Vol.2 No.2 2009
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研究論文:PAN系炭素繊維のイノベーションモデル(中村ほか)−168−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)大花 継頼(おおはな つぐより)大阪市立大学大学院前期博士課程応用化学専攻修了後、化学技術研究所に入所、組織改編に伴い、物質工学工業技術研究所を経て、(独)産業技術総合研究所へ。2007年5月から2008年8月までイノベーション推進室企画主幹。現在、先進製造プロセス研究部門所属。博士(工学)。本論では資料の収集及び分析を担当。進藤博士へのインタビューなどを通じて、時代背景等について考察を行った。田澤 真人(たざわ まさと)名古屋大学大学院前期博士課程応用物理学専攻修了後、名古屋工業技術試験所(現、産業技術総合研究所中部センター)に入所。理学博士。2007年4月から2009年4月までイノベーション推進室総括企画主幹。本論では関係者へのインタビュー、内容の構築などに貢献した。横田 慎二(よこた しんじ)財団法人未来工学研究所を経て2001年~2006年文部科学省科学技術政策研究所 主任研究官。2006年産業技術総合研究所入所。技術情報部門を経て2008年からイノベーション推進室総括主幹。2006年から科学技術政策研究所客員研究官(兼務)。科学技術政策関連(技術予測、科学技術の影響評価等)の調査研究に従事。現在は産総研経済インパクトシミュレーションモデルの開発、公的研究のイノベーションシステムに関する調査等に従事。本論では、事実の解釈とモデル化の構成を中心に全体編集を担当した。篠田 渉(しのだ わたる)1998年東京工業大学総合理工学研究科博士課程修了。理学博士。三菱化学株式会社を経て、物質工学工業技術研究所、組織改編により、産業技術総合研究所。2008年6月から2009年5月までイノベーション推進室企画主幹。本論では資料の収集・作成を中心に担当した。中村 修(なかむら おさむ)1979年九州大学大学院農学研究科修士課程を修了後、鹿児島大学歯学部口腔生化学講座助手として教育と研究に従事し、1987年歯学博士(大阪大学)を取得。その後、ケース・ウエスタン・リザーブ大学(米オハイオ州クリーブランド)・客員研究員、九州工業技術研究所・主任研究官、福岡県工業技術センター生物食品研究所・参事兼生物資源課長、産総研評価部・シニアリサーチャー、経産省技術評価調査課・産業技術総括調査官を経て、2007年産総研評価部・次長に就任し、研究開発マネージメントの評価に携わるとともに、国内外の評価関連人脈を構築してきた。現在、長崎県科学技術振興局長。本論作成に当たり、論文骨子の組み立て、内容・強調ポイントの構築に貢献した。伊藤 順司(いとう じゅんじ)東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了。理学博士。1984年電子技術総合研究所に入所、組織改編に伴い産業技術総合研究所。同所にてエレクトロニクス研究部門長、企画本部企画副本部長を経て産業技術アーキテクト、2007年より理事。本論では基本モデル設計、全体統括を担当。査読者との議論議論1 研究開発シナリオについて質問・コメント(小林 直人:産総研特別顧問)本論で提示された「励振モデル」は斬新で興味深いものです。このように過去に行われた良い研究開発例やそのモデルを参考にして、「今後我が国の産業界にイノベーションを誘起するためには、どのようにしたらよいか」等について、そのシナリオ(この研究成果の活用シナリオ)を明確にすることを薦めます。これにより論文の価値が倍増すると思いますので、是非その面での記述を期待します。回答(中村 治)ご指摘のとおり、本論で提示した「励振モデル」は産総研のこれまでの研究開発の取り組みの中で、顕著な社会経済的インパクトをもたらした事例を分析対象として導き出したものです。このモデルと分析の過程で得られた知見を今後のイノベーション創出に向けた取り組みへの提言とするならば、・研究者の「自発性」の基となる「マインドセット」の明確化・その研究者のマインドを社会と同期させる「マネージメント」の確立の2つを特記し、これらを研究組織(研究開発の実行)及び行政機関(研究開発政策の企画)が勘案(理解し、適切に運用)することが重要との記述を加えました。議論2 構成要素について質問・コメント(小林 直人)この論文の眼目は、進藤博士が開発したPAN系炭素繊維が如何にして実用に結びついたか、に関していくつかの構成要素の有効な関連・連携が作用したことを指摘したものだと思います。本文の言葉を借りれば、(1)研究者のセレンディピティ(研究者のオートノミーの所産)、(2)研究者の興味と同期の取れた研究環境(オートノミーとマネージメントの結合)、(3)産業界の気づき(市場創成への起点)、です。これらを含んだ普遍的なモデルを構築する場合、これらの構成要素で必要十分なのか、あるいは単に必要条件でしかないのか、を明確にすると良いと思います。またその際、(1)~(3)がより普遍的な表現になるような言葉の選択も必要だと思います。(将来「励振モデル」として引用された時に、より分かりやすい表現の方が良いと思います。)例えば、(1)研究者の自由な発想と社会意識、(2)研究マネージメントの適切な時空間的支援、(3)産業界の気づきと率直な意見交換、等。(また、米軍関係者からの指摘は、(3)に入ると考えてよいでしょうか?)なお、最後の(3)に関して言えば、MITのR. K. Lester教授の言う解釈的空間(sheltered space)(http://www.arengufond.ee/upload/Editor/industryengines/files/foorum/lester%20slides%20021208.pdf)が、すでに40年前の大工試にあったということができるでしょうか。回答(中村 治)ご指摘のとおり本論では励振モデルを3つの構成要素で説明しています。イノベーションをもたらす過程を分析し、本質的な3つの要素に集約したものであり、本モデルの構成要素としては必要十分と考えます。しかしながら、各構成要素の働きをさらに明快に示し、普遍的なものとするため以下のとおり表現を改めます。(1)研究者の明確な課題意識に基づくセレンディピティ(2)研究者の動機とマネージメントとの位相整合(3)産業界の旺盛な新事業開拓意欲最後の(3)に関しては、ご指摘のようなLester 教授の解釈的空間(sheltered space)は当時の大工試にはなかったと認識しております。

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