Vol.2 No.2 2009
38/108

研究論文:安心・安全な次世代モビリティーを目指して(佐藤ほか)−125−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)に、このスパイラルアップの方法をとったことに関する考察(良かった点や改善すべき点など)を加えてください。質問・コメント(内藤 耕)研究のスタイルは、プロトタイプ開発を通じて技術を可視化し、必要な外部知見を効率的に導入することで、研究成果が継続的に進化していく方法論が採用されています。この研究方法論によって、応用的に見える研究(第2種基礎研究)から、さまざまな基礎科学研究(第1種基礎研究)がドライブされていることを、自ら実証しています。これは研究マネージメント上の重要な発見で、第3章において、どのような知見をもとに、どのような第1種基礎研究がドライブされたかを、各要素技術の記述を構造化することで、その流れを明確化できます。記述方法の再構築と第3章の最後にそれを表として整理をお願いします。回答(佐藤 雄隆) 研究の具体的なプロセスを整理した図10を追加いたしました。また、同図に関する説明を第4章1節として追加いたしました。具体的な説明につきましては第4章1節のとおりですが、図10の構造は第2種基礎研究がエンジンとなって活発に第1種基礎研究を生み出し、その第1種基礎研究によって創生および性能・価値が上がった要素技術によって更にレベルの高い第2種基礎研究を行う、という「価値を増幅させるサイクル」が実現されています。しかも、第1種基礎研究において研究を行う要素技術はいずれも直ちに必要とされているものであるため出口が明らかで、かつ性能の評価基準も明確(発生している問題を解決できるかどうか)であるので、研究のバランス・効率がとても良かったと考えています。これに関する記述を整理して第6章に記述しました。 また、当初我々は評価のフェーズからのフィードバックは、研究の内容・方向性を調整する程度の間接的で抽象的なものになると考えていました。しかし、実際にはユーザーなどを巻き込んだ評価がダイレクトに要素技術を生み出す力となりました。これは我々にとって新しい発見であり、図10中にそのプロセスを表現いたしました。従来の我々の第1種基礎研究を起点とする研究アプローチでは実質的に重視されてこなかったユーザーやサービスの層まで含んで第2種基礎研究のエンジンを構成し、そこからダイレクトに出てくる要素技術を生み出す力をもって第1種基礎研究を推進するという全体像が本格研究の1つの実例となり得るのではないかと考えています。議論3 実現した各機能について質問・コメント(赤松 幹之) 実現した代表的機能として、障害物検知、下り坂検知、姿勢異常の検知、ジェスチャー検知、自動追尾、自動経路選択の5つを紹介していますが、これらの機能を発揮する状況の説明が必ずしも明確ではないようです。ユーザーの状態として脇見をしていることを想定しているのか、また障害の程度を想定した機能なのか、また車いすの事故分析に基づくものなのか、など研究開発のゴール設定の説明が望まれます。回答(佐藤 雄隆)ご指摘のとおり各機能の選定理由および目的が明確でありませんでしたので、第1章、第2章、第3章冒頭、図2、および第4章2節にそれぞれ記述を追加しました。ユーザーとして想定する対象は健常者も含む全ての人ですが、歩行者とも共存しながら安全に走行することを検討するにあたって、「周囲環境を迅速かつ的確にセンシングし、得られた情報からリスクを的確に検出する機能」が必須であると考え、障害物検知および段差の検知を第一に実装いたしました。更に、高齢者や障害者を対象とした情報収集を行ったところ、ジェスチャー認識機能に対するニーズがあることを発見し、同機能をスパイラルアップ・サイクルの過程で実装しました(これについて第3章6節に記述しました)。自動追尾、自動経路選択の機能につきましては、将来的な自動移動に向けた発展的な取り組みとして研究を行っています。試作機のセンシング能力をわかりやすく表しているので、本文中で紹介しましたが、その位置づけが明示されていませんでしたので、第5章1節に記述を追加しました。議論4 他の自動化技術との関連について質問・コメント(赤松 幹之) 第5章1節の終りに安全と自由の議論がありますが、自動車のITS分野では自動運転の実路実験が行われた10年前に議論が多くなされました。自動車の場合には加害性が高いため、事故が起きた場合の責任を誰がとるかが議論のポイントでした。結局、完全自動運転で事故が起きた場合にはメーカーが責任を取ることになる可能性があることから、ドライバーの意志の元での運転支援技術とする方向になりました。すなわち、基本的に必ずドライバーが関与した状態にしており、ドライバーが発現した行動に対するアシスト技術として社会に導入していくという戦略がとられています。そして、アシスト技術が普及する過程で、システムの信頼性や機能の高度化が進められ、そのプロセスで自動化が受け入れられる社会が形成されれば自動化システムが導入されていくかもしれません。一方、センシング技術を中心とした運転支援システムとしては、衝突警報システムが市場導入され始めています。ここでは、ユーザーインターフェースのデザイン(センシングした状況をいかに正しく、かつ迅速にユーザーに伝達するか)と、警報システムに対する過信の問題(警報が出ることに安心して脇見を多くするようになる等)が議論されています。このようにITS分野では、安全と自由の問題は、制御においてはシステムとユーザーとの役割分担、センシングにおいてはユーザーインターフェースのデザインと過信の問題として議論されています。 この研究開発はセンシング技術が基盤となっていますが、上述のように、ユーザー自身による制御とシステムによる制御のバランスをどうするかが社会導入へのポイントになると考えられます。この点についてのお考えがあれば書いていただきたく思います。回答(佐藤 雄隆) たいへん悩ましい問題ですが、ご指摘のITSでの流れが的確に状況を表していると思います。我々としては、システムの信頼性や機能の高度化を進めることで、自動化が受け入れられる社会の形成を目指すことになります。残念ながら現状で具体的な案が固まっているわけではありませんが、その過程では安全性を評価するための枠組みを、同様の問題を持つ自動車や生活支援ロボットの分野とも連携しながら積極的に形成していく取り組みが必要であると考えます。これに関して第5章1節後半に記述しました。議論5 リスクを的確に検出する技術について質問・コメント(赤松 幹之)リスク検知を重要な技術課題として挙げられていますが、実際には第5章1節に書かれているように、ユーザーのリスク認知に合致したリスク判定は極めて難しいもので、今後の研究開発が不可欠です。その意味からすると第3章5節の「危険検知」は物体検知(凹みも含めて)のレベルの技術の説明になっていると思います。危険度の判定、制御を減速とするか停止とするかの判定などの記述が必要と思います。回答(佐藤 雄隆)ご指摘のように、リスクを的確に検出する技術について記述が不十分でしたので、第3章5節に記述を追加するとともに図8 を新たに追加しました。また、段差の詳細な分析に関しては、現状のシステムでは精度の問題で困難であること、また、その問題を解決するために近赤外パターン光を用いるステレオ画像処理システムの開発を別途進めている旨と、その参考文献を新たに追加しました。議論6 ジェスチャー検出について質問・コメント(赤松 幹之)ジェスチャー検知についての記述がやや簡単で、その適用範囲が

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です