Vol.2 No.2 2009
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研究論文:セラミックス製造の省エネプロセスの確立を目指して(渡利ほか)−140−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)を含むことが知られており、そのため排出ガス分解工程として通常アフターバーナー等で二酸化炭素や水等の無害な物質に処理される。多くの有機物ガスの熱分解温度は600 ℃以上であり、アフターバーナーの温度を熱分解温度以上に設定すると、排ガスの熱分解に要するエネルギーは無視できないかなりの量である[8]。 図1と図2に示すようにバインダーに関係するエネルギー消費は非常に多い。何らかの技術開発により有機バインダーの使用量を低減することができると、脱脂および排ガス分解処理に要する熱エネルギー量の抑制が期待できる。そこで、我々は既存セラミックス製造プロセスの省エネ化を進めるために、バインダー技術からのアプローチを取ることにした。開発したバインダー技術が既存製造ラインを大幅に変更させては当初の目的からはずれてしまう。そのため、開発するバインダーに従来のバインダーとほぼ同じ機能を持たせることが重要である。このことから、高いバインダー機能を持ち、その使用量を低減できるバインダー技術についての検討を開始した。5 開発技術と研究成果5.1 キーテクノロジーの抽出バインダーの機能を図3にまとめた。その機能は大きく2つに分かれる。第1は粒子同士を強固に結合させ、安定的に形状を維持することである(形状維持)。セラミックス成形体はある程度の強度を持つ必要がある。ひとたび与えられた形状を成形体の自重や生産現場でのハンドリングによる荷重に耐えて維持することは、バインダーの重要な機能の一つである。本機能を持つバインダーはセラミックス製のフィルムやシートさらには大物品の製造に生かされている。第2は、バインダーが粒子の塊に対して流動性と保形性を同時に付与すること(可塑性)である。つまり、原料粉末とバインダーを混合した状態では粒子同士はバインダーを通じて弱い結合によりつながり、形状を維持する(保形性)。さらには、一定以上の力を加えるだけで変形を起こさせ(流動性)、力を解除した後もその形状が維持されることである(保形性)。可塑性は、特に押出成形や射出成形などの複雑形状品の生産において求められる機能である。我々は有機物量の低減を目指しながら、形状維持および可塑性付与に関して高いバインダー機能を持つ材料について検討を進めた。さらには、バインダーの機能以外に(1)安価、(2)原料粉末と反応しない、(3)水や溶媒に溶ける、(4)分解揮発した後に灰分等が残らない、(5)分解ガスは有害性および腐食性がない等の一般的なバインダーに求められる性質も充分考慮して、新規バインダー技術の開発を目指した。5.2 反応バインダー技術製造ラインで用いられる既存の有機バインダーと同じ機能を、ごくわずかな量の有機物に与えることで有機バインダー量を減量化する方策を我々は選択した。まず、「形状維持」の機能(図3)を最小限の有機物量で発現させることを目的として、新しいバインダー技術を開発した。すなわち、あらかじめセラミックス原料の粒子表面に、バインダーの役割を果たす反応性の高い有機分子を薄膜の状態で固定する。これらの粒子からなる集合体を所望の形状にした上で化学反応を励起する反応トリガー(外部刺激)を印加し、有機薄膜層の分子同士を相互に化学結合させ、粒子同士が強固に結合するセラミックス成形体を作製する。図4に、我々が進めた有機バインダー量の低減に関する技術の概念を示す。通常の成形方法と異なり、バインダー分子がセラミックス粒子間を化学結合で強固につないだ構造を得られるため、少量のバインダーで効率よく成形体の形状を維持できる。また、粒子表面に薄膜の状態でバインダー分子が固定されているため、バインダーの部分的な凝集を防ぐことができ、有機バインダー量の減量化が可能となる。この成形方法においては、粒子の集合体が所望の形状を形状維持(1)強固な結合(1) 弱い結合(保形性)(2) 結合の切断(流動性)(3) 再結合(保形性)可塑性付与(流動性、保形性)クリープ力力セラミックス粒子反応性バインダー分子粒子間結合が形成反応性の高い有機分子をセラミックス粒子表面に固定化学反応を励起する反応トリガー(外部刺激)を印加図3 バインダーの機能図4 有機バインダー量の低減のための有機分子の固定化と反応トリガーの印加
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