Vol.2 No.2 2009
32/108

研究論文:安心・安全な次世代モビリティーを目指して(佐藤ほか)−119−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)ラストを高く表示することで、搭乗者が「どの方向にどのようなリスクがあって、現状どう制御が介入しているのか」を直感的に理解できるようにしている。なお、この端末には全方向ステレオカメラによって取得した全方向画像を表示する機能も実装している。例えばバック時に後方を確認したり、自分を見下ろす視点で周囲を確認することもできる(図9右)。画面はタッチパネルになっており、指によるタッチ操作で好みの視点に調整できる。4 要素の統合・構成4.1 研究の具体的プロセス研究プロセスの全体像について述べる。図10は図1で示した研究戦略モデル図に基づいて、研究のプロセスをより具体的に示したものであり、その流れは次のとおりである。(1)中核となる 「センシング機能」および「危険認識機能」を実現するための要素技術として、従来の研究シーズから全方向ステレオカメラ、ステレオ画像処理、画像統合処理、危険検知処理を初期選択した。(2)要素技術の統合・構成を可能な限り短期間で行い、試作機を完成させることで研究・技術の可視化を行い、ユーザー・社会に向けて積極的に情報発信(論文のみならずプレスリリース、展示会なども通して)を行った。このとき、試作機のデザイン設計も情報発信の精度・効率を高めるために重要となる。(3)評価のフェーズでは、実験・考察のみならず、外部の評価・ニーズ・知見の獲得にも注力することで、効率的に現状を評価する。これによって、改良が必要な要素技術、あるいは新規に開発することが必要な要素技術を見極める。(4)要素技術の創生および改良に関する研究を行う。これはいわゆる第1種基礎研究に相当するが、解決すべき課題および評価基準が明確であるため、効率的に研究を推進することができる。(5) 更新・追加された要素技術群を再び統合・構成し、以下同様のサイクルを繰り返す。以上は、第2種基礎研究がエンジンとなって、第1種基礎研究を生み出し、再び第2種基礎研究に回帰することで、研究成果をスパイラルアップ的に継続して進化させる構造であると捉えることができるだろう。また、我々は当初、評価のフェーズにおけるユーザー・社会からのフィードバックは(研究の内容・方向性を調整する程度の)より抽象的・間接的なものであると想定していた。しかし、実際にはユーザーを巻き込んだ評価がダイレクトに要素技術を生み出す力となった。従来の我々の第1種基礎研究を起点とする研究アプローチでは実質的な重視がされてこなかったユーザーやサービスの層まで含んで第2種基礎研究のエンジンを構成し、そこからダイレクトに出てくる要素技術を生み出す力をもって第1種基礎研究を推進するという全体像がいわゆる「本格研究[4]」の1つの実例となり得るのではないかと考える。4.2 試作機の概要第3章で述べた全ての要素技術を統合・構成した試作機の外観を図11に示す。この試作機は(1)周囲の歩行者や障害物、段差や階段などを全方向にわたって同時に検出し、走行に危険がおよぶと判断される場合に自動的に減速・停止する機能、(2)搭乗者のジェスチャーや乗車姿勢を認識し、介助を行う機能を基本機能として持つ。全方向ステレオカメラは、アーム支持により、搭乗者の頭上前方に位置するよう設置した。この位置は人間が歩行するときの目の高さに相当し、生活空間における危険を検出するうえで合理的である。また人間が歩行する空間にお図11 試作機の外観全方向ステレオシステムはユーザーの頭上前方に設置した。PC や電源等の機器は全て車載され、外部ケーブルを全く必要とせず約4 時間連続動作することができる。図10 研究の全体像第1種基礎研究・ 高速姿勢推定アルゴリズムの開発・ ジェスチャー認識アルゴリズム開発・ インターフェース設計振動および設置姿勢可変化への対応ユーザーニーズの発見制御状態提示の必要性外部知見評価、ニーズ、評価第2種基礎研究要素の選択積極的な情報発信従来の研究シーズから初期選択・ カメラヘッド構造の耐震化・ グ口ーバルシャッターCMOS採用・ インターフェースPCI-Express化振動対策・処理系小型化の必要性・ 高速計算アルゴリズムの開発・ 高精度化アルゴリズムの開発・ インターフェース改良高速化・高性能化・高機能化の必要性要素の改善・改良サイクル要素の追加意匠設計試作機構成・統合・可視化実験・考察外部の評価ユーザー・社会センシング技術全方向ステレオカメラステレオ画像処理画像統合処理カメラヘット姿勢推定危険検知処理ジェスチャー認識処理認識技術情報提示インターフェースインターフェース

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です