Vol.2 No.2 2009
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研究論文:高感度分子吸着検出センサーの開発(藤巻ほか)−154−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)射膜のSi層は厚さ220 nmとし、導波路層の厚さは450 nmとした。ナノ穴は実験条件と同様に、直径50 nm、個数5×109個/cm2とした。ストレプトアビジンの吸着を想定し、分子吸着時には、厚さ5 nm、屈折率1.45の層(図中の薄ピンク色の層)が検出面に図のように形成されたと仮定した。図14(d)、(e)、(f)はそれぞれ、図14(a)、(b)、(c)に示した場合の分子吸着前後の反射特性の計算結果を示す。本センサーにおいては、ディップの半値幅(W)が小さく、ピーク位置のシフト量(S)がより大きいほど、つまりS/W値が大きいほど感度が高い。表2に実験及び上記シミュレーションで得た分子吸着時の反射率変化量(ΔR)、S、W、S/Wの値を示す。ナノ穴なしのEFC-WMセンサーの場合、いずれの値も実験値と計算値がほぼ一致している。ナノ穴を形成したEFC-WMセンサーの場合、S値は実験値の方が大きくなった。実験値で得られたS=1.91程度のシフト量を計算で得るには、ナノ穴の直径を65 nmとし、個数を6×109個/cm2とすれば良い。つまり、実験では、穴径及び穴の個数が、設定値より若干大きかったと思われる。表2に示したように、S/W値の実験値はナノ穴付きの場合で2.98、ナノ穴なしの場合で0.514であった。これらの値はいずれもSPRセンサーのS/W値の理論値より大きく、ナノ穴なしの場合で約4倍、ナノ穴付きの場合では約25倍となっている。モノリシック検出板は安定性においても優れている。モノリシック検出板では、基板、反射膜、導波路層がいずれも原子レベルで結合しており、物理的に非常に安定である。また、SiとSiO2のみで構成されており、化学的にも安定である。4 ブレイクスルー我々は、このセンサーを実際の様々な疾患に起因する物質の検出へ適応させるため、どのような物質の検出を試験したらよいか、病院などに対して調査を行った。この調査の過程で、我々は、実際に病院において、同様の目的で使用されている多くのセンサーが、着色量の濃度をもって疾患に起因する物質を検出していることに気付いた。モノリシック検出板は上述のように屈折率変化に対して敏感であるが、光吸収の変化、つまり「色」の濃さに対してより敏感である。そこで、我々はセンサーを「色」の変化をより敏感に検出できるように設計し直した。EFC-WMセンサーの反射特性に見られるディップは、屈折率の変化に対しては、角度方向つまり横軸方向に変化し、光吸収の変化に対しては、反射強度の変化つまり縦軸方向に変化する。よって、縦方向の変化がより鮮明に現れるように検出板の構造を変更した。具体的にはSi反射膜層を薄くしたのである。作製した検出板は、シリカガラス基板上に厚さ約35 nmの単結晶Si層と厚さ約520 nmの熱酸化Si導波路層を持つ。導波路層表面をビオチン修飾した後、この検出板を図12に示す光学系にセットし、Auナノ粒子が付いたストレプトアビジンを検体とした検出試験を行った。この検体は直(f)(e) (d) (c)(b)(a) SiWS反射率導波路Siタンパク質AuΔRWSΔRWSΔR入射角 (度)5060708000.20.40.60.8100.20.40.60.8100.20.40.60.81697071726566676968入射角 (度)入射角 (度)図14 SPRセンサー(a)、ナノ穴がないEFC−WMセンサー(b)、ナノ穴が形成されたEFC-WMセンサー(c)において分子吸着が生じた時の概念図。(d)、(e)、(f)はそれぞれ、(a)、(b)、(c)に示した場合の分子吸着前後の反射特性の計算結果を示す。SPRセンサーSim.SOQ ナノ穴なし Sim.SOQ ナノ穴なし Ex.SOQ ナノ穴形成 Sim.SOQ ナノ穴形成 Ex.0.150.380.400.600.63ΔRS1.00゜1.91゜0.17゜0.19゜0.72゜W8.4゜0.64゜0.34゜0.37゜0.34゜S/W0.120.510.492.982.12表2 SPRセンサー及びEFC-WMセンサーの感度比較。Sim.は計算値、Ex.は実験値。

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