Vol.2 No.1 2009
61/94
研究論文:蒸留プロセスのイノベーション(中岩ほか)−58−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)平田雄志:プロセス開発の戦略-性能改善からプロセス強化へ-, 化学工学, 69(3), 144-147 (2005).黒田千秋,松本秀行:グリーンプロセス工学(GPE)とプロセス強化(PI), 化学工学, 72(4), 180-183 (2008).A. Stankiewicz and J.A. Moulijn:Process intensification: Transforming chemical engineering, Chem. Eng. Prog., 96(1), 22-34 (2000).A. Stankiewicz:Serving the triple bottom line: Process intensification role in sustainable manufacturing, 化学工学, 69(3), 148-150 (2005).J.A. Moulijn, A. Stankiewicz, J. Grievink and A. Gorak:Process intensification and process systems engineering: A friendly symbiosis, Comput. Chem. Eng., 32(1-2), 3-11 (2008).五十嵐一男: 材料・製造技術の新たな取り組み, 産総研Today, 4(9), 4-5 (2004).頼実正弘: 蒸留工学ハンドブック, 朝倉書店 (1966).加藤邦興: 化学機械と装置の歴史, 産業技術センター (1978).C.J. King: Separation processes, 2nd ed., McGraw Hill, New York (1980).Z. Fonyó: Thermodynamic analysis of rectification Ⅰ, Reversible model of rectification, Intern. Chem. Eng., 14(1), 18-27 (1974).[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10]参考文献執筆者略歴中岩 勝(なかいわ まさる)1980年京都大学工学部化学工学科卒業。同年工業技術院化学技術研究所入所。2001年から産業技術総合研究所環境調和技術研究部門熱利用化学システムグループ長。現在は、環境化学技術研究部門長。この間、米国カンザス州立大学での在外研究を含め、化学プロセスの省エネルギー化や非線形化学システムの応用などの研究に従事。本論文では、「デチューニング」を含めたHIDiCに関する部分を担当。大森 隆夫(おおもり たかお)1984年京都大学大学院工学研究科化学工学専攻博士課程修了。日本学術振興会奨励研究員を経て、1985年工業技術院化学技術研究所入所。現在は、産業技術総合研究所環境化学技術研究部門主幹研究員(兼)化学システムグループ長。この間、米国ウェストバージニア大学での在外研究を含め、非線形現象、複雑系、プロセス強化等の研究に従事。本論文では、プロセス強化に関する部分と全体の構成を担当。査読者との議論 議論1 既存装置との比較について質問・コメント(水野 光一)HIDiCが省エネ性や操作性に優れていること、これまでのVRCやPetlyukより優位であることは理解できます。しかし、本文中で述べられるコストなどに限界があるともいえます。例えば、既存の蒸留プロセスに比べて装置が複雑なため製作コストが高価である可能性もありますが、どのようにお考えでしょうか? 同様に、蒸留性能については本プロセスを他のプロセスと比較するとどのような差異がでるのでしょうか?回答(中岩 勝)一般に蒸留塔は、分離すべき溶液の物性、どこまで製品純度を要求するか、処理量などにより装置の仕様が異なるため全てオーダーメードであり、建設費の比較はケースバイケースになります。パイロットプラント(丸善石油化学(株)千葉工場、商業規模(原料1万2千トン/年)で12成分のガソリン留分精製)の実績ですと、HIDiC:230,000 千円という金額になります。原油価格を1 バレル60 ドルで試算した省エネによる年間ランニングコスト削減金額は約20,000 千円です。同規模の通常塔の建設費は不明ですが、技術移転先である木村化工機(株)ではユーザーからの問い合わせに対して現時点では「従来型に比べてざっと2倍程度かかります」と回答しています。これをパイロットプラントに適用して、HIDiCと通常塔の価格差を年間ランニングコスト削減金額で除した単純投資回収年は5.75年になと比較して蒸留性能の低下を防ぎつつ、熱移動性能に不足があれば高さ方向に塔を伸ばすことで伝熱面積を増やして補う方向で検討し、単純な二重管構造を採用して実用化に結びつけた。結局、蒸留と伝熱という2つのプロセスの「統合化」によりPIを実現したHIDiCではあるが、あくまでも蒸留塔の省エネ化が主眼であり、蒸留性能は維持しつつ伝熱を加えることによる省エネ性能向上を追及した戦術が功を奏したと考えている。7 おわりに本稿では、理想状態からの「デチューニング」という概念で、既存プロセスの省エネルギー化技術開発のアプローチ法を示し、著者らが進めてきた内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)を含む蒸留プロセスに関する具体的な検討について記述した。ここで示したケースでは、a)ターゲットとなるプロセスの熱力学的(理論的)理想状態を明らかにする→b)理想状態から実現可能な条件に「デチューニング」する→c)「デチューニング」後の省エネ性・コスト・装置構造の実現性等を評価する→d)結果が満足できなければ改めてb)に戻り別の「デチューニング」の道筋を探索する、という手順となっている。b)→c)→d)はループを形成し、これがPI実現の1つの道筋ではないかと考えられる。実際、HIDiCプロセスはこの概念により実用化までに至ったと考えている。以上、省エネ蒸留プロセスであるHIDiCプロセスの実用化までの過程について、PIと「デチューニング」の観点からアプローチ方法や考え方をまとめてみたが、シンセシオロジー発展の一助となれば幸いである。[11][12][13][14][15][16][17]F.B. Petlyuk, V.M. Platonov and I.V. Girsanov: The design of optimal rectification cascades, Intern. Chem. Eng., 5(2), 309-317 (1965).化学工学会編:化学工学の進歩第37集,槙書店 (2003).中岩勝: 超燃焼システム技術と自己熱利用による蒸留プロセスの省エネ技術, 日本燃焼学会誌, 50, 235-241 (2008).M. Nakaiwa, K. Huang, A. Endo, T. Ohmori, T. Akiya and T. Takamatsu: Internally heat-integrated distillation columns: A review, Chem. Eng. Res. Design, 81(1), 162-177 (2003).R.S.H. Mah, J.J. Nicholas, Jr. and R.B. Wodnik: Distillation with secondary reflux and vaporization: A comparative evaluation, AIChE J, 23(5), 651-658 (1977).中岩勝: 内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)技術開発の今後の展開, 分離技術, 36(4), 202-204 (2006).D.J.Seader:Continuous distillation and method, U.S. Patent 4, 234, 391 (1980).
元のページ