Vol.2 No.2 2009
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研究論文:高感度分子吸着検出センサーの開発(藤巻ほか)−148−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)てはこのような条件をある程度満たすセンサーが考案され実用化されており、イムノクロマトグラフィー法を用いたインフルエンザの診断(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 タミテストインフルエンザAB、DSファーマバイオメディカル株式会社 QuickVue ラビッドSP influ、など)、金コロイドクロマト免疫測定法を用いた妊娠検査(ロート製薬株式会社 ドゥテスト、株式会社アラクス チェックワンファスト、など)などがその例として挙げられる。しかしながら、多くの場合、疾患に起因する物質の濃度があまりに低かったり、他の物質との分離が困難であったという理由のために、これを克服する有効なセンサーが開発されておらず、今後の開発に大きな期待が寄せられている。このようなニーズを受け、小さな病院でも短時間で、初期段階の病気を発見できるようにするためのバイオセンシング技術を確立することを目標に、様々な特定の微量物質を感度良く検出でき、持ち運びが可能な程度にコンパクトで、測定環境に依存しない安定な検出が可能な、バイオ物質センサーの開発を行った。また、特に人由来の検体、例えば血液や尿や唾液を対象に検出を行う場合、様々な物質が混在しているため、検出したい物質以外の物質(夾雑物)に検出を邪魔されてしまうことが大きな問題となる。よって、夾雑物の影響を受けにくくするための開発も行った。2 分子吸着検出センサー開発図1にセンサー開発に求められる課題、課題克服によって期待できる性能、得られた性能によって享受できるメリットを示す。このように、目的とするセンサーは、特定の物質(検体)の存在を感度良く、安定に、そして低ノイズで検出するものである。我々は、本センサーの開発に、検体を特異的に捉え、その結果生じる誘電環境の変化を導波モード用語1の変化によって検出する手法を基本技術として用いた[1][2]。以下に本技術の特徴及び本開発によって行った高機能化に向けたシナリオを説明する。2.1 エバネセント場結合型導波モードセンサーの原理とセンサーに求められる性能我々が開発を行ったエバネセント場用語2結合型導波モードセンサー(Evanescent-field-coupled waveguide-mode sensor、EFC-WMセンサー)と非常に似た機構を持ち、主に研究開発用として市販されているバイオセンサーとして、表面プラズモン用語3共鳴(SPR)を用いたセンサーが知られている[1]。EFC-WMセンサーの仕組みの理解を容易にするために、この既に実用化されているSPRセンサーの測定原理を簡単に説明する。一般にSPRセンサーでは高屈折率ガラス基板表面に金属薄膜を堆積し、金属薄膜面と反対側の面に基板と同一のガラスで形成されたプリズムを配する。一般に、金属薄膜には、可視光で表面プラズモンを励起することができるAuやAgが用いられる。図2(a)にSPRセンサーに最も良く用いられる光学系を示す。この光学配置はクレッチマン配置と呼ばれる[3]。クレッチマン配置において、プリズム側から全反射条件下で光を入射すると、ある特定の入射角において金属薄膜表面に表面プラズモンが励起される。この入射角度を共鳴角と呼ぶ。共鳴角付近で光を入射して金属薄膜による反射光の強度を測定すると、入射光が表面プラズモンと結合することによって反射光強度が著しく減少する。表面プラズモンは、金属表面の誘電率の変化に敏感であることから、表面に生体分子などが吸着すると、この共鳴角が変化し、光の反射光強度が大きく変化する。この反射光強度の変化を検出することによって、生体分子の吸着を検出する。特定分子のみを検出するため、金属表面には、検出対象分子を特異的に吸着する物質を表面修飾しておく。EFC-WMセンサーに用いる検出板は、基板ガラス上に反射膜と透明誘電体導波路を持つ[4][5]。測定に用いる光学系には、SPRセンサーと同じ光学系が使用可能である。図2(b)はクレッチマン配置を用いたEFC-WMセンサーの光学配置を示す。SPRセンサーと同様にプリズムを介して光を入射すると、ある特定の入射角(共鳴角)において反射膜で発生するエバネセント場を介して入射光と導波路を伝搬する導波モードとのカップリングが生じる。この特定角度付近で光を入射すると、反射光強度が著しく増減すテロ対策環境測定健康健診創薬医療応用正確な診断。高感度な診断。空調が不要。屋外で使用可能。(酸、アルカリ、腐食性、反応性)。検体に対して安定。安定した製造。製造誤差の低減。センサーの長寿命化。ハンドリング時に壊れにくい。キズによる誤診の防止。初期段階での疾患の特定。様々な疾患・病原体・菌の特定。夾雑物、非特異吸着の影響低減。温度に対する感度の安定性。化学的安定性の向上。物理的安定性の向上。少量・低濃度物質の検出。小さい分子の検出。低ノイズ化高安定化高感度化得られるメリット期待できる性能課題WG mode(a) 検体導波路層光源検出器偏光板プリズム基板ガラス金属薄膜光源検出器偏光板プリズム基板ガラス(b)反射膜SPR検体θ 図1 センサーに求められる課題、期待される性能、得られるメリット及び応用分野図2 (a)SPRセンサーに用いられる光学配置、(b)EFC-WMセンサーに用いられる光学配置。

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