Vol.2 No.2 2009
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研究論文:ものづくり産業を支える高精度三次元形状測定(大澤ほか)−102−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)される。三次元測定機は万能測定機とも呼ばれるように様々な三次元形状(位置、寸法や幾何公差(真直度、真円度、円筒度、直角度等))を測定することが可能である。ここで三次元測定機の代表的なものについて、その概略の機能を見ておくことにする。三次元測定機は、図2に示すように、測定物の表面に接触することによりその座標値を検出するためのプロービングシステム、直交するX・Y・Zの三軸に沿ってプロービングシステムを直線移動させるためのガイド、移動量を検出するためのものさしであるスケール、座標変換や測定機を制御するためのコンピュータ等から構成されている。三次元測定機は、プロービングシステムに取り付けられた接触子(スタイラス)が接触できる範囲が測定空間であり、二点間の距離だけでなく、測定物がもつ幾何形状の特徴量(例えば、円ならば直径、真円度、中心座標)を測定点群から最小二乗あてはめにより算出することも可能である。かつて三次元測定機は高価で操作に高度な技能が必要であったため、大企業でも試作部門や品質保証部門にしか導入されていなかったが、ものづくりのデジタル化、製品への高い品質保証要求、アジア諸国の工業製品との差別化などが原因となり、現在は、製造ラインや町工場等にも次々と導入され、製品の品質保証に利用されるようになってきた。三次元測定機は測定物を設置し、測定プログラムを一度構築すると、あとはコンピュータ制御で装置を駆動するだけで測定が終了する。このため、企業によっては、ルーチン的な作業を行う測定者だけを常駐させて、プログラム作成等の高度な作業は測定機メーカに依存し、測定コストを削減しているところが増えてきている。しかし、三次元測定に関する専門知識を持たない測定者による測定と専門知識を有する測定者による測定とでは、明らかに差が生じることが分かっている。これは、測定物の保持や配置の方法、周囲温度など、測定に影響を及ぼす要因に関する知識と対処の能力が異なるためである。このような状況の中で三次元測定の信頼性を高めるには、多量の知識と訓練を要求することなしに、測定者の技術能力を向上させられるような仕組み作りが最も重要である。過去の日本においては、系列化された企業グループ内で製造プロセスが完結していたため、各企業グループ内で製品の信頼性確保のための体制が比較的よく構築されていた。しかし、近年より安く良質の部品を国内外から調達したり、さらに人件費の安い海外での生産が増加したりするのに伴って、部品調達のグローバル化が進み、グループ内における信頼性確保の体制が崩れてきている。例えば、A社から納品された部品の寸法とB社から納品された部品の寸法が微妙に合わないため、組み立ての際に不具合が生じるなどの問題が起こる。このため、系列企業グループ内で構築されていた信頼性確保の体制に代わる、何らかの公的な支援体制が必要となった。このような新しい状況の下で本研究では、ものづくり産業を支える最も基盤的な技術の1つである三次元形状測定の信頼性を高めるために必要な技術開発を行うこと、そしてそれを産業現場に波及させるための公的な仕組み作りを目標とした。2 シナリオ2.1 信頼性向上のシナリオ産総研による研究開発成果をものづくり産業における広い裾野の隅々まで行き渡らせるためには、研究成果を現場まで届けるための体制作りが重要である。高精度な国家計量標準を立ち上げることをはじめとして、それを産業現場に広く展開するためのシナリオをあらかじめ作成した。図3に三次元形状測定の信頼性向上のために考案したシナリオを示す。産総研では国家標準の整備として、標準器の開発、標準器等の校正手法の開発、さらに高精度な次世代標準の開発を行い、これらを利用してものづくり現場の三次元測定機を校正することにより、三次元測定の信頼性を向上させる。確立された国家標準は、他国の国立標準研究所との間で国際比較と呼ばれる測定値の比較を行うことにより同等性を確認し、その標準に基づく測定値の整合性が世界的に認められる。確立された標準を日本国内に普及させるために校正事業者登録制度を構築し、校正事業者による校正サービスを通してものづくり現場へと標準を展開する。地域の中小企業等の競争力向上のため各県の公設研究所等へ高精度測定のための教育や技術支援を行う。また、三次元測定機の評価法や新しい三次元形状測定法の標準化、産業現場の三次元測定機をより簡単な手順で校正するための遠隔校正技術開発等を行うことで、ものづくプロービングシステム接触子(スタイラス)接触子の先には、通常ルビー球等硬い材料で製作された高精度な球が使用される。オペレータコントローラZYX一般的に、タッチトリガプローブと呼ばれる機械接点式のものが使用されることが多い。測定物が触れると機械接点が外れ、信号が発生する。図2 三次元測定機の概略

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