Vol.2 No.1 2009
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研究論文:ユビキタスエネルギーデバイス開発のための材料基礎解析(香山ほか)−50−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)こで、総意を形成するにあたり一般的に組織の長にどのようなマネージメントを期待しますか。回答(香山 正憲) 我々のユニットでは、当初より、「開発」と「基礎解析」を有効に連携させ、飛躍的な研究の進展を図ること、そのための方法論を確立することを目標の1つに掲げています。これは、ユニット長の意向でもあり、ユニット設計に当たって多くのメンバーで議論し、挑戦的で意義のある課題と捕らえてきました。第3章のはじめに議論しているように、「開発」と「解析」の連携には、①両者の研究のペースや位相がしばしば合わない、②実際の複雑な材料の解析は必ずしも容易ではなく、粘り強い努力が必要となる、③両者の研究者の価値観、問題意識にずれがあるなど、阻害要因があります。そうした事情を組織の長が理解し、研究者の困難や悩みに耳を傾け、辛抱強く支援すること、連携を成功させることの意義を鼓舞すること、などが望ましいと考えます。議論2 新材料を開発するための理想的な組織・体制について質問・コメント(村山 宣光) 材料探索からモジュール化までを視野に入れたときの、理想的な組織・体制について、ご意見をいただけないでしょうか。論文では、評価・解析グループと材料開発グループが同じ場所で研究を進めることの有効性を指摘されていますが、一方で、インターネット等を活用した距離を感じさせない研究も可能になっています。例えば、著者が所属されている産総研内の組織・体制、さらには大学、産総研のような研究独法、企業の連携において、理想的な組織・体制についてご意見をお聞かせください。回答(香山 正憲) 一般的には、必ずしも同じ研究場所で共同研究をしなくても、様々な手段を通じて、有効な連携を実現させることは可能と考えます。また、研究課題の性質といいますか、長期的に掘り下げた研究の場合には、開発と基礎が別々の場所で研究を進め、適宜共同の討議を進める、という形でよいと考えます。実際、我々もその種の共同も進めています。ただ、より緊急の集中した問題解決の取り組みや、研究組織として、本格研究を有効に遂行するという見地からは、当ユニットのような開発と解析の両者が日常的に連携できる組織の利点は大きいと考えます。例えば、上記の連携の阻害要因は、同じユニットでの日常的な議論を通じて、より緩和しやすくなります。また、特に基礎解析側にいえることですが、従来の狭い枠に安住しないで、開発側の技術的、社会的な要請に応えて、新しい課題やより困難な課題に挑戦しようとする意欲は、同じ研究組織で目的を共有し、「本格研究の一翼を担う」という高い使命感があってこそ、生まれてくるものです。議論3 計測産業との連携について質問・コメント(村山 宣光) 評価・解析の研究は材料開発に大きく貢献するという点は、本論文でよく理解できました。さらに、評価・解析の研究は、新しい計測技術や計測装置の開発を促し、計測産業の発展に貢献すると思います。この点について、ご意見をお聞かせください。回答(香山 正憲) 計測技術や計測装置の開発は、材料開発の現場と結びつくことで、より促進されるといえます。今回紹介したリチウムイオン電池の正極材料の研究では、我々はリチウムイオン濃度の実空間観察技術を独自に開発しました。また、様々な触媒研究では、ガスを導入した触媒反応の「実環境下その場観察」技術開発の現場とも関わっています。もちろん、計測装置の開発自体を我々がメインで行うことはできませんが、他の研究グループや企業との共同の形で、計測装置開発への展開も考えています。 計測技術や装置を開発している企業も、実際に装置を使用する技術者や研究者が現場で扱っている物質・材料の複雑な現象を熟知しないと、優れた開発は行えません。特に原子・電子レベルの計測・評価など、高度化するほど、この傾向は強くなります。この点で、当産総研においても、材料開発やエネルギー環境技術開発の現場と、基礎解析や計測評価の研究グループとの間の研究交流や人材交流は、極めて有益と考えます。
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