Vol.2 No.2 2009
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研究論文:部材の軽量化による輸送機器の省エネ化(坂本ほか)−131−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)ウムを含むことが必須であるので、難燃化のために添加したカルシウムと高融点のアルミニウム-カルシウム系金属間化合物が形成し、これが初晶として粒界にネットワーク状に晶出し、溶湯の湯流れ性を悪化させ、機械的性質、特に延性に悪影響を及ぼす。この組織を図5aに示す。アルミニウム-カルシウム系金属間化合物は母相金属中への固溶度が極めて小さいため、熱処理等でこのような凝固組織を制御することは容易ではない。一方、塑性加工を想定すると事情は異なってくる。塑性加工性に劣る難燃性合金であっても、基本的には熱間用語2で、より静水圧的な加工法である押し出し加工を適用することにより良好な加工ができる。この時、粒界のネットワーク状のアルミニウム-カルシウム系金属間化合物は押し出し方向に微細に破砕されるとともに、母相金属は再結晶作用により結晶粒が微細化し、全体に極めて微細な組織となる(図5b)。これによって強度および伸びは著しく向上する。図6にはAMX602合金の機械的性質を示すが、押し出し材の場合は熱間押し出し後にT4処理用語3を施したものでは室温伸びが20 %を越えるレベルにまで改善する。このことは、難燃性合金の塑性加工を最適に行えば、強度と伸びのバランスに優れた材料を得ることができることを示している。塑性加工の重要な技術に鍛造と圧延がある。熱間押し出し加工による製品開発と平行して、押し出し材を出発材料として鍛造や圧延による製造技術の開発が必要である。また、凝固組織を微細制御した低コスト連続鋳造材からの直接鍛造技術も研究途上にある。板材に関しては基礎研究の成果としてようやく冷間成形性に優れた組成・組織が見いだされつつあり、低コストの量産技術開発フェーズへの移行段階にある。また、マグネシウム合金の合金種の乏しさ、特に高強度材や耐熱材料に関しては依然としてさらなる基礎研究が必要である。構造材料として実用化するためには信頼性評価が重要である。図7は難燃性合金AMX602押し出し材の回転曲げによる疲労強度評価結果の一例である。この材料の特徴は、明確な疲労限があり、またアルミニウム合金に比べて切り欠き感受性が低いことが明らかとなっており[2]-[4]、構造材料としては使いやすい材料である。ただし、破壊は全て介在物起点用語4で起こり、清澄な高品質素材の製造技術が非常に重要であることが明らかとなっている[2]。3.3 リサイクル技術一方、ユーザーサイドの材料選択の指標として最近ではリサイクル性の高さが重要となっている。またリサイクル性は製造コストにも直結する重要な特質である。リサイクルに関する研究として鋳造メーカーにおいて溶製時のインハウスリサイクル技術の開発が進められており、現状では回転材利用率50 %以上を維持する精製レベルにある。また、自動車部材として実用した場合のシュレッダー処理を想定した安全性と、処理材の機能利用に関する検討例として、大気中での機械式粉砕結果の一例を図8に示す。写真は、篩径38μmアンダーの粒子であり、機械粉砕が安全にできることを示している。さらに、このような粉砕粒子の利用方法として、排水中のヒ素やホウ素、亜鉛、クロムの吸着特性を調べ、マグネシウム水酸化物が強力な吸着剤となることを明らかにしている[5]-[7]。4 製品化のための産学官連携スキーム新しい材料を世に出すためには、それがもたらすであろう技術の全体を俯瞰した上で、明確なビジョンと実現のためのシナリオが必要であると考えられる。難燃性マ図6 難燃性マグネシウム合金(AMX602)の機械的性質図7 難燃性マグネシウム合金(AMX602)の疲労強度評価図8 難燃性マグネシウム合金(AMX602)の粉砕粒子(38 μm篩下)40001002003000510152025押出し/T4押出し材鋳造/T4鋳造材引張り強さ0.2 %耐力伸び伸び / %引張り強さ、0.2 %耐力 / MPa破断までの試験回数、Nf応力振幅、σa (Mpa)1041081071061055010015020015KU1000x10.0 µm012915KU5000x2.00 µm0130
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