Vol.2 No.2 2009
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研究論文:ものづくり産業を支える高精度三次元形状測定(大澤ほか)−110−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)6 三次元形状測定の今後6.1 デジタルものづくりに向けた計量標準と標準化[21]図1のように設計、製造、評価をすべてデジタルデータにより行うデジタルエンジニアリングにおいては、設計データであるCADデータと計測した結果とを比較しなければならない。CADデータは面情報を有しており、従来からのプローブ接触式の三次元測定機の離散的な測定データでは情報量が足りない。そのため高密度な多点の測定データを一度に取得できる非接触式三次元測定機が近年多く利用されるようになってきた。これら非接触式の三次元測定機に関しては生産者がそれぞれ独自の基準で精度評価を行い、精度保証をしているのが現状であり、共通的な評価法に基づく精度保証の体系は存在していなかった。そのため、三次元測定機の使用者が製品を購入する際の統一的な指標が無く、購入したい装置の測定精度が本当にカタログ値のとおりであるのかを判断できない状況にあった。そこで産総研では、2005年度に非接触式の三次元測定機の精度評価法に関する規格作成を目標としたコンソーシアムを設立した。コンソーシアムでは、非接触式の三次元測定機の評価に使用する標準器の開発(計量標準)及びそれらの標準器を使用した評価方法を考案した。非接触式の三次元測定機には様々な方式が存在するため、これら多種類の測定機の測定結果を同等に評価できるような標準器を製作することが重要である。光学式の測定機においては、標準器の測定部位に光沢があると測定結果に誤差が生じやすい。そのため標準器表面は、光学的に拡散面を持つことが重要となる。理想的な拡散面を選定するため、コンソーシアム会員の協力により、加工法・加工条件・表面コーティングを少しずつ変えた多くの球を製作した。図16はその一例である。100種類を超える条件の異なる加工を行い、製作した球をそれぞれ数種類の非接触式三次元測定機により測定し、すべての測定機で測定が比較的安定に行えた球を選定した。次に、選定された球を使用し、測定機の精度評価のための標準器となるボールバーを製作した(図17参照)。このボールバーはカーボンのフレームを使用し、周囲温度の変動に影響されにくいものとなっている。非接触の三次元測定機はポータブルな製品が多く、実際に使用される環境は20 ℃に温度を制御された恒温室に据え置きされて使用されることは少ない。そのため、温度変動に対して安定な標準器が必要とされる。以上のようにコンソーシアムにおいて、測定機評価に使用できる国家標準にトレーサブルな標準器を製作し、これを用いた比較測定を重ねた上で、これらの標準器を使用した非接触三次元測定機の評価法をJIS化した。現在、作成したJIS原案は日本工業標準調査会でJIS B 7441として審議されている。また、同時にISOの委員会にも本成果を提案中である。非接触三次元測定機は、アプリケーションとして人体計測にも利用される。人体計測における非接触三次元測定機の評価法に関して産総研デジタルヒューマン研究センターが主体となり我々が協力し、標準化を進めている。また以前は鋳造巣等の欠陥検査に使用されていたX線CT装置が、近年内部構造を測定できる三次元測定機として産業界で多く利用されるようになってきた。そのためX線CT装置を評価するための共通的なファントム(標準器)開発、及びそのファントムを使用した評価方法の標準化に関して、製造者及び使用者から要望が出ており、産総研ではその準備を進めつつある。6.2 地域の公設研究所との協力三次元測定機は高価な装置であるため、中小企業が導入するには経済的負担が大きい。そのためほぼすべての地域の公設研究所に三次元測定機が導入され、地域の企業からの依頼測定や装置開放のサービスを行っている。産総研では、産業技術連携推進会議の技術部会の1つである知的基盤部会の形状計測研究会において三次元測定技術の向上を目指した活動を行ってきている。ボールプレートの比較測定、ISOで審議されている不確かさ算出方法に関する実証実験、ビデオプローブ式の三次元測定機の評価実験等を行ってきている。また、2008年度から関東広域圏の公設研究所とともに地域イノベーション創出共同体形成事業として、三次元測定機の測定の信頼性を確保するため図16 異なる条件にて製作した球(1番左:分散共析めっき(B−MOS)、サンドブラスト(左2番目:Crメッキ、中央:TiNコーティング)、右2つ:化学エッチング (FeCl2)による)図17 非接触三次元測定機評価用ボールバー
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