Vol.2 No.2 2009
31/108
研究論文:安心・安全な次世代モビリティーを目指して(佐藤ほか)−118−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)進しつつ回転が加わるF+1~F+2では、ユーザーのジョイスティック操作によって絶えず回転量が変化することが予想されるので、確率的な広がりを考慮して扇形の判定エリアを設定している。回転量が大きくなるF+2の例では、進行方向前方の障害物だけでなく、回転方向内側の巻き込みや、回転方向外側のはね飛ばしも考慮する必要があるため、回転方向内側に判定エリアを拡大すると同時に、進行方向反対側となる回転方向外側にも停止エリアを設けている。なお、障害物の観測・検出自体は、これらの判定エリアに関わらず、常に全方向に対して行っているため、急激なジョイスティック操作により急に判定エリアが切り替わったとしても、遅延なく危険の判定を行うことができる。さらに、床より低い領域も検出対象としているため、段差や下りの階段なども検出し、電動車いすの走破性能を超えると判断される場合には自動的に減速・停止させることができる。なお、段差は自動車や台車などの通過を考慮して角が削られている場合もあり、落差はあっても実際には通過可能である場合もある。しかし、現状では5 cmを越える落差があると判定される場合は無条件で停止させる。これは、ステレオ画像処理による距離計測の誤差が条件によっては2~3 cmのオーダーで出る場合があり、現状では、十分な安全余裕を持った判定ができないためである。なお、詳細は参考文献[12]に譲るが、この問題を解決し、さらに高度で詳細な危険検出を実現するために、観測に近赤外パターン光を併用するステレオ画像処理システムの開発を別途進めており、数mmのオーダーで段差を詳細に観測することに成功している。今後はこの技術の本システムへの適用も検討する。3.6 ジェスチャー検出搭乗者の姿勢の変化やジェスチャーを全方向ステレオカメラによって三次元的に捉え、電動車いすのコントロールを行う機能を検討した。具体的には、(1)乗車姿勢の異常を検知する機能、(2)腕によるジェスチャーを検出する機能をそれぞれ実装した。これらはいずれも、搭乗者付近の空間を小立方体領域(ボクセル)に分割し、それぞれの領域内の物体の有無のパターンに基づいて認識を行う[11]。乗車姿勢やジェスチャーの出し方については、搭乗者ごとに予め登録を行う。乗車姿勢の異常やジェスチャーの検出を行う際には、予め登録したパターンと観測されたパターンの類似性を基に判定を行う。具体的な動作については、5.1で詳しく述べる。なお、この機能は研究開始当初は設定されていなかったが、試作機完成後ユーザーからの要望により実装を検討したものである。3.7 情報提示インターフェース全方向ステレオカメラが危険を検知し、電動車いすが減速あるいは停止モードに入ったとき、搭乗者がその理由を理解できない場合に強い不快感を覚えることが試作機を用いた実験によって明らかになった。そこで、危険の検出状況を搭乗者に知らせるためのインターフェースの検討を行った。まず、情報提示のために小型の携帯情報端末を搭乗者の手元付近に設置し、次に情報提示方法の検討を行った。初期段階ではできるだけ多くの情報を搭乗者に伝えた方が良いと考え、危険が検出された方向・高さなどをグラフィカルに表示するものを試作しテストした。しかし、多くの情報が同時に表示されるため、走行中とっさに見て理解するのが困難であることがわかり、より直感的に理解できるよう工夫した。図9左に最終的に採用したものを示す。ここでは衝突や、段差からの転落などのリスクをわかりやすいピクトグラムで表現し、リスクが存在する方向に表示する。そして「STOP」、「Slowdown」などを大きな文字でコント図8 判定エリアの制御ジョイスティックの倒された方向によって判定エリアを切り替える。図は電動車いすおよびジョイスティックを真上から見たもので、上方向が前進方向、下方向が後退方向を表す。紙面の都合で前進直進(F0)~右その場回転(R)のみ示したが他の方向も同様に定義する。図9 情報提示インターフェース左は電動車いすの制御状態を表示したもの。リスクの種類と存在する方向をピクトグラムで表示する。右は搭乗者を真下に見下ろす視点の全方向球面画像。タッチパネルで球を自由に回転させることができる。: 減速エリア: 停止エリアジョイスティックを倒す方向80°F0F+1RF+240°20°0°
元のページ