Vol.2 No.2 2009
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研究論文:セラミックス製造の省エネプロセスの確立を目指して(渡利ほか)−143−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)て少ない。また、最適な成形機能を付与するために複数のバインダーの組み合わせで使用することが多く、それぞれのバインダーの役割は複雑に絡み合う。そのため、バインダーの研究はセラミックスの研究開発において極めて重要な位置づけでありながら、科学的な検討はほとんどなされていなかった。そこで、我々が考えたのは、既存の有機バインダーと同様な機能を持たせながら、有機バインダー量の減量化もしくはゼロ化を目指すことだった。これらの条件を踏まえ、有機系および無機系バインダー技術の開発に取り組んだ。このことは、新規バインダー技術を開発するための技術の抽出である。本研究を進めていくにつれ種々の条件が明らかになり、要素技術が錬磨されていった。また、無機バインダーによる可塑性発現に関する研究開発とAFMコロイド・プローブ法等を利用した粒子表面解析技術の研究開発を行うことにより、粒子表面―水との関係をマクロおよびミクロレベルから解析した。この結果からセラミックスの可塑性における水の役割の重要性、さらには含水量を増大させる無機バインダー種の選択の方向性が定量的に示され、有機バインダー量の低減化およびゼロ化に関する技術に対して科学的根拠からアプローチできた。これらの研究は第2種基礎研究の中の基礎・基盤研究に相当する。可塑性を示す有機バインダー量の低減化およびゼロ化を目指した無機バインダーの研究の流れは、①バインダー評価技術の開発、②無機バインダーのプロセス研究、③水―粒子界面の研究、④無機バインダー技術を制御するプロセス因子の解明と移動した。その結果、水含有量の多い無機材料は可塑性発現の無機バインダーになることを明らかにした。これは、我々が進めている第2種基礎研究のアウトカムである。粘土鉱物および無機バインダーにおける水の重要性をグループ内で議論することにより、マイクロ波に反応する有機物バインダーの候補として、水を含有する、つまり親水性を有する有機バインダーへとつながり、その結果マイクロ波反応バインダーの開発を誘導した。無機バインダーおよびマイクロ波反応バインダーにおいて水の役割は異なるが、バインダーという大きな概念では“水”は重要な共通キーワードとなった。得られた成果およびその知見をもとに、共同研究を通じて大手材料メーカーで製品が実用化された。これらの研究は製品化技術研究に相当し、製造ラインで開発された技術の有効性を確認しながら開発が進んだ。我々が開発したバインダーの利点は技術の優位性に加え、当該技術の導入に伴うコストが低いことである。反応性および無機バインダーは原料および助剤とともに溶媒に入れ、混合・分散させるため、新たな工程は付加されない。さらに、我々が使用したバインダーは他の用途で大量に使用されており、その材料コストは低い。7 結果の評価および将来の展開開発する技術は既存プロセスへの適用、既存装置の利用、低コスト化等といった社会・産業ニーズを満足させることを条件に研究を進めた結果、技術の境界条件さらには要素技術が明確にされ実用に耐えうる技術が開発できたと考えられる。コア技術の抽出は、一見複雑に絡まっている製造プロセスの中から「複雑さの中の単純さ」を見いだすこ見究め研究テーマの有機バインダ量の低減化もしくはゼロ化を目指したプロセス研究と評価研究第2種基礎研究低融点助剤技術分散技術水和物材料技術高密度成形技術表面被覆技術反応バインダ技術の確立粒子表面解析技術反応トリガー技術製品化技術製品化技術・ 機能・特性は維持・ 低コスト化 ・ 既存装置の利用・ 既存プロセスへの適用社会・産業ニーズへの対応水和物バインダ技術の確立技術の抽出収縮率制御技術バインダ技術ナノ粒子ハンドリング技術研究の展開省エネプロセス実現のための要素技術基礎・基盤研究第1種基礎研究時間軸低温焼結技術新規バインダ技術無機系有機系図7 既存のセラミックス製造工程における低環境負荷プロセスの構築と相互の関係

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