Vol.2 No.2 2009
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研究論文:ものづくり産業を支える高精度三次元形状測定(大澤ほか)−109−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)校正する方法の1つとして、レーザトラッキング式レーザ干渉計(以下、レーザトラッカと呼ぶ)を使用した校正方法を提案してきた。レーザトラッカによる三次元測定機の校正システムは、イギリスの国立物理学研究所(NPL)、ドイツ国立物理工学研究所(PTB)、産総研で研究されてきた。いずれの装置も距離測定のみから三辺測量法の原理により座標値を算出するものである。NPL[13]及びPTB[14]は、1台のレーザトラッカを複数箇所に順次移動させて標的の位置を繰り返し測定する方法を取るが、産総研は4台のレーザトラッカを同時に設置して標的の位置を一度に測定する方法を取っている[15]。産総研方式では、一度にすべての座標値を算出できることからNPL、PTBと比べ測定時間が短いというメリットをもつ。そのため、周囲温度の変動による測定物の座標の変化など外部環境の影響を極力抑えることが可能である。図14は産総研で開発したレーザトラッカの外観である。本システムの特徴は、レーザ光を走査するミラーに半球を用い、トラッキングシステムの機械的な誤差を低減している点にある。通常、水平、垂直方向にレーザ光を走査する2軸を正確に合わせる必要があり、この作業は高度な技能を要する。我々の機構は、120°間隔に円上に3つの球を配置して、その3球上に半球ミラーを固定することで、安価な機械要素で、高精度なレーザ光の走査機構を実現した[16]。このレーザトラッカを高精度三次元測定機と比較した結果、システム単体の機械的な精度は0.3 µm以下であることが確認された[17]。また、三次元測定機の幾何学誤差をボールプレート及びレーザトラッカを使用して算出し、比較した結果、300 mm立方の測定空間内でほぼ2 µm以内で一致した[18]。ユーザがレーザトラッカを使用するにあたり、ハンドリングのしやすさは重要である。そこで、産総研知能システム研究部門で開発された球面モータを採用することでレーザトラッカの小型化・軽量化を実現した[19]。これは、他分野との融合によるよい研究成果となった。この技術開発により、大型三次元測定機の校正、産業用ロボットの手先座標位置の校正が高精度に行えるようになった。現在、ISOの会議においてレーザトラッカの評価方法に関する標準化の議論が開始されており、本技術開発で培った知識と経験を生かし、その標準化に向けて貢献をしていく予定である。5.2 三次元測定機による測定の高精度化高精度なものづくりを実施している金型産業等では、測定機が固有にもつ精度よりも高い精度で評価することを必要とする場合がある。通常このような評価は不可能であるが、特別な配置と手順を取ることにより、測定機のもつ誤差を互いに打ち消し合って、より高精度な測定を行うことが可能である。ボールプレートの校正に使用する反転法もこの一例である。このような高精度測定技術の開発を産総研では行ってきており、ここでは、一例として、円筒を測定する場合の成果について記述する。図15のように、例えば等間隔8点の測定を行って円筒の真円度を測定・評価する場合、1回の測定が終了した後測定物を45度回転させ、2回目の測定を行う。同様に45度ずつ回転させ、計8つの姿勢で測定を行い、得られた8つの測定結果を平均すると、三次元測定機の幾何学誤差、2本の接触子(スタイラス)を用いたオフセット誤差、プローブの方向特性等の影響を打ち消すことができる。この方法はマルチ測定法と呼び、回転対称な形状の精密測定に利用できる[20]。産総研では標準器の校正にあたり、このような方法を適用できるように実験計画を立て、最高精度での校正を行っている。この測定方法は、産業現場においても適用可能であり、今後、地域の公設研究所等を通して広く周知していく予定である。接触子2接触子1接触子2接触子1接触子2接触子1による測定点による測定点姿勢2姿勢145°ZYXZYX姿勢 4,5,6,7,8123456781234567814分割フォトダイオードステッピングモータレーザ測長器半球ミラー図14 レーザトラッキング干渉測長器図15 円筒のマルチ測定法
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