Vol.2 No.1 2009
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−70−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)座談会:システムデザイン工学と構成学たことは驚き」、また、一般読者からは「査読者と著者との議論が新鮮で面白い」、産業界からは「シナリオをきちんと作って研究するという姿勢は産業界にも参考になる」というポジティブな評価をいただいています。 基礎研究の成果を社会で使うための方法論を探る赤松 昔、応用研究と呼んでいたものに産総研の吉川理事長が「第2種基礎研究」という名前をつけた根底には、「応用研究は、既にある結果を使ってやるだけだと見られがちである。しかし、そこにも“学”はあるはず。だから、基礎研究なのである」ということがありました。このジャーナルの狙いは、基礎研究の成果を社会に使えるようにする研究のアプローチの共通的な方法論が、論文を集めることによって見えてくるのではないだろうか、ということです。そして、要素技術的な研究の成果を社会に使ってもらうためにどのような方法論をとればいいかを読者である研究者が学び、次に何をやらなければいけないか、どういう観点でものを見なければいけないかということを獲得できる、そのための学術誌というふうに考えています。それから、査読者の氏名を公表しているもう1つの理由は、どういう観点で査読、評価しているのかをオープンにすることによって、その論文がどれだけのクオリティで書かれているかを見せていこうという狙いもあります。査読者が「意外に他の分野の研究がわかる」というのは理由があって、この研究の成果を社会で使っていくためには何をやらなければいけないか、社会のニーズはどういうところにあるのかというところから書くようにすると、門外漢であっても、この世界はここが大事ということがわかります。だからこそ、著者が気づかなかった観点の抜けや、論理の飛躍などがむしろ見える。そこがこのジャーナルの査読の面白いところですし、著者と査読者の協働作業でできた論文という面があるところも他の論文誌とは少し違うのかなと思っています。要素技術がなければシンセシスはできない菱田 共感する部分は非常にあります。プロセスをどうやって作っていくかという方法論を理解できない学術の縦割りの社会が残っているので、シンセシスカテゴリー論文を作れるくらいになってくれば、すごいものだと思います。ただ、続けていくことは大変な労力が要るなと想像します。難しいのは、要素技術とその積み重ねのメソドロジーをどのように評価するか、そこのオリジナリティをどのように評価するかということに尽きるのではないかと思います。要素技術とシンセシスは両輪です。私は「良い畑の良いニンジン、トマト、キュウリができないとおいしいミックスジュースは絶対できない」とよく言うのですが、それぞれの要素を持ってきたときの方法論のどこにオリジナリティがあるのか、ここのプロセスが一番難しい。しかし、要素技術を集めたシンセシスの塊みたいな開発プロセスの論文を書けるということはあるかもしれませんし、問題が起きたら、また要素技術に戻る、それは我々が考えているのと同じです。小野 慶應大学ではシステムデザイン工学科を創設しましたが、ご紹介いただけますか。慶応大学におけるシステムデザイン工学のチャレンジ谷下 システムデザイン工学科ができたのは1996年4月ですが、80年代に機械工学教育の将来検討を進める中で、工学はある時代の特定なニーズに応じてかなり進歩するけれども、時代のニーズが変わっても普遍的な工学原理を持てる人材を出すべきだという議論がありました。当時のシステムデザイン工学科は、機械、電気、それから計測の先生がいましたが、今は建築の先生も入っています。理念は「要素技術の工学から統合技術の工学への変革」ですが、“デザイン”という言葉は、狭い意味の“設計”ではなく、統合原理を実現するということです。小野さんが 「社会とのつながりがシンセシオロジーの大事な点」とおっしゃいましたが、我々も「自然や人間・社会とシームレスな連結」を重視しています。従来の工学が持っていた現象の本質を探るアナリシスの軸、法則や理論をもとにした設計・合成主体のシンセシスの軸、もう1つはシステムを取り巻く社会の軸という、この3次元の枠の中で、今言った理念が実現できるのではないかと考えています。今まで、エンジニアはどちらかというと与えられたスペックを満たすことを一生懸命やっていたのですけれども、自分でスペックを作れるような、提案型のエンジニアがこれから必要なのではないか、そういう観点を持てるエンジニアなら自立できるのではないかということがもう1つのポイントです。企業の社長さんは文系が多いとよく言われますが、技術系の多くの人が社会のリーダーになってほしい。そのためには統合的な視野を持つことが大切だと考えています。小野 晃 氏

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