれでもデバイス、どこでもデバイス」というコンセプトを立てて、そこから技術的な課題の発見、技術課題への対処、試作という、実用化までの流れについて書いてあります。これは「研究のスピードを上げる」技術課題を設定し、どのような解決方法で、最終ゴールまで向かっていくかという内容の構成の論文だと思いました。赤松 自分の研究に近い論文を選んだのは岡崎さんと長田さん、他の方は自分の研究に直接関係ない論文を選んだわけですが、参考にしたいと思ったことなどありますか。巨大産業の製造を“見える化”する居村 半導体製造プロセスという巨大産業の製造の見える化が非常に重要だと思っています。新しい技術を導入するときの費用対効果やリスクを含めて、将来の経済や環境負荷も考慮に入れて、導入すべきかどうかということが今はわかるような形で示されていないと思うのです。そういう意味で、北さんらのグループがエクセルギーという、自然科学に基づいた根本的な視点で評価しようというのに非常に興味を持ちました。CO2の排出量や設備投資額という、経済的には評価されないところに自然科学的なツールを使ったことが非常におもしろい。これまで自然科学を通した勉強をしてきた私にとって参考にすべきところがあると思いました。赤松 北さんらの論文は、環境負荷というマクロな観点で、製造システムを製造工程に分けて評価できる指標を提供するというものですが、これは、もの自体の性能ではなくて、いかに製品として製造するという観点でものを見るということですね。加藤さんが選んだ大串さんの論文も、安全性や有効性の標準化によって産業化を促進するというプロセスの意味では製造だと思うのですが、どうですか。加藤 目的の細胞を人体から取り出してまた再移植する上で、完全な無菌条件下での操作や、従来の細胞計測技術にとらわれない新しい計測技術の開発が望まれます。大串さんはそれだけに留まらず、そういった新しい技術を導入するに当たっての細胞評価法の規格化(国際標準化:ISO)に積極的に取り組まれていたのが印象的です。再生医療という分野の問題点がいくつか指摘されていたわけですが、こういった「製造」に至るまでをISOによる基盤整備として取り組みつつ、数十人に対して既に臨床試験の段階まで検討を行っていることに興味を持って読みました。赤松 菅沼さんの読んだ明渡さんらの論文も製造関係ですね。菅沼 AD(エアロゾルデポジション)法の論文の中で説明されている技術の構成モデルは、核になる技術があって、それが実際に実用化につながるような道筋として応用課題を選んでいくものです。企業など実利を得る組織の中では数限りなく基礎的な技術要素があって、その中で何か一つ本当にものになりそうな要素を選んで、それを育てていくという道筋をつくることは日常的に行われている作業ですが、産総研や大学では、それぞれの人がいろいろな基礎的な研究をしていますし、AD法に相当するような課題を持っている方もいるし、そうではない場合もある。では、今、産総研で提唱されている構成学に沿っていくためにはどうしたらいいのだろうかということで、明渡さんはなぜうまくいったのだろうか、ということに関心を持ってこの論文を選んだのですが、結論としては「いかに最終的にものになりそうなものを見つけ出し、それをつかむか」が大事なのだということを確認したというイメージです。赤松 要素技術的な分野の人たちは、製造技術を考えた上でのコアとなる技術をつくるという発想はあまりなかったかもしれませんが、遠藤さんは先進製造なので、プロセス製造は当たり前という感じですか。遠藤 プロセス製造技術になるとコスト的な概念も必要ですし、技術課題をブレークスルーするためのコアとなる要素が重要です。材料が良くて、プロセス製造技術も良い、コストも安くつくることができればうまくいくかというと、製造するデバイスなどが社会的なニーズに合わなければ、最終的に世の中に出ていかないと考えています。私自身もインクジェットを使ってプリンタブルデバイスをつくるための製造プロセスの研究をしていますが、そのテーマに沿って、コア技術をつ左から岡崎、加藤、居村の各氏

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