Vol.2 No.2 2009
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研究論文:高感度分子吸着検出センサーの開発(藤巻ほか)−150−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)ペクト比40以上のナノ穴の形成が可能である[8]。次に我々は、検出板の材料、特に反射膜の材料について見直しを行った[5]。従来のEFC-WMセンサーでは、反射膜にAuやAgなどの貴金属を用いる例が多く報告されている[10][11]。また、実際にこれらの材料を用いることによって、高い感度が得られていた。ところが、これらの金属はEFC-WMセンサーに用いられるガラス基板やプラスチック基板、導波路層として用いられる誘電体層との密着性が非常に悪く、簡単に剥がれてしまうという問題点があった。したがって、実用に耐える高い信頼性を得るために、接着層を入れる必要があったが、この接着層の導入によって、センサーの感度低下や製品のコスト高、製造誤差の増大という悪影響が問題となっていた。光学シミュレーションによってどのような光学特性を持った材料がEFC-WMセンサーに適するかを再検討し、また、実際に様々な検出板を作製して、センサーの性能比較を行った。以上の開発の結果は以下の章で詳述するが、これらの結果を受けて、我々は、ナノ穴形成に適した導波路がSiを熱酸化して形成したシリカガラスであり、また、反射膜としてSiを用いることが有効であることを見出した。これらの結果を踏まえ我々は、Silicon-on-Quartz (SOQ)と呼ばれるシリカガラス基板上に単結晶Si層を持つ貼り合せ基板[12]を検出板製造に用い、この単結晶Si層を酸化して導波路を形成する手法を考案した[13]。我々はこの手法で作製した検出板をモノリシック検出板と呼んでいる。また、我々は、このモノリシック検出板が吸着物の光吸収を敏感に捉えることを利用し、飛躍的な高感度化を達成した。このことは4章「ブレイクスルー」で述べる。図4はこの一連の研究開発の構成を示したものである。3 開発の成果本研究の取り組みによって得られた研究成果を以下に示す。3.1 ナノ穴形成技術による高感度化上述のように、導波路へのナノ穴形成に、高速重イオン照射によって形成された潜トラックのフッ酸蒸気による選択エッチングを用いた。イオン照射には筑波大学の12 MVタンデム加速器を用いた。イオン照射方法を図5に示す。150 MeVで加速したAuイオンを厚さ0.8 µmのAlフォイルに照射する。すると、フォイルによってイオンが散乱され、均一で電流密度の低いイオンビームが形成される。イオンビームの電流密度はチップ上で100 pA/cm2程度となるように設定した。低い電流密度にする理由は、イオン照射量が1 cm2当たり109~1010個のオーダーと非常に少ないため、このような低い注入量を正確に制御するためである。エッチングには、20 %フッ酸による蒸気を用いた。フッ酸を入れた容器内に、フッ酸に浸らないように試料を入れ、試料をフッ酸蒸気にさらす。図6は厚さ2.0 µmのSi熱酸化膜にAuイオンを照射した後、フッ酸蒸気で60分エッチングを行った時の表面及び断面SEM写真である。エッチング時のフッ酸温度は21.5 ℃とした。図より、熱酸化膜を貫通する穴が形成されていることが分かる。エッチング後の熱酸化膜の厚さは1.9 µmであった。つまり穴のアスペクト比は42となる。このように、本手法によって数10 nmオーダーの直径を持つナノ穴を精度良く多数形成できる。この手法を用いて、実際にシリカガラス導波路を持つ検出板の導波路層にナノ穴を形成し、感度の向上を試みた。基板には、ガラス基板(OHARA S-LAH66、2 cm角、厚さ1 mm、 屈折率1.769(波長632.8 nm))を用いた。反射膜にはAuを用いた。また、Auとガラス基板、Auと導波路層の接着層としてCr層を用いた。これらの膜は真空蒸着法によって形成した。Auの厚さは53 nm、Crの厚さは0.8 nmとした。導波路層はシリカガラスをターゲットに用いたrfマグネトロンスパッタリング法によって形成した。導波路層の厚さは550 nmとした。スパッタリング後、導波路層を緻密化するために大気中600 ℃で24時間熱処理した。この導波路表面に前述の方法でナノ穴形成を行った。Auイオン照射量は5.0×109 cm−2とし、フッ酸蒸気導波路層低電流密度のビーム高電流密度のビームチップAu30+ 137 MeV厚さ 0.8 µmAlフォイルAu14+ 150 MeV 高安定化ナノ穴付き高感度高安定センサー光吸収検出型超高感度センサー検出板のモノリシック化高感度化チップ構成材料の見直し潜トラックのフッ酸蒸気による選択エッチングエバネセント場結合型導波モードセンサー(コア技術)図4 本研究開発の構成図5 ナノ穴形成に用いるイオン照射方法
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