Vol.2 No.2 2009
90/108

−177−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)座談会:シンセシスな研究についてす。一度に使う量は微量ですが、同じ状態のものを使うために小分けして用いたり、極力凍結融解のサイクルを少なくするように意識しています。不凍タンパク質が安定性を上げる材料になるということを論文で読んで、自分のしている仕事にも関係していたので興味を持ちました。菅沼 私が読んだ論文は明渡さんらの『エアロゾルデポジション法』(1巻2号)という、新しいMEMSとか製造プロセスに使われる成膜技術に関するものですが、掛け値なしに世の中で役に立つ技術を開発して、それに適した応用課題を的確に設定したというものです。私も以前、大学でポスドクをやっていたときに電気薄膜をパターニングする新しい方法を考えて、世の中になかった技術を開発するという道筋をつくって研究を進めていました。でも、基礎研究としてはそれなりにうまくいったものの、世の中とのつながりという点ではうまくいきませんでした。この論文には、核となる技術があってそれを応用するというモデルが書かれていたので興味がありました。松廣 私は以前に核融合分野にいて、エネルギー問題に非常に興味を持っていたので、関西センターの舟橋さんらの『熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発』(1巻2号)を選びました。高温でも安定に動作できる熱電素子の材料を開発、製品化させようということで、ニーズをいかにつかみ、シーズをいかに活かすかというシナリオを立てています。そして、コージェネレーションシステムに用いる際に、熱機関から出てきた廃熱エネルギーを利用するのではなく、熱電素子の特性を活かす方法として、先に熱電発電によってエネルギーを取り出し、その廃熱をその他の熱システムに適用するというトッピングシステムを考案するという、この 「逆転の発想」がブレークスルーする成功例の要因になるのではないかと思いました。大橋 私は太陽電池の研究をしていますが、仕事をする上で、他の人との知識の共有化についてもどかしいなと感じていましたので、江渡さんの『だれでも構築運営できるコラボレーションシステムの実現』(1巻2号)という論文を選びました。qwikWebのシステムは、メーリングリストにメールを送るとそれが自動的にデータベース化されるので、各人が別々のメールソフトを使っていたとしても、一つの共通したデータベースをつくることができるという便利なものだと思います。長田 私はナノバイオテクノロジーを応用したデバイスを開発する仕事をしていますが、有機ナノチューブが自分の研究に役立つのではないかと考え、ナノチューブ応用研究センターの浅川さんらが『実用化へ向けた有機ナノチューブの大量合成方法開発』(1巻3号)を読みました。この論文は、有機ナノチューブという両親媒性分子が溶媒中で自己集合化して、ナノメートルオーダーの中空繊維状の物質をつくるというおもしろい現象を見いだして以来、これを実用化まで導くストーリーになっています。そのためのストラテジーとして、安価な材料で両親媒性分子を合成する技術や、安全性の評価やサンプル提供をするための大量合成、アルコール溶媒による高速合成の方法の開発、企業参入のバリアーを下げるための安全性評価をつけて有機ナノチューブを使いやすくする活動が書かれています。安全性を考慮して両親媒性分子を天然由来の分子から合成して、なおかつコストを考慮して豊富に存在するものを使うという指針を立てたことが興味深いところです。河合 『水に代わる密度標準の確立』(1巻3号)という計測標準研究部門の藤井さんが執筆された論文を選びました。私は太陽光発電研究センターの評価・システムチームで、太陽電池の性能を評価する研究に取り組んでいますので、自分の業務という点でこの論文に引かれたということがありますし、計量の中の密度を標準化する技術を確立するということに興味を持ちました。大木 光技術研究部門の西井さんの書かれた『高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ』(1巻1号)という論文を選びましたが、私自身は超伝導、燃料電池という、大きくはセラミックスの研究を行っています。次世代のキーワードの一つである“光技術”を挙げて光通信や次世代ディスクなどの要素技術を取り扱っているという技術的なところにも興味があったのですが、一番の理由は、“低コスト製造”というキーワードを題目に入れているところです。研修で企業に行って、企業では製品が目標であり、そのための研究を行っていく、考え方が違うのだということに気づきまして、低コストがいかに大事かというのを思い知らされました。低コストのための研究がどのように構成されているかを抽出するためには、自分と異なった分野のほうがいいと思ってこの論文を選択しました。赤松 氏

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です