Vol.2 No.2 2009
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研究論文:安心・安全な次世代モビリティーを目指して(佐藤ほか)−116−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)搭載した状態で3年以上使用したものであっても、これまで再調整を必要としていない。(2)については、処理コストが極めて大きいため、ハードウエア化する戦略も考えられたが、近年のPCの急速な高速化の流れを考慮し、敢えてソフトウエアで実装することを選択した。実際プロジェクト開始から3年程度で、純粋なPCの性能向上のみで約5倍程度ステレオ画像処理の計算速度が向上した。車載可能な小型PCに実装するためにはさらにソフトウエアの高速化も必要となったため、並列計算化、重複計算の徹底的な排除などを行い、さらに約2倍の高速化を実現した。なお、ステレオ画像処理は、ミラーを用いるなどの工夫を行わない場合、最小2台のカメラ(2眼ステレオ)で実現できるが、それ以上のカメラを使用することで複数の結果を測定結果の信頼性評価に用いることができるようになり、精度の向上が期待できる。全方向ステレオカメラでは、精度とカメラヘッドサイズのバランスを考慮し、3眼ステレオを採用した。3.3 画像統合図4に画像統合の例を示す。全方向ステレオカメラは複数のカメラによって構成されており、個々のカメラの画像をソフトウエアによって統合することで、全方向画像を得る。今回のインテリジェント電動車いすでは、撮影した全方向画像を携帯電話回線などにより遠隔地に動画として送信し、遠隔サポートに役立てることも将来的な機能の1つとして検討している。このため、品質良く画像を統合する必要があるが、一方で同時に周囲環境の危険検知を高い頻度で行わなければならないため、計算コストは可能な限り小さくする必要があった。一般的にカメラのレンズは、像の周辺部ほど歪みや減光が大きくなる(図5)。これらは通常のデジタルカメラのように1枚の画像を単独で鑑賞する目的であれば大きな問題とはならないが、複数の画像を統合する場合には、境界部にズレや明るさの差を生じてしまう。この問題を解決するために、(1)レンズの樽型歪みの補正、(2)レンズの周辺減光の補正、(3)個々のカメラ座標系から統一座標系への幾何変換、(4)カメラ間のカラーばらつき補正、(5)画像間の境界を滑らかに接続するためのブレンディング処理を行う必要がある。紙面の都合で具体的な計算式については参考文献[11]に譲るが、三角関数等を多く含む非線形変換となるため、そのまま実装すると1枚の画像合成に10数秒(3.2 GHzのCPUを用いた場合)を要した。そこで、上記の計算に必要なパラメーターが、カメラヘッドやカメラ単体の特性に依存する定数であり、かつ予め全て測定可能であることに着目し、必要なパラメーターを予め全て決定したうえで計算結果をルックアップテーブル化した。これにより、歪みや色・明るさのムラを含む、補正の一切かかっていない生のカラー画像群12枚から、良好に補正された1枚の全方向画像をテーブル引きのみで得ることができる。このとき、512×256画素の全方向画像を合成するために必要な時間は、わずか10 ms以下である。3.4 カメラヘッドの姿勢推定電動車いす周囲の環境情報を正確に取得するためには、全方向ステレオカメラのカメラヘッドが電動車いすに対してどのような姿勢で取り付けられているのかを正確に知る必要がある。当初の設計では、カメラヘッドの取り付けが完了した時点で電動車いすを静止させ、カメラヘッドの支柱に固定した加速度センサーによって重力の方向を求めることでカメラヘッドの姿勢を得ていた。しかし、(1)走行中の走路の凹凸や段差などによるカメラヘッドの動揺が予想以上に激しかったことから、リアルタイムに姿勢を推定し補正することが必要となった、(2)電動車いすへの乗降にリフ図4 高品質かつ高速な画像統合レンズ歪みや周辺減光を含む12 枚の生画像から全方向画像を高品質かつ高速に生成する。全方向画像を平面上に表現することは困難な課題であるが、ここでは世界地図と同様のメルカトル図法で示す。図5 レンズ歪み補正人物が手に持っているのは直線定規である。左の補正前の画像では弓形に歪んでいることがわかる。右は補正処理を行ったものである。天井のライン等も歪みが補正されていることがわかる。画像統合処理(1)樽型歪み補正(2)周辺減光補正(3)幾何変換(4)カラー補正(5)ブレンディング統合された全方向画像12方向12枚の生画像ルックアップテーブル等の活用→10 ms以下での統合を実現
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