Vol.2 No.2 2009
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研究論文:ものづくり産業を支える高精度三次元形状測定(大澤ほか)−104−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)活動及び今後の展開に関して記述する。3 三次元測定機を評価するための標準器3.1 三次元測定における誤差三次元測定機は非常に便利で有能な測定機であるが、信頼性に関して次のような課題がある。1)測定物の位置を検出するプローブが、スケールの基線長上に合致しておらず(すなわちプローブの位置がスケール自体から離れており)、測定誤差を生じやすい(専門的には「アッベの原理を満たしていない」という)。2)上記の測定誤差のほかにも、誤差の要因が多く存在し、測定データの不確かさの評価が難しい。1)の課題は、高精度な測定を行うにあたり、大きな問題であるが、測定機自体の剛性を高めることにより繰り返し性を良くすることで、ソフトウェアによる補正[1]が行えるようにし、その影響を小さくしている。現在の三次元測定機のほとんどがソフトウェア補正を行う機能を有しており、この補正を適確に行うために正確な補正データをあらかじめ取得しておく必要がある。この補正データには、具体的に2種類のものがある。1つはプロービングシステム部分の補正データである。校正球と呼ばれる、あらかじめ直径の値が高精度に測定された、形状誤差の非常に小さな(真円からのずれが50 nm以下の)球の測定を行うことにより、使用する接触子(スタイラス)先端球の球径、たわみ、及びそのプロービングシステムのもつ特性(具体的には球の一断面を三次元測定機で測定した場合に、測定された形状が円形ではなくプロービングシステムの特性により三角形や四角形のように測定される)を求めることができる。もう1つは、スケール誤差(スケールの取付等による)、直角誤差(各軸間の直交性)、真直誤差(各軸ガイドのゆがみ等)、回転誤差(姿勢変化に伴う誤差)といった測定機の運動誤差についてのデータである。これらスケール誤差、直角誤差、真直誤差、回転誤差は、幾何学誤差[2]と呼ばれ、各種の標準器を用いて算出することができる。これら2種類の補正データを正確に取得するために、次節で述べる三次元測定機用の標準器が必要になる。2)の課題は、三次元測定機が多くの誤差要因をもつことや離散的な測定点を集合させ要素として計算し、測定データを算出する複雑な処理を行うため、不確かさ評価が難しい点にある。この課題に対してソフトウェアシミュレーションを利用した新しい不確かさ算出法に着目し、この問題解決に向けた研究を行った。本内容に関しては4.2節にて詳しく述べる。3.2 三次元測定機のための標準器の開発3.2.1 ステップゲージ三次元測定機の測定精度を確認したり、ソフトウェア補正のためのデータを取得するためには、上位の国家標準(よう素安定化ヘリウムネオンレーザ)にトレーサブルな各種の標準器、例えばブロックゲージ、ボールプレート等が利用される。これらの標準器の校正が正確に行われなければ、トレーサビリティ体系の下位に位置している三次元測定機に対して、高精度な評価はできない。そのためこの標準器の校正技術開発は重要であり、各国の標準研究所も校正技術の開発や校正サービスを実施している。産総研では、10年ほど前から本格的にこれらの標準器の校正システムの開発を行ってきた。三次元測定機の精度評価において、日本では一般に端度器(ブロックゲージ、ステップゲージ)が多用される。三次元測定機の評価には、短いブロックゲージを数多く並べた構造を持つステップゲージ(図5参照)が多種類の長さの基準を実現できることから、ブロックゲージよりも多く使用される。主要な国立標準研究所ではレーザ干渉計と移動ステージを組み合わせた専用の装置を用いてステップゲージを校正している[3]。産総 SI基本単位「m」登録制度構築校正事業者工業標準化③高精度三次元座標測定技術開発 -大型三次元測定機の校正技術開発 -三次元測定機による高精度測定技術開発②三次元測定機トレーサビリティ体系構築の技術開発 -三次元測定機校正のJCSS化 -不確かさ評価法の開発 -遠隔校正技術開発①三次元測定機校正・評価用ゲージ校正技術開発 -ゲージ校正システム開発 -各国標準研との国際比較 -ゲージ校正のJCSS化製造製品三次元測定機ボールプレート等ブロックゲージ、ステップゲージ実用安定化He-Neレーザよう素安定化He-Neレーザ図4 トレーサビリティ体系と当該本格研究との関係図5 ステップゲージ外観(測定面が櫛状に並んでいる)

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