Vol.2 No.2 2009
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研究論文:ものづくり産業を支える高精度三次元形状測定(大澤ほか)−108−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)基本部分が開発されたものである。図12にバーチャル三次元測定機の概要を示す。バーチャル三次元測定機は、幾何学誤差をはじめとする重要な不確かさ要因を挙げ、これら誤差を含む三次元測定機のモデルを計算機上に作成したものである。実際の測定から得られる測定位置情報等からコンピュータ上で仮想モデルによる測定を200回程度行うことにより、その仮想的な測定から得られる測定値の標準偏差を計算し、不確かさを算出する。本研究において産総研は、通常使われる測定物を使用した比較測定を行い、バーチャル三次元測定機の実用面の評価及び普及に貢献した。このバーチャル三次元測定機技術の普及は、三次元測定のトレーサビリティ体系構築の手助けとなった。このような、シミュレーションによる不確かさ算出法は、ISO/TS 15530−4として標準化された。4.3 三次元測定機の遠隔校正前節で述べた方法で不確かさを算出するためには、標準器等を使用し、測定空間全体にわたって幾何学誤差のデータを取得することが必要である。三次元測定機の測定空間内の幾何学誤差のデータを取得するには極めて専門的な技術が必要なため、この作業を専門とする校正事業者が行うことが望ましい。校正事業者の専門家が産業現場に出向いて行う場合、時間的・金銭的なコストが多くかかることが予想される。そこで、産総研では、インターネットを利用し、容易にこの作業を行うためのシステム技術を開発してきた[12]。図13にインターネットを利用した三次元測定機の遠隔校正の概要を示す。校正事業者はまず標準器を三次元測定機のユーザに送る。輸送中の温度、湿度、振動等の変動は、同梱した記録機能を持つセンサによって監視される。校正事業者は、このセンサの記録情報を利用して、標準器が変化していないかどうかを判断する。次に二次元の標準器を用いてユーザの三次元測定機の校正を行う。標準器のセッティングは、ユーザ自身により行われるが、セッティングの様子はネットワークカメラを用いて校正事業者の専門家が監視する。ユーザの三次元測定機は校正事業者がインターネットを介して制御する。校正中の周囲温度は校正事業者から標準器と同時に輸送された温度計を用いて測定される。温度測定データもインターネットを使用して送られ、校正事業者に保存される。プロービングシステムのパラメータ設定や座標系の作成等は、ユーザと電話もしくはインターネットカメラ電話等により直接コンタクトを取りながら行う。測定を終了した後、校正事業者はこれらの測定データを用いてユーザの三次元測定機の幾何学誤差を算出する。算出された幾何学誤差はユーザに送信され、誤差補正用のデータ及び不確かさ算出のためのデータとして利用される。このようにネットワークを利用した校正は校正事業者が直接校正の現場に行かなくてもよいことから、我々はこれを遠隔校正と名付けている。この技術開発は、ユーザ自ら標準器や幾何学誤差算出の知識を持たなくとも、三次元測定のトレーサビリティを容易に、かつ低コストで確保することを可能にした。また、産総研では2005年よりこの遠隔校正手法を利用した三次元測定機校正サービスを依頼試験として行っている。このサービスは、二次元の標準器を使用するのではなく、校正事業者登録制度(JCSS)における三次元測定機の校正と同様に、ブロックゲージやステップゲージを使用して、ISO規格に基づいた評価法により行っている。5 三次元形状測定の高度化5.1 大型三次元測定機の校正自動車のボディの形状測定や航空機の機体の形状測定には、測定空間が5 m×3 m×2 mなど大型の三次元測定機が利用される。このような大型の三次元測定機の校正には、大きな標準器を利用することも不可能ではないが、重量・時間的コストなどの点から問題がある。そこで、産総研では、標準器を使用しないで大型の三次元測定機を 三次元測定機コントローラ1. ゲージの輸送4. 画像 ・ 音声3. 測定結果送付2. 三次元測定機の制御5. 評価 ・ 結果の送付カメラインターネット 測定結果 : 実測値不確かさ : シミュレータが計算測定結果とシミュレーションのための情報測定物の形状誤差測定結果+不確かさ三次元測定機の仮想モデルによるシミュレーションなど長期安定性不確かさ要因実際の測定測定手順温度等環境条件幾何学誤差プロービングシミュレーションのためのパラメータ設定図12 バーチャル三次元測定機の概要図13 三次元測定機の遠隔校正技術
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