Vol.2 No.2 2009
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研究論文:部材の軽量化による輸送機器の省エネ化(坂本ほか)−132−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)グネシウム合金は燃え難い、したがって通常の金属材料と同じ範疇で開発を進めることができる。しかし、既存のアルミニウム合金とは似て非なるものであるがゆえに既に完備された他の金属材料のような総合的な技術データや加工システムを迅速に整備する必要がある。そこで、マグネシウムに適応した個々の技術のあるべき姿はどういうものなのか、という観点からシナリオを策定することが必要であった。幸いにして、難燃性マグネシウムをユニークなシーズとして興味を示した複数の異業種企業の理解を得て、共通の目標を持つ連携組織を設けることができたことから、この連携を通じて研究開発のシナリオを早い段階から策定・共有でき、効果的な開発を進められたと考えている。材料は実際に使われて始めて材料であり、使われるためには従来材料の例を見るまでもなく、極めて広範な技術集積とそれらの経験の蓄積が必須である。基幹材料であればなおのこと総合的な技術の蓄積が必要であり、これを自然の流れに委ねる場合には極めて長い時間を要するのが普通である。我々は、難燃性マグネシウムの実用化を加速するために、個々の要素技術開発にあたっては、それぞれのメンバー間で総合的・トータルなイメージを共有しつつ、材料の実用化という1つのシナリオの下で技術開発を進めることを意図してきた。そしてそれらの個々の要素技術が相互に作用しあう活動を通じて、新素材を一気に工業材料へとイメージを変え、基幹材料としての育成の流れを構築することに努めた。このためには、企業や大学、公設試験研究機関等の性格を異にする機関の広範な連携ネットワークを通じた研究開発が効果的であった。技術の総合した最終的な姿、すなわち環境親和性材料体系の構築を通したアプリケーション展開という目標を共有しながら研究開発を進めた。そのなかに、縦糸としての産と横糸としての基盤技術という質的に相違する研究活動のコラボレーション体制による面的な研究開発体制の構築が、研究の効率化に非常に有効であった。前者の産においては、図9に示すように川上から川下へ、素材から製品への垂直連携体制を取り、相互にフィードバックすることで技術課題が明確になる。また、素材から部材まで取りあえず産業レベルで入手できなければ、そもそもの研究すらおぼつかないとの意識から、図の各企業では最低限の商業的な量産体制を備えている。一方、基盤技術に関しては図10に示すように、大学や公設試験研究機関が、上記の企業活動に対してそれぞれの局面でシーズ技術の供給と技術課題に対する横断的できめこまやかな技術的な支援ができるように、密接なネットワークを構築して支援体制とした。この構図によって、産業連携においては各業種が点として孤立的に技術開発するのではなく、面的に同時進行する総合的な技術開発を意識できるようになり、基盤技術のネットワークにおいては個々の技術課題の意義や位置付けが孤立化することなく明確に視覚化された状態で提示され、産業との直接的関係の下での要素技術開発ができる。後者の基盤技術ネットワークにおける副次的な成果として(公的機関としては究極的なアウトカムであるが)、1つのシナリオを共有し方向性を一致させた研究開発手法の効果を成功体験として持つことであり、総合的な技術開発のための連携研究プラットホームが醸成されることである。難燃性マグネシウムにとどまらず、このプラットホームが今後ともさまざまなイノベーションの醸成母体となり得ると期待される。5 実用化と開発研究の現状図9 難燃性マグネシウム合金の量産化体制技術移転鋳造品・ビレット販売技術移転技術移転技術移転KS社DM社T社ST社溶接技術自動車部材供給鍛造品供給鍛造品販売圧延品・板材販売形材・ビレット販売共同開発共同研究共同研究共同開発形材販売形材供給形材供給ビレット供給ビレット供給ビレット供給プリフォーム供給プリフォーム供給産総研自動車自動車部品車両押出し押出し商社鋳造鍛造圧延ビレット・素材
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