Vol.2 No.2 2009
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研究論文:安心・安全な次世代モビリティーを目指して(佐藤ほか)−115−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)発した、多数のカメラをボール状に集合させることにより、全方向のカラー画像と三次元情報を同時かつリアルタイムで取得する能力を実現した世界初の斬新なカメラシステムである。広範囲の画像を取得するために、広角レンズや放物面ミラーなどを用いるカメラシステム[8]-[10]が従来から提案されているが、単一のレンズと撮像素子によって広範囲を撮像するため、特にレンズの光学的な解像度が問題となり、得られる画像の解像度が十分でないという問題があった。これに対し、全方向ステレオカメラでは複数のカメラで分担して全方向を撮像するため、コストの低い一般的なレンズを用いたとしても全体としての解像度を高く保つことができる。また、カメラを複数持つため、カメラ間の視差を利用することで、三次元情報を容易に得ることができる。図3左に全方向ステレオカメラの外観を示す。また、表1に主な仕様を示す。カメラが集合した部分をカメラヘッドと呼び、その基本形状は正十二面体である。三次元情報を計測するために正十二面体の各面にそれぞれカメラを3台ずつ配置しているが、カメラ間には視差を得るために適切な間隔(ステレオベースラインと呼ぶ。SOSでは50 mm)が必要であり、カメラヘッドのサイズが大きくなる問題がある。この問題を解決するために、図3右に示すように3台のカメラをT字型のアームにマウントし(このセットをステレオカメラユニットと呼ぶ)、正十二面体の各面が互いに交差し、かつ互いのカメラが互いの視野を遮らないよう三次元的に最適配置することで、50 mmのステレオベースラインを保ちつつ、カメラヘッドをこぶし大の直径116 mmにまで小型化している。カメラの総数は、3カメラ×12面= 36カメラである。全てのカメラは同期しており、全く同一のタイミングで撮像する。カメラヘッド部で取得した画像情報は1.25 Gbps×2本の光ファイバーでパソコン(PC)に転送する。PC上には36枚の画像が直列に並んだ形でメインメモリーにDMA(Direct Memory Access)転送され、ユーザーにはその先頭アドレスのポインタが通知される。このポインタを用いることで、転送された画像群に対して自由にアクセスすることができる。なお、電動車いすに実際に搭載する予備実験を行った結果、走行中にカメラヘッド部に伝わる振動が想定していたよりも大きいことがわかり、カメラヘッド部の組み付け構造の強化と、撮像素子の変更を行った。初期型では通常のローリングシャッター方式(撮像管のように操作ラインごとにシャッターを切る方式。構造が簡単であるが、画像の上下で時間差が生じ、動きがある場合に微小な歪みを生じる)のCMOS撮像素子を採用していたが、振動のような激しい動きによって画像に微小な歪みを生じ、三次元計測精度に影響を及ぼすため、近年になって十分な性能を持つものが入手可能になったグローバルシャッター方式(画像全体で同時にシャッターを切る方式)のCMOS撮像素子を新たに採用した。3.2 ステレオ画像処理複数のカメラで撮影された画像の視差から、三角測量の原理で距離を求めることができる。人間が両目の視差を使って距離感を把握することに相当する。原理的には単純であるが、実装上難しい問題が主に2つある。(1)ステレオカメラの較正:距離を正確に測定するためには、焦点距離・レンズ中心・歪みなどのカメラパラメーターの実測値や、複数配置されたカメラの位置関係の実測値を正確に知る必要がある。(2)対応点探索:複数のカメラによって撮影された画像間で類似性の高い点(すなわち、現実世界において同一であると推定される点)を対応付け、対応点間の距離を視差とする。カメラの近くに位置しているものは視差が大きくなり、遠方のものは視差が小さくなる。画像中の全画素に対して対応付けを行う必要があるため、処理コストが極めて大きい。全方向ステレオカメラでは、(1)については製造時に一般的な較正手法によって全てのパラメーターを正確に求めている。また、製造以降、再調整は一切必要のないよう、カメラヘッド部を強固な構造としている。実際電動車いすに表1 全方向ステレオシステムの主な仕様図3 全方向ステレオシステム左がカメラヘッド部(直径116 mm)。右はステレオカメラユニット。 3つのカメラが同一平面上で直交するように配置されている。約9 W(12 V、750 mA)消費電力約480 g(カメラヘッドおよび支柱)重量116 mm(外接円の直径)カメラヘッド直径15 fps(カラー画像のみの場合は30 fps)フレームレート50.0 mmステレオ基線長101°(H)×76°(V)各カメラの画角1.9 mm各カメラの焦点距離640 (H)×480 (V) pixels素子の解像度1/4’CMOS(グローバルシャッター方式)撮像素子正十二面体ベース形状50.0 mm50.0 mm
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