Vol.2 No.2 2009
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研究論文:高感度分子吸着検出センサーの開発(藤巻ほか)−158−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)層を形成する手間が掛かるという点もマイナスでありました。そのことを2.1章の後半に記載致しました。質問(小林 直人)著者らの主要な貢献の1つは、高いアスペクト比のナノサイズの穴を多数あけることにより感度を向上させたこと、であると理解しました。論文によると、高アスペクト比ナノ穴により検出物質が吸着される表面積が大幅に増大すること、導波路部分の光電場の大きな部分に検出物質を多数分布させること、により感度を向上させたとの記述がありますが、計算やシミュレーションによる合理的な議論が不足しています。穴の密度依存性などのデータも含めて、定量的な記述を行うことをお薦めします。回答(藤巻 真)ナノ穴形成による感度の向上を理論的にも確かめるため、我々は、フレネルの式を用いたシミュレーションを行い、また実験値とも比較を行いました。本センサーにおいては、ディップの半値幅(W)が小さく、ピーク位置のシフト量(S)がより大きいほど、つまりS/W値が大きいほど感度が高いと言えます。ナノ穴を形成したモノリシック検出板利用EFC−WMセンサーの場合、ナノ穴形成によるS/Wの増加は、シミュレーションで約4倍、実験値で6倍と、非常に大きな値を示しました。この点を、3.3章に感度向上を示す結果として追加しました。質問(小林 直人)最後の「ブレイクスルー」では、光吸収による反射率変化を利用して超高感度(約1000倍)なセンサーを実現したとのことですが、この場合には屈折率変化等誘電環境の変化、またそれが及ぼす角度変化はどのように影響しているのでしょうか。極めて微量のため角度変化への影響が少ないと理解して良いでしょうか。また、その場合でも、ナノ穴の効果は十分あったと考えられますか。そうであればその記述をお願いします。また、この場合でもクレッチマンの配置が最適なのでしょうか。回答(藤巻 真)この場合も角度変化は生じますが、吸着量が少なく、ほとんど角度変化は生じません。このことを4章に追記しました。また、まだ実験は行っていませんが、この場合もナノ穴の効果はあり、穴があった方が感度は高くなります。このことも4章に追記しました。クレッチマンの配置に関しましては、ナノ穴あり、なしに係わらず、必ずしもクレッチマンにこだわる必要はありません。ただ、この系は組み上げが簡単で、光学系も単純なため、利用しやすいと考えられます。議論3 構成的方法について質問(小林 直人)本研究では、構成学としての考え方の構築がまだ不十分だと思います。上記のとおり、個々の要素技術の内容と意義、効果などはよく記述されていますが、それを組み合わせて1つの超高感度で安定なセンサーを創り上げた構成のユニークさ、独創性などを詳細に記述することをお薦めします。回答(藤巻 真)我々は、本センサーの高機能化研究において、結果的に戦略的選択型と呼ばれる構成方法を用いました。まず、コア技術であるEFC-WMセンサーの感度の向上を図るために、シミュレーションを元に、導波路層へのナノ加工を実施することを選択しました。またセンサーの物理的安定性及び加工面の平坦性の問題を解決するために、材料選択に立ち返って反射膜材料の選択を行いました。反射膜としてSiが適していることを見出し、さらにシリカガラス基板上に単結晶Si層を持つSOQ基板を用いることとしました。このように、複数の要素技術を戦略的に組み合わせることによって、最終的な高機能センサーという統合技術を得ることができました。この点に関する記述として新たに第5章を挿入し、また図17についてより詳しく説明することとしました。議論4 今後の展開質問(小林 直人)本研究成果は分子吸着センサーの超高感度化・安定化という大きな成果を生み出したと考えられますが、実際の医療現場で実用に供されるには、まだ課題が多くあると思われます。実用化の見通しとそのために解決すべき課題を付け加えることを期待します。回答(藤巻 真)第6章中に、実用化の見通しと課題として、主としてノイズの低減、つまり夾雑物の除去、非特異吸着の低減、検体のより正確な認識を挙げました。また、コスト的な記述も加えました。これらの2つが解決できれば、本技術は実用化されるであろうと期待されます。議論5 新型インフルエンザへの対応質問(小林 直人)この技術は、現在世界的流行が問題になっている新型インフルエンザ・ウィルスの早期発見に役立つでしょうか。回答(藤巻 真)現在、当グループで最も力を入れているテーマの1つがこの「新型インフルエンザ・ウイルスの超高感度検出と迅速な特定」です。研究段階としては、ウイルスの断片(HAと呼ばれる部分)の検出に成功した、というところですが、これまでに開発した高感度分子検出技術を応用し、近い将来、インフルエンザの感染拡大防止策として用いられるような装置開発を行っていきたいと考えています。

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