Vol.2 No.1 2009
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研究論文:創薬の効率を飛躍的に高めた化合物スクリーニング計算(福西ほか)−64−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)子iとjを選び、iとjに「既に訪問した」という印をつける。原子が「等価」なら、「既に訪問した」と印を残す。i=jなら「等価」である。等価である場合、それ以上の検証を行わない。i、jの結合が1本で、i、jがともに既に訪問した原子に結合し、元素記号が同じなら「等価」である。iに結合する原子miとjに結合する原子mjの全てに対し、mi、mjに「既に訪問した」という印を仮に付して上記の判定を行う。mi, mjが同じでなければ、mi、 mjの 「訪問」の印を解除する。すべてのmi/mjが「等価」と判定されれば、iとjは「等価」だとする。原子i、 jから出発して等価性の判定が行われる原子を灰色の〇で示し、判定が終了する原子を●で示した(図4)。iとjを出発した探索がぶつかるところ(黒丸)まで調べれば良く、グラフ全体を検索しなくても良い。4.10 データベースへの格納とファイルのダウンロード化合物DBの構造はリレーショナルデータベースとなっており、スキーマには、化合物mol2ファイルの情報(原子名、3次元座標、原子電荷、化学結合次数など)に加え、分子量、MOPAC AM1モデルでのHOMO/LUMOエネルギー、GBSAモデルで計算した溶媒和自由エネルギー、1原子当たりの溶媒和自由エネルギーなどを記載した。1原子当たりの溶媒和自由エネルギーは化合物のケミカルスペース(化合物空間)での位置を示すのに有効な情報であり、DBとしては、その多様性(収集された化合物がどれだけ多様であるか)を示す指標として用いられる[14] 。化合物DBからは、化合物をmol2ファイル形式でダウンロードすることができる。4.11 蛋白質-化合物相互作用行列の計算化合物DBに収録した化合物ライブラリーに対し、標的蛋白質以外に多数の蛋白質を用意し、総当り式にドッキング計算を行い、蛋白質-化合物相互作用行列を作成してデータベース化した。このDBは以下に述べる我々の開発した薬物スクリーニング手法:multiple target screening (MTS)法[15]、docking score index(DSI)法[14]の基礎DBとなっており、我々のVSに欠かせない資源である (図5)。通常のVSで、標的蛋白質に結合する化合物をドッキングスコア用語3(スコア)の強い順に選択しても、そのヒット率は低い。標的蛋白質に対し強いスコアを示す化合物を選択すると、その化合物は、他の蛋白質に対しても強いスコアを示して標的蛋白質に対して選択的に強い結合性を示しているわけではないことがしばしば見られる。MTS法では、逆に、1つの化合物に着目し、それがどの蛋白質に結合するのかを調べ、標的蛋白質に最も強く結合する化合物をヒット化合物の候補とする。蛋白質-化合物相互作用行列を利用すると、スコアの精度を改善することもできる。類似性の高い蛋白質に対して同一化合物の結合自由エネルギーは、近い値をとると考えられる。詳細は文献に譲る[16]が、蛋白質の類似度に応じて、重みつきのスコアの平均を取ることで、スコアの誤差を低減することができ、具体的には、下記の式でスコアを補正した。 snewia= (1)ここでsnewai、sbi、 Rabは、それぞれ新しく定義された蛋白質aと化合物iのスコア、蛋白質bと化合物iのスコア、蛋白質aとbの相関係数である。また、既知の活性化合物が存在する場合、既知活性化合物が優先的に予測されるようにスコアを補正することもできる。下記の式のように、補正後のスコアをスコアの線形結合で記述し、モンテカルロ計算によってデータベースエンリッチメント用語4が最大化されるように係数Mabを決定した。 snewia=ΣsbiMab (2)COX-2、HIVプロテアーゼ1など12種類の標的蛋白質に対してMTS法を適用した結果、化合物ライブラリーから予測上位1 %の化合物を採択したとき、ランダムスクリーニングに比べて約40倍の発見率の向上を得ることが示された[16]。DSI法は、蛋白質−化合物相互作用行列を用いて、既知の活性化合物と類似の化合物を検索する方法である。異なる化合物であっても、同一の蛋白質に強く結合する化合物は類似の化合物とみなすことができる(図5)。DSI法では標的蛋白質の立体構造は必要でないことから、G-protein coupled receptor (GPCR)のように立体構造未知の標的蛋図4 等価原子の判定●印は、訪問した原子を表す。i と j は等価i と j は等価HH2HHCHCH2CCCCCH2H2CH2CH2HH2CHCH2CCCCCH2H2CH2CH2ijHHHCCHHHCCijHHHCCHHHCCijbΣRabbΣsbiRabb
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