Vol.2 No.2 2009
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研究論文:部材の軽量化による輸送機器の省エネ化(坂本ほか)−135−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)執筆者略歴坂本 満(さかもと みちる)1980年筑波大学第一学群自然学類卒業、1985年筑波大学大学院博士課程地球科学研究科修了、博士(地質学)。同年4月工業技術院九州工業技術試験所機械金属部入所後、金属基複合材料の研究開発に従事。2007年8月産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門に配置換、同年11月中部センターへ異動。本研究では難燃性マグネシウム合金の難燃化機構の解明と連携ネットワーク構築・運営に従事した。上野 英俊(うえの ひでとし)1965年福岡県立浮羽工業高校卒業、同年4月工業技術院九州工業技術試験所機械金属部入所後、金属基複合材料の研究開発に従事。2001年産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門環境適応型合金開発グループ長。一貫して軽量金属材料の研究に従事し、金属基複合材料の実用加工技術開発および発泡アルミニウムの実用化に成功。本研究は主として難燃性マグネシウム合金の塑性加工技術を担当した。査読者との議論 議論1 マグネシウム合金の位置づけについてコメント・質問(清水 敏美:産総研研究コーディネータ)本研究の社会的価値は輸送機器や機械要素の軽量・高効率化を介しての省エネルギー化です。しかしながら、現在の基幹材料でもあり、本文中にも記述がある鉄鋼やアルミ、さらにはCFRPなどと比較して、なぜマグネシウムが研究対象の中心になっているのかが不明確です。第1章では、シナリオの導入にあたってまず重要なマグネシウムの位置づけを明確にする必要があると思います。回答(坂本 満)マグネシウムを難燃化することで基幹材料としての地位を確立し、その先にある鉄鋼やアルミニウムのような既存の基幹材料とは別次元の輸送機器の軽量化に大きく資することが目標です。基幹材料としての可能性のある材料は多くはなく、マグネシウムはその数少ない候補の1つと考えております。社会の基盤をなす輸送機器の容積を考慮すると、これを軽量化するための材料は鉄鋼やアルミニウム並の供給ができる基幹材料でなければならず、工業材料としてその資格がある材料としての観点からマグネシウムを選択しています。確かに、定性的には様々な材料が軽量材料として考えられます。また、既存の輸送機器システムがそのまま将来にわたって使われるわけではなく、新しいシステムが登場するのは間違いないわけで、その構成材料は既存の材料とはかけ離れたものになる可能性もあると思います。しかし、構造材料としての面から考えた場合、やはり既存の鉄鋼材料やアルミニウム並みの供給に対する安定性、それも環境負荷の観点からの保障が必要になるものと思います。議論2 製品化を意識したシナリオの作成についてコメント・質問(村山 宣光:産総研先進製造プロセス研究部門)坂本 満, 秋山 茂, 上野英俊, 大城桂作:マグネシウムへのカルシウム添加による酸化被膜特性の変化と難燃化, 鋳造工学, 69, 227-233 (1997).北原陽一郎, 池田健介, 島崎洋明, 野口博司, 坂本 満, 上野英俊:難燃性マグネシム合金の疲労強度特性(AMCa602Bの疲労強度に及ぼす非金属介在物の影響), 機械学会論文集, 57, 7-8 (2004).北原陽一郎, 池田健介, 島崎洋明, 野口博司, 坂本 満, 上野英俊:難燃性マグネシム合金の疲労強度特性(第1報, 3種類の難燃性マグネシウム合金の定量的疲労強度特性), 機械学会論文集A, 72, 661-668 (2006).池田健介, 北原陽一郎, 野口博司, 坂本 満, 上野英俊:難燃性マグネシム合金の疲労強度特性(陽極酸化コーティング材の特性), 機械学会論文集, 57, 9-10 (2004).野口文男, 吉田信一郎, 山根政博, 柿本幸司, 橘 武史, 阪本尚孝, 川田勝三:マグネシウムおよびマグネシウム合金の排水処理への応用, 資源素材学会春季大会概要 (2006).野口文男, 吉田信一郎, 山根政博, 柿本幸司, 橘 武史, 阪本尚孝, 川田勝三:排水中の有害金属の除去と有価金属の回収-廃水中のAsの除去(第一報), 日本鉄鋼協会第149回春[1][2][3][4][5][6]参考文献用語4:用語5:と、低温では析出するはずの合金元素を母材に溶けこんだままの状態を凍結することができ、これを溶体化と呼ぶ。その後で溶体化材を適当な温度で一定時間保持すると、溶け込んでいた合金元素が微細な結晶として母材中に析出し、これにより強度や硬さ、延性といった性質が変化する。この一連の熱処理を時効処理という。溶体化状態からの時効を室温で起こさせることを自然時効と呼び、高温下で強制的に起こさせることを人工時効と呼んで区別される。さまざまな熱処理方法の中で、特に軽金属の分野ではこの2つが頻繁に用いられ、これらを指す記号として前者をT4処理、後者がT6処理と呼ばれている。介在物起点:疲労による強度の低下は、物体の中に微視的な割れ目が発生し、これに繰返しかかる力によって割れ目が次第に進展して大きくなることによる。最初の微視的な割れは物体内部で応力集中が起こる場所に発生する。応力集中はさまざまな場所で起こるが、物体の中に含まれる異質な固体不純物(金属では酸化物等の非金属介在物)の周辺は応力集中の場所となることが多い。また、このような介在物と母材との界面の結合が弱い場合、介在物の存在は母材の欠陥となって微小な割れ目と同様の作用をする。このような介在物の周りが起点となる破壊のこと。TIG溶接:Tungsten Inert Gas溶接の略で、金属を溶かして接合する溶接法の1種。金属を溶かす方式で、アーク放電を用いるものの中で、高融点のタングステン棒と接合母材の間に高電圧を掛け、タングステン棒からアークを出すことによって母材を溶かして接合する方法である。基本的に手で溶接するために複雑形状にも適用でき、非鉄金属の溶接では広く一般的に用いられている。季講演大会概要 (2005).野口文男,吉田信一郎, 山根政博, 柿本幸司, 橘 武史, 阪本尚孝, 川田勝三:排水中の有害金属の除去と有価金属の回収-マグネシウムによる廃水中のCrの回収(第二報), 日本鉄鋼協会第153回春季講演大会概要 (2007).[7]

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