Vol.2 No.2 2009
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研究論文:遺跡が語る巨大地震の過去と未来(寒川)−100−Synthesiology Vol.2 No.2(2009)す。その他、少し小高い位置に造られることの多い古墳などでは地滑りや、地震動に伴う地割れが見つかります。679年筑紫地震のように、地震を引き起こした活断層の真上で遺跡調査が行われて、断層活動の証拠が見つかることもあります。議論4 地震の規模の推定について質問・コメント(小野 晃)図5は南海トラフの過去の巨大地震を示していますが、地震考古学の手法で推定できる地震の規模(マグニチュード)はどの程度のものでしょうか。回答(寒川 旭)どこかの遺跡で地震痕跡が見つかった場合、その場所の震度については考察できます。同じ地震の痕跡が広い範囲の複数の地点で見つかると、激しい震動を被った地域の広がりがわかり、地震の規模も推測できるようになります。南海トラフの巨大地震の場合、文字で書かれた被害の記録が豊富なので、それを参考にして、規模などを考えることになります。最近では、津波の痕跡の研究が進んでおり、津波の痕跡からも巨大地震発生の履歴がわかるようになっています。強震動と津波の両面から把握できることが望ましいと思います。議論5 外国の地震への適用について質問・コメント(小野 晃)外国で起きた地震に対しても地震考古学を適用することは可能と思われますが、日本と比べて異なる点はありますか。回答(寒川 旭)日本は世界でも特に発掘件数が多く、考古学の編年が進歩しています。人口密度が高いですし、家屋などが木で建築され、壊れやすい土器や陶磁器を使っていることが、生活更新のサイクルを短くして、細かな編年を可能にしています。また、過去千数百年におよぶ膨大な文字記録があり、これとの対比が考古学的な編年の精度を高めています。もちろん、世界有数の地震国ですし、水の豊富な平野に居住しているので、液状化現象の痕跡も沢山見つかります。ですから、考古学と連携して地震の歴史を調べるには最も適した国土と言えます。日本と同じようにはいかないかもしれませんが、遺跡を使って地震を調べるという視点は、どの国にでも当てはまりますので、その国の状況に合った手法を考えながら、適用することは可能だと思います。議論6 文系と理系との分野融合について質問・コメント(小野 晃)地震考古学は、文系と理系という相当の距離がある2つの学問を取り扱っている融合領域と考えられます。古文書の解読などは理系研究者に対して困難な要因にはなりませんでしたか。その他文理融合における要点があればお聞かせください。回答(寒川 旭) 古文書・古記録を読むことは理系研究者にとってかなり困難な事柄と思います。ただ、日本では明治以降に、地震に関する古記録の収集が進んで活字化されていますので、ある程度まではわかります。私自身は、考古学はもちろんですが、国文学や日本史が好きなので、古文書・古記録を読むことは、結構、楽しいものです。ただ、専門的な訓練を受けていないので、そのハンディはありますが、読み慣れるに従って理解が進んできたように思います。いずれにしろ、文理融合に関しては、相手方の分野を好きになるのが必須の条件と思います。
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