Vol.2 No.2 2009
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研究論文:セラミックス製造の省エネプロセスの確立を目指して(渡利ほか)−138−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)成形、脱脂、焼結といった多数の工程を必要とする。図1にセラミックス製造にかかわる各工程を示す。最初の工程は原料粉末および助剤等の出発原料にバインダーと溶媒を加え、それらを混合・分散する原料調製である。助剤はセラミックスの緻密化および機能発現を誘導する添加剤である。バインダーは粉体からなる成形体への形状付与とその強度維持の目的で使用される有機質の添加剤であり、加熱処理により分解し除去できる高分子系材料が一般に用いられている。その後、溶媒を蒸発させる乾燥、粉末に所定の形状を付与する成形、添加したバインダーを除去する脱脂、成形体を高温で焼き固める焼結を経てセラミックスを得る。これらの工程に加え、脱脂により発生するバインダー由来のガスは有害な成分を含むため、排ガス分解処理が製造ラインに付加される。このように、セラミックスの製造は多数の工程で構成されるため、製造プロセスの開発は単なる一つの工程の技術開発にとどまらず、前後の工程さらには工程を遡って検討する必要がある。例えば粉末の成形性が極めて低い場合、原料粉末、バインダー、溶媒等の原料因子、さらには混合・分散および乾燥におけるプロセス制御因子を検討し、数多くの実験および試作品の作製と評価を通じて最適なプロセス条件を導き出す。そのため、セラミックスの製造には原料調製から焼結に至る幅広い知識と経験、これらに加えて各工程で高い技術力が不可欠である。我が国の製造現場は自らが問題を抽出し、それを解決していく過程で高い技術力を持った。その結果、日本メーカーのセラミックス製品は世界をリードする高い産業競争力を持つことに至った。しかしながら、この技術力はややもすればノウハウとしてブラックボックス化してしまい、工学的な検討がなされていなかった。さらには、既存の製造プロセスの幅広い技術発展を妨げ、生産技術を対象とした学術研究機関と生産現場との接点をますます遠くした。3 省エネプロセス技術における死の谷省エネプロセス技術を生産現場に導入するには超えなければならない 「死の谷」が2つあると考えられる。すなわち、実用化のためには、既存技術と比べたときのコスト等にかかわる「経済的な死の谷」と、既存の製造ラインへの技術導入に関する「技術的な死の谷」である。3.1 経済的な死の谷「経済的な死の谷」は技術導入に伴うコスト増である。絶えずコストの低減を目指している生産現場は、新規製造装置への投資に慎重である。従来の成果を凌駕すると期待される技術への投資であっても既存プロセスをはずれる場合はなおさらである。そのため、開発する技術は既存プロセスに組み込まれ、既存製造装置が利用できることを前提として考える必要がある。また、製造ラインの多くは24時間体制で稼動しているため、軽微な変更で成果が得られることが求められる。3.2 技術的な死の谷製造プロセスの省エネ化に関して数多くの要素技術が提案されている。しかしながら、その技術の多くは工程の複雑化、前後のプロセスとの連携の難しさ、作業性の低下、廃棄物および有害物の発生等の問題を生じる。また、省エネ化を目指すあまり、原料や既存製造ラインの大幅な変更を伴う。その結果、多くの開発技術がセラミックス製造現場で実用化されていない。4 目標達成のシナリオ開発技術が製造現場で有効に使われるには、上記に挙げた2つの「死の谷」を超える必要がある。「死の谷」を超えるには、開発する技術を既存製造ラインに採用されることを前提に検討することが重要である。生産システム全体の省エネ化を目指した場合、多数のプロセス因子が変動すると、その結果として工程が複雑になり、製造コストが大幅排出CO2等製品排ガス処理焼結燃料脱脂成形投入排出燃料燃料CO2等CO2等乾燥混合分散溶媒バインダー助剤原料粉末投入投入図1 セラミックス製造に関わる各工程と資源の流れ

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