Vol.2 No.2 2009
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研究論文:部材の軽量化による輸送機器の省エネ化(坂本ほか)−130−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)難燃性合金は活性なマグネシウムにさらに活性な金属カルシウムを添加することから、一般の合金に比べて溶製時用語1に生成する酸化物などの介在物が溶湯に多量に混入し、強度や耐食性に悪影響を及ぼすことが問題となる。介在物はその比重が溶湯に近いために、沈殿させたり浮上させたりして分離するのが難しく、完全な分離除去は困難である。通常はマグネシウムやカルシウムの塩化物、フッ化物を主とするフラックスを用いて取り除くのが一般的であるが、フラックスが微量でも残留すると耐食性に悪影響を及ぼし、これを回避しようとすると材料歩留まりが低下する等の問題を有している。また、塩化物やフッ化物からなる産業廃棄物が出ることも問題である。せっかく防燃ガスやフラックスを使わない大気溶解プロセスを開発しても、その精製工程でフラックス等を使うのであれば技術としての価値は大きく損なわれてしまう。我々はこの問題について第1に環境面でクリーンであり、できるだけ単純でしかも効果的な方法を開発することが生き残りの条件と考えた。溶融した難燃性合金の表面には緻密な酸化被膜ができ、これによって酸化が防止されると同時に、溶融状態のマグネシウムの高い蒸気圧が見かけ上極めて低く抑えられていることに着目した。すなわち、減圧法による精製技術の開発であり、難燃性マグネシウム合金を実用材料へと変えるブレークスルーであった。この方法は極めてシンプルなために実施が容易で、特に大規模な生産現場でも導入できることが特徴である。減圧法は、合金溶湯を減圧下で保持することにより、介在物を合金溶湯の表面に浮上・分離させて除去する簡単な方法である。溶湯中には種々のガスが溶存しているので、介在物は減圧により生成したガス気泡に付着して溶湯表面に短時間で浮上する。通常のマグネシウム合金の蒸気圧は高いので減圧下に置くことはできないが、難燃性マグネシウム合金は溶湯表面に形成する酸化被膜の働きにより、見かけ上の金属蒸気圧が極めて低くなるので、アルミニウムや鉄鋼のように減圧法による精製処理を適用することができる。減圧による到達圧力は通常の機械式ポンプの排気能力で充分であり、保持時間は溶湯の量に応じて数十秒から数分である。このため、大型の溶解炉でも容易に応用することができる。図4には産総研に設置された減圧精製機構を備えた容量100 kgの難燃性マグネシウム合金溶製炉の概観を示す。従来のフラックス法ではフラックスに由来する蒸気等によって作業環境が劣悪になるが、本法は作業環境が安全でクリーンであり、また、フラックスが溶湯中に残留する心配がないので材質的な信頼性を損なう心配もないというメリットを持っている。この技術を現在のところ4社へ技術移転し、量産化を進めているところである。一方、一連の溶製プロセスは大気溶解が中心となっており、最後の段階で介在物を除去するために蓋をして減圧して精製を行うという、基本的に大気プロセスであることから、鋳造プロセスの低コスト化に直結し、実用化されている。ただし、後に述べるように難燃性合金の鋳物を製造するためには多くのノウハウを必要とするのが現実である。3.2 塑性加工技術第2の問題は塑性加工に関するものである。鉄鋼やアルミニウムに比べてマグネシウムの冷間用語2での加工性は劣悪であり、ユーザーが初めて採用することは大きなリスクを伴う。このことはマグネシウムの製造コストを悪化させ、産業界での現実的な高い障壁となる。鉄鋼やアルミニウム合金が立方晶を基本とする異方性の小さい構造を有するのに対してマグネシウムは異方性の大きな六方晶であり、冷間ではそもそも豊かな塑性変形能は乏しく、本質的に塑性加工性の問題を有している。難燃性合金では問題がさらに深刻となる。マグネシウム合金は強度と耐食性の面からアルミニ図4 減圧精製機構を備えた難燃性マグネシウム合金溶製炉(容量100 kg)図5 難燃性マグネシウム合金(AMX602)の組織a:凝固組織、b:押し出し加工後の組織真空部灯油バーナー炉体(a)(b)10 μm

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