Vol.2 No.2 2009
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研究論文:PAN系炭素繊維のイノベーションモデル(中村ほか)−169−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)Lester教授の解釈的空間は「研究者に解釈的取り組みに心置きなく参加できる場を与えれば、研究者の自発性が新たな発展をもたらす」としています。しかし、場を与えるだけでは静的(スタティック)なモデルとの印象があります。一方、本論の「励振モデル」は研究者とマネージメントの相互干渉を基底に置き、「マネージメントは研究者が気づかない意図をも発掘、顕在化させ、イノベーション創出に向けて位相の合った作用を加える動的(ダイナミック)なモデル」です。大工試では萌芽的ながら動的なモデルがあったと分析しており、その意味で解釈的空間とは違うとしました。なお、本論中ではLester教授の解釈的空間を引用し、励振モデルとの違いについて記述しました。議論3 モデルの効果について質問・コメント(小林 直人)今回提示の「励振モデル」は、大変興味深いのですが、その後工業技術院においてあまり大きなイノベーションに繋がる成果が出ていない理由は何でしょうか。回答(中村 治)工業技術院時代にも大きなイノベーションに繋がった複数の事例があると考えられます。また産業技術総合研究所への再編以後は、「本格研究」という方法論が打ち出され、研究を社会へ送り出しイノベーションへ繋げるための取り組みが工業技術院時代よりも生まれているのではと考えます。本論は大工試の炭素繊維を対象としましたが、今後、新旧の事例を選定し、それらのプロセスを精査してイノベーションモデルの構築に繋げたいと考えています。
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