Vol.2 No.2 2009
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研究論文:セラミックス製造の省エネプロセスの確立を目指して(渡利ほか)−139−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)に上昇する傾向にある。そのため、我々は多量なエネルギーを消費する工程に焦点を絞り、そのプロセス因子と消費エネルギーの関係を明らかにした。その結果をもとに、既存製造ラインに組み込むことができる要素技術を検討した。4.1 セラミックス製造に要する消費エネルギー図1のセラミックス製造にかかわる工程に加え、資源投入および排出の流れも示す。さらに、各工程におけるエネルギー消費の割合を図2に示す。図2の結果から多量のエネルギーを消費するのは脱脂や排ガス分解処理、そして焼結といった工程である。これは、成形体中の有機バインダーの除去や排出されたガスの二酸化炭素や水蒸気等への転化、さらにはセラミックスの焼結には熱エネルギーが必要であること、しかもそのエネルギー効率が極めて低いことに起因する。そのため、熱エネルギー由来のエネルギー消費量の削減には、①各工程において高効率な焼成炉の利用、②焼結温度の低下による熱エネルギーの低減化、さらには、③脱脂や排ガス分解処理に起因する熱エネルギーの低減化を目指すことである。4.2 装置開発からのアプローチ①については、例えばガス焼成炉を取り上げると、セラミックス成形体を1300 ℃で焼結するために必要なエネルギーは消費エネルギー全体の約2 %である。残りのエネルギーは炉壁の加熱に約25 %、炉壁からの熱損失に約17 %が費やされ、さらに排ガスによる損失が50 %以上を占める。そのため、高効率焼結を目指した焼成システムの開発等の早急な対応が必要であり、近年マイクロ波炉、高温排気をガスの回収に用いたリジェネ炉等が開発されている[2]。セラミックスの製造ラインの省エネ化には高効率焼結炉の開発が極めて重要であるが、この問題は装置開発が主たる課題となるため目標達成のシナリオから除外した。4.3 焼結技術からのアプローチ②の場合、その一つは低温焼結技術の開発により既存の焼結装置を使用して加熱に必要なエネルギー全体量を削減することである。セラミックスの低温焼結の促進には、ナノ粒子ハンドリング技術[3][4]、低融点助剤技術[5]、分散技術[6]、表面被覆技術(助剤と粒子の焼結反応を加速するための助剤を対象)、高密度成形技術等を駆使することが求められる。いずれの技術も低温焼結化に有効に働き、通常の焼結に比較して100~300 ℃低い焼成温度で緻密な焼結体を得ることが可能となる。しかしながら、ナノ粒子の添加による焼成後の大きな収縮やその収縮制御の難しさ、低融点助剤の添加による材料特性の変化や試料表面の汚染、高密度成形技術を用いることによる作業性の低下等の問題は完全に解決したとは言えない状況である。このため、焼結技術をベースとしたアプローチからは撤退した。4.4 バインダー技術からのアプローチ③の方法が既存の有機バインダーの減量化さらにはゼロ化である。有機バインダーの添加は粉末成形体に複雑形状の付与と強度の向上を可能とする。しかしながら、有機バインダーはセラミックス原料粒子との親和性が低いために部分的なバインダー凝集を生じやすく、また粒子同士を結びつける力が弱い。このため、良好な成形性と成形後の形状保持のためには有機バインダーの多量の添加が必要である。バインダー量は対象とする成形体の大きさ、厚さ、形状、プロセス技術によって異なるが、一般的には乾式成形品の場合では5 wt%以下、シート成形品では10 wt%以上、複雑形状成形品では20 wt%以上添加される。しかし、成形後これらのバインダーは不要であるため、脱脂工程にて熱分解・気化され、成形体から除去される。バインダーとして使用される有機質は通常600 ℃程度の温度で加熱されガスとなる。バインダーの一部が粉末表面に灰分や炭素の状態で残留すると焼結性の低下の原因となるため、脱脂工程では精緻なプロセス制御が求められる。同時に、発生したガスは成形体およびシート内での気孔、剥離、反り等の構造欠陥の生成を引き起こすため、ゆっくりとした昇温速度が選択される[7]。ここで、バインダーが完全に除去される温度を600 ℃とすると、この温度に到達するまで昇温速度10 ℃/時間では60時間、30 ℃/時間では20時間の加熱が必要となる。さらには、保温時間および冷却時間を考慮すると脱脂に投入されるエネルギー量は極めて多くなる。バインダーの熱分解によって発生するガスは有機物質(43 %)(26 %)(27 %)(4 %)混合・分散脱脂排ガス処理焼結図2 各プロセスの消費エネルギー量の割合(いずれも研究室レベル、粉末合成に関わるエネルギー量は除く)アルミナ1 ㎏の焼結に要する消費エネルギー。有機バインダー添加量:10 mass%。脱脂工程600 ℃ 1 h保持(12 ℃/h)。排ガス処理工程:900 ℃保持。焼結工程:1400 ℃4 h保持、(600 ℃/h)。脱脂工程と焼結工程には、6 KWの電気炉を使用。排ガス処理工程には、1.4 KWの電気炉を使用。

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