Vol.2 No.2 2009
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研究論文:高感度分子吸着検出センサーの開発(藤巻ほか)−152−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)を用いた時の反射特性を計算した結果を示す。計算に用いた基板の屈折率は1.769、反射膜の厚さはそれぞれ40、20、30 nm、導波路層の屈折率と厚さはそれぞれ1.485、500 nmとした。入射光はS偏光された波長632.8 nmの単色光とした。また導波路表面は水に浸っていると仮定した。反射特性に見られる形状は反射膜材料によって異なるものの、いずれの場合も反射特性においてピークが観測されることが分かる。反射特性における形状、つまり、波形が上凸となるか下凸となるかは、バックグラウンドとなる反射光強度と共鳴の状態によって決まる。これらのピークの位置は、導波路表面への物質吸着によってシフトする。どのような光学特性を持つ材料が反射膜として好ましいかを知るために、反射膜材料の複素屈折率n+kiと検出感度の関係を計算した。計算結果を図10に示す。図は、導波路表面に厚さ5 nm、屈折率1.45の物質が吸着した場合に得られる最大反射率変化量と、反射膜のn及びkとの関係を示す。ここで、入射光の波長は632.8 nm、基板ガラス及びプリズムの屈折率は1.769とした。また、導波路の厚さ及び屈折率はそれぞれ350 nm、1.485とした。光の入射角度、偏光方向及び反射膜の膜厚はシミュレーションによって最適値を導出した。得られた変化量が大きい複素屈折率を持つ材料が反射膜材料として好適な材料であるといえる。図中には、幾つかの材料の複素屈折率を黒点で示してある。計算結果から、従来から用いられてきたAu、Ag、Cuといった材料が高い感度を示すことが分かる。その次に高い感度を示すのは、SiやGeなどの、nが大きくkが小さい材料であることが分かる。図中に記載した幾つかの材料を用いて実際に検出板を作製し、前述と同様のビオチン−ストレプトアビジン吸着の観測を行った。ストレプトアビジンは、直径が5 nm程度、屈折率が1.45であり、前記計算結果と近い結果が期待できる。表1に、作製に用いた反射膜材料と、各反射膜材料で得られたストレプトアビジン吸着時の最大反射率変化量¦ΔRex¦と上記計算で得られた最大反射率変化量¦ΔRcal¦を示す。Auを反射膜に用いる際、接着層を入れない場合には検出板形成後にAuが剥がれてしまい、実験値は得られなかった。実験で得た値では、Cuを用いた際の¦ΔRex¦=0.505が最も高い値であった。しかしながら、CuもAuほどではないが密着性が悪く、剥がれが生じた。Au反射膜を用いる際、厚さ0.8 nmのCr層を接着層として用いた場合、¦ΔRex¦は0.263であった。得られた実験値中では大きな値と言えるが、Auのみを反射膜として用いた場合の計算値¦ΔRcal¦=0.719と比べると遙かに感度が低いことが分かる。次に大きな値は、a-Siを用いた場合の0.234であった。Geは計算では大きな反射率変化が期待されたが、実際の感度は計算値の3分の1程度であった。これは計算値が単結晶Geの複素誘電率を用いて算出したものであり、一方、実験では、スパッタリング法でGe層を堆積したため、形成されたGe層がアモルファスとなったためであると考えられる。本研究より、従来使用されていたAu、Ag、Cuといった材料では、高い感度は得られるものの、安定性に問題があることが分かった。安定性は接着層の導入である程度解決できるが、接着層を用いた場合の感度は、Siを反射膜として用いた場合の感度と同程度であり、またSiはガラス材料との密着性が非常に高いことから、安定性と感度の両方を簡易に得るにはSiは好適な反射膜材料であると言える。3.3 モノリシック検出板以上のアプローチから、我々のナノ穴形成技術が高感度化に有効であることが分かり、また、Si反射膜も感度と耐反射率変化量knMnMnTaTaMoMoTiTiPtPtNiNiAgAgGeGea-Sia-SiWWCuCuCrCrAuAu10.90.80.70.60.50.40.30.20.1000.511.522.533.544.555.55.554.543.532.521.510.50AuCr/Au/CrCrCuWa-SiGe反射膜材料NA0.1390.2340.0700.0640.5050.2630.4050.2710.0980.1010.6830.3800.719|Δ ex|R|Δ cal|R図9 反射膜にAu(a)、W(b)、Si(c)を用いた時の反射率の入射角依存性。反射膜の厚さはそれぞれ40、20、30 nm。 図10 反射膜材料の複素屈折率と検出感度の関係の計算結果。図中の●は反射膜となりうる幾つかの材料の複素屈折率を示す。入射角 (度)入射角 (度)入射角 (度)反射率57585960616200.40.800.40.800.40.850556065705055606570(a)(b)(c)表1 検出板作製に用いた反射膜材料と、¦ΔRex¦、¦ΔRcal¦の関係

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