Vol.2 No.2 2009
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−171−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)インタビュー:米国の固体照明による省エネ政策と標準研究に応えようという熱い気持ちを持っているのですが、その部分まで書くと「論文ではない」と言われてしまいます。それに対してSynthesiologyでは、研究者のインテリジェンス(知性)とインテンション(意図)が組み合わさったものを世の中に発信していきたいと思っています。田中 小野さんからSynthesiologyの趣旨、我々の思いについてお話しいただきましたが、基礎研究をしても、応用研究の視点を持つということは大事だと思いますが、アメリカではこのような考え方は当たり前なのでしょうか。大野 私が勤めている米国立標準技術研究所(NIST)の場合、一部、基礎研究もあるのですが、私の感じでは大半が応用研究です。いろいろな機会を捉えて「なぜ、この研究をしているのか」ということについて説明しなければいけません。例えば、数年に1度、プロジェクト評価を研究部全体でやって、プロジェクトごとに今どういうことをやっていて、産業界でどういうコンタクトがあって、どういうふうに役立つのか、ということを発表して、みんなで議論します。それに、研究予算自体が十分でないので、どういうふうに役に立つかわからないような研究というのはなかなかやりにくいですね。NISTの測光標準研究田中 アメリカではブッシュ・オバマ両政権を通して省エネルギーのために、今後固体照明を広めていくという明確な政策があるのですが、そこにNISTで測光標準研究を担当されてきた大野さんが非常に大きな貢献をされています。それは、NISTの測光標準研究とアメリカの固体照明政策を結ぶ社会技術と言ったらいいでしょうか、大きな括りとしては「技術・製品の規格化と政策・規制」ということだと思うのですが、測光標準の研究にこれまでどのように取り組んでこられたかも含めて、お話しいただけますか。大野 白熱灯や蛍光灯など、現在照明に使われているエネルギーは膨大な量になっていますが、米国エネルギー省は、今後20年間かけて、固体照明を段階的に市場に導入することによって、電力消費を現在の半分に減らすという目標を打ち出しました。もともと2005年に議会で固体照明を国家として推進することが決まっており、エネルギー省がその推進をやることになっていましたが、「固体照明を使えば、効率が倍になる」と言われています。2倍の効率の光源ができればすごい省エネができるし、地球温暖化防止にも役立つということで、非常に注目されています。ただ、次世代の光源ということで従来の光源と異なる面が多く問題も出てくるでしょうし、新しい技術も必要になってきます。固体照明の推進政策として、コアテクノロジー、いわゆる半導体の基礎研究の部分から、発光ダイオードの開発、照明製品の開発、次のステップの市場導入促進というふうに、エネルギー省は全体を見ています。小野さんのお話にあったように、基礎研究があって、それが市場までつながっています。その中で、標準が非常に重要な役割を果たしています。標準が悪いと劣悪な製品が出回り、消費者の立場からすれば、性能の良くない粗悪品を買ってしまうと、「発光ダイオードはこんなものか」と失望して買わなくなってしまいます。最初が大切だということで、エネルギー省は商業化支援ということに力を入れています。NISTは標準化についていろいろな意味で支援していますが、その対象の一つにエネルギー省が行っているエネルギースターというマーク制度があります。エネルギースターはほとんどの電化製品を対象にした制度で、エネルギー効率がいい製品にこのラベルがつけられています。エネルギー省が審査して、エネルギー効率だけでなく、製品の質も見ますが、このエネルギースターの固体照明への導入が今始まっています。小野 そうしますと、NISTはエネルギースターをつける基準を決めていこうということですね。ヨシ 大野 氏小野 晃 氏
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