Vol.2 No.2 2009
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研究論文:高感度分子吸着検出センサーの開発(藤巻ほか)−153−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)久性の面で有効であることが分かった。しかし、図7のSEM像から分かるように、スパッタリング法によって形成した導波路層表面は、ナノ穴形成によって荒れてしまい、反射率特性の劣化を引き起こし、その結果、十分な感度向上が得られていなかった。図6に示したように、Si熱酸化膜では、このような表面荒れがほとんど生じないことから、我々は、導波路層形成にSiの熱酸化プロセスを導入できないか検討した。Siを反射膜に用いた場合、Si層を厚く形成しておき、その表面を熱酸化して導波路を形成すれば、Si熱酸化膜を導波路として持つ検出板を形成できる。この時、基板に用いるガラスには、高熱処理に耐えられるガラスを用いる必要がある。このアイディアを実現するために、我々は検出板形成にSOQ基板を用いることを考案した。導波路形成には厚い酸化膜層が必要であるため、我々は、酸化速度が速い水蒸気酸化法[14]を取り入れ、SOQ基板のSi層を酸化することによって、シリカガラス基板上に単結晶Si反射層及びSiO2導波路層を持つ検出板を作製した。検出板の作製の様子を図11に示す。熱酸化前の単結晶Si層の厚さは440 nmであった。この層を、1000 ℃の水蒸気を含む酸素雰囲気中で1時間酸化したところ、Si層表面が酸化され、厚さ482 nmの導波路層が形成された。残った厚さ220 nmのSi層が反射膜として働くこととなる。これがモノリシック検出板である。作製した検出板は、図12に示すような光学系にセットし、分子検出実験を行った。図13(a)及び13(b)はそれぞれ、ナノ穴ありとナノ穴なしのモノリシック検出板を用いて、ビオチン−ストレプトアビジン吸着を検出した時の反射特性の変化を示す。入射光源にはHe-Neレーザー(波長632.8 nm)のS偏光を用いた。ナノ穴の直径は約50 nm、個数は5×109個/cm2とした。図中の白丸が吸着前、黒丸が吸着後の反射光強度の入射角依存性を示す。ナノ穴形成によって、ピーク位置のシフト量が約10倍になっていることが分かる。また、ナノ穴形成によって、ディップの半値幅は若干大きくなったが、深さはほとんど変わらず、エッチング時のダメージ低減による効果が見られた。ナノ穴形成による感度の向上を理論的にも確かめるため、我々は、フレネルの式を用いたシミュレーションを行った。図14(a)、(b)、(c)はシミュレーションに用いた構造の概念図である。図14(a)は従来のSPRセンサー、(b)はナノ穴が形成されていないモノリシック検出板を用いたEFC-WMセンサー、(c)はナノ穴が形成されたモノリシック検出板を用いたEFC-WMセンサーである。SPRセンサーのプリズムは屈折率が1.769の直角三角形プリズムとした。検出チップは、同屈折率の基板上に厚さ51 nmの金薄膜が形成されているとした。EFC-WMセンサーのプリズムは、頂角が30°で屈折率1.456の二等辺三角形プリズムとし、検出チップの基板はシリカガラス(n=1.456)とし、反 (b)(a)吸着後吸着前717069680.20.40.60.81反射率入射角 (度)69686766反射率吸着後吸着前72646500.20.40.60.810水蒸気酸化482 nmシリコン熱酸化膜シリカガラス基板1000 ℃ 1h.単結晶Si層 440 nmシリカガラス基板220 nm単結晶Si層 シリカガラス基板Si導波路30°2θ液セル632.8 nmHe-Neレーザー検体を含む溶液検出器S偏光を選択偏光板 θシリカガラスプリズム図11 SOQ基板の単結晶Si層を水蒸気酸化して検出板を作製するプロセスを説明する図。図12 モノリシック検出板を用い分子検出を行う際に用いた光学系。図13 ナノ穴あり(a)、及びナノ穴なし(b)のモノリシック検出板を用いて観測した、ビオチン-ストレプトアビジン吸着前後の反射特性。ストレプトアビジンの濃度は1.5 µM。

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