Vol.2 No.2 2009
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研究論文:安心・安全な次世代モビリティーを目指して(佐藤ほか)−121−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)号機も同時に運用している)。デザインのポイントは次のとおりである。(1)内部の機材·配線は可能な限りカバーする。これらが剥き出しの状態を見せることは「研究室内の実験に留まるレベルである」ということを敢えてアピールすることに(結果的に)なり、今回のミッションには相応しくない。(2)デザインのセオリーを無視してカバーを無理に小型化しない。車載機器が小型であることをアピールしたいがために、カバーを無理に小型にデザインすると全体のまとまりが悪くなり、「余計な部分」としてむしろ目立つことになる。例えば、図13右の例では車載機器の占める体積は、カバーの体積の3分の1ほどである。しかし、全体としての一体感があるため「どこにコンピュータが入っているのですか?」といった質問を展示会等で多く受けるほどであった。(3)産総研の取り組みであることを明示するためにAISTのロゴをデザインの一部として組み込んだ。5 評価5.1 試作機を用いた実験図14に基本的な障害物検知実験の様子を示す。(1)~(4)まで時系列順に4コマのシーンを示す。それぞれ、右上に搭乗者が操作しているジョイスティックの方向(上方向が前進に相当)、左下に全方向ステレオカメラによって撮影した全方向画像(球面で表現:中央に搭乗者が映っている)、右下に 第3章7節で紹介した情報提示インターフェースの画面を示す。(1)では前方の障害物(いす)に接近し、自動的に減速モードとなった。搭乗者が引き続きジョイスティックを前に倒し続けたため、障害物に衝突する直前の(2)で自動停止した。次に、(3)で搭乗者がジョイスティックを後方に倒し、後退を開始したが、搭乗者の視界の外となる後方から歩行者が接近しており、衝突の危険がある(4)で自動停止した。図15は下り階段を検出し、自動停止する例である。路上の障害物だけでなく、段差や下り階段についても検出を行っているので、転落を未然に防止できる。図16および図17に、ジェスチャー検出機能の動作例を示す。図16では、搭乗者の乗車姿勢が予め登録したものと大きく異なることが検出されたため、緊急停止を行っている。このような状態が設定された時間以上続く場合には、携帯電話などを介して外部に自動通知することができる。図17はジェスチャー検出機能と危険検出機能を同時に活用した例である。電動車いすから物を把握したり、エレベータのボタンなどを押すために対象に近づいたが、あと少しで手が届かない場合に、手を伸ばし続けるジェスチャーをトリガーとして、手が届く位置まで安全を確認しながら自動的に前進する。具体的には、(1)で搭乗者がペットボトルを把握するために腕を3秒以上伸ばし続けていると、(2)でアシストが始まり、電動車いすが自動的に微速前進する。腕を戻すか、障害物(ここでは机)と干渉する直前で自動停止するので、(3)で搭乗者はペットボトルを把握することに成功した。これらのジェスチャー認識機能は、第3章6節で既に述べたとおり、現状ではボクセルによって粗く量子化した三次元形状のパターンを予め登録したパターンと単純に比較することによって姿勢やジェスチャーを判定しており、図16や図17の例のような比較的大きな動作を検出の対象としている。一方で、腕に障害を持つ一部のユーザーからは「肩の微妙な動きをジェスチャーとして認識できないか」といった要望も出ており、今後は学習型のパターン認識手法を導入することで、より細かな動きを正確に認識する手法の開発を検討する予定である。なお、図17の機能は実際の車いすユーザーから要望があり、実現に向けて検討を行ったものである。電動車いすはジョイスティックによる微妙な位置決めに熟練を要する。特に物を把握するために机に近づいたり、エレベータのボタンを押すために壁に近づくケースでは、操作の間違いによって机や壁に衝突する可能性があり、大きなリスクを伴う。このような問題を避けるため、微妙な位置決めが必要な場合には介助者の手を借りるケースもあるのだが、同様の介助が1日に数10回、数100回と必要になるため、むしろ電動車いすの搭乗者が「申し訳ない」と感じ、ひいては外出を差し控えることにもつながる場合がある。このような些細だが回数の多い介助こそ機械がサポートしてくれないか?という当事者の要望を受けて検討を行った。以上が試作機における基本機能であるが、さらに発展的にいくつかの機能を実装し、検討を行った。図18では最も近くにいる人物を認識し、常に人物に対して正対、かつ1 mの距離を保つように自動追尾している。全方向を同時に監視しているため、人物が急な移動を行ったとしても図15 下り階段の検出下り階段や段差等を検出し、走行に危険がおよぶと判断される場合は自動的に減速・停止する。STOPSlow Down
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