Vol.2 No.1 2009
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研究論文:ユビキタスエネルギーデバイス開発のための材料基礎解析(香山ほか)−48−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)境哲男,小林哲彦(監修):ユビキタスエネルギーの最新技術,シーエムシー出版 (2006).小黒啓介: ユビキタスエネルギー技術の研究戦略, マテリアルインテグレーション, 21(2), 1 (2008).M. Kohyama, S. Tanaka, K. Okazaki-Maeda and T. Akita: Theoretical studies of the atomic and electronic structure of nano-hetero metal/inorganic material interfaces in collaboration with electron microscopy observations, Mater. Trans., 48, 675-683 (2007).香山正憲, 田中真悟, 前田一行, 秋田知樹, 田中孝治: 材料界面の原子配列と電子構造の第一原理計算:電顕観察との連携によるアプローチ, 顕微鏡, 41(3), 178-184 (2006).秋田知樹, 吉川純, 香山正憲: ユビキタスエネルギー材料の分析電子顕微鏡による構造解析, マテリアルインテグレーション, 21(2), 45-51 (2008).M. Tabuchi, Y. Nabeshima, M. Shikano, K. Ado, H. Kageyama and K. Tatsumi: Optimizing chemical composition and preparation conditions for Fe-substituted Li2MnO3 positive electrode material, J. Electrochem. Soc., 154, A638-648 (2007).C. Colliex: New trends in STEM-based nano-EELS analysis, J. Electron Microsc., 45, 44-50 (1996).J. Kikkawa, T. Akita, M. Tabuchi, M. Shikano, K. Tatsumi and M. Kohyama: Fe-rich and Mn-rich nanodomains in Li1.2Mn0.4Fe0.4O2 positive electrode materials for lithium-ion batteries, Appl. Phys. Lett., 91, 054103 (2007).J. Kikkawa, T. Akita, M. Tabuchi, M. Shikano, K. Tatsumi and M. Kohyama: Coexistence of layered and cubic rocksalt structures with a common oxygen sub-lattice in Li1.2Mn0.4Fe0.4O2 particles: A transmission electron microscopy study, J. Appl. Phys., 103, 104911 (2008).J. Kikkawa, T. Akita, M. Tabuchi, M. Shikano, K. Tatsumi and M. Kohyama: Real-space observation of Li extraction/insertion in Li1.2Mn0.4Fe0.4O2 positive electrode material for Li-ion batteries, Electrochem. [1][2][3][4][5][6][7][8][9][10]規手法や高いレベルの基礎解析技術を築いたこと、②従来解明されていないエネルギー環境材料や金属/無機ナノへテロ界面系の解明でフロンティアを拓いたこと、③基礎解析結果が材料開発や改良に活かされている、あるいはそれが大いに期待できること、などであろう。もちろん、純然たる基礎研究そのものではなく、開発に近いサイドでの成果や期待からの受賞と言える。5 Discussionとまとめより一般的に、新材料開発という活動自体に未だに確固とした方法論や方策(王道)はないという事実があり、このことは、たいへん重いと言える。デバイス開発の見地(第2種基礎研究)からは、様々な知見(第1種基礎研究の成果や第2種基礎研究での経験)を探り、試行錯誤で材料の開発や探索を進めざるを得ない。しかし、その過程(材料を様々に作ってみる過程)自体が、自然(物質)を相手にするため、往々にして誰も経験していない現象や謎にぶつかる。新規性の高い材料を目指す以上、これは当然のことである。その時に外部の誰かが(第1種基礎研究で)解明してくれるのを待つ、というわけにはいかない。開発者や開発者のグループで、現象を探りながら進めることが必要になる。従って、少なくとも、同じ研究組織で第1種基礎研究を併用する、そういう研究者と緊密に連携する、という方策をとるべきであり、これこそが、本格研究としての材料開発のあり方である。一方、第1種基礎研究に携わる研究者は、こうした連携活動を有効に行うためにも、解析手法自体を切磋琢磨し、新手法を開拓し、磨くと言う使命がある。飛躍的な材料開発を行うには、開発(第2種基礎研究)と解析(第1種基礎研究)の「分業」と「連携」を如何にバランスよく、有効に進めるか、ということである。筆者らの経験は限られたものであり、問題点が全て解決されたわけではない。個人の才能に依存した面もある。現時点での教訓、意義は以下のようにまとめられる。第1に、開発グループと基礎解析グループが同じフロアや近い距離で日常的に情報交換しながら連携する組織体制、運営方針の重要性である。第2に、開発現場での最重要課題は、基礎科学的にも価値が高い新奇現象や学際的な現象に関するものが多い。開発現場と連携した基礎研究は基礎研究のレベルをむしろ上げる。もちろん、新しい解析技術の確立など、研究者側の一層の努力を必要とする。こうした展開は、新しい学問領域の創成(例えば、原子・電子レベルの電気化学、触媒化学)につながると言える。第3に、開発と基礎の共同は、開発サイドに新しい視点での材料設計や開発の方策、アイデアを提供する。もちろん、それが真に飛躍的な開発に活かされるには、引き続き様々な努力参考文献も必要である。第4に、こうした材料開発と基礎解析の連携における継続的な経験と知識の蓄積・体系化、それを担いうる人材の育成は、研究機関として継承・発展されるべき「コア・コンピタンス」ではないか、と考えられる。謝辞本稿で紹介した研究例は、材料開発サイドの研究者と共同で行ったものである。特に、リチウムイオン電池について田渕光春氏、鹿野昌弘氏、辰巳国昭氏、燃料電池について安田和明氏(以上、産総研ユビキタスエネルギー研究部門)、金触媒について春田正毅教授(元産総研環境調和技術研究部門、現首都大学東京)、藤谷忠博氏(産総研環境化学技術研究部門)に感謝します。なお、リチウムイオン電池正極材料と燃料電池電極の研究についてはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、燃料電池電極の計算についてはJST(科学技術振興機構)、金触媒の研究については、科学研究費補助金およびJSTの支援を受けました。関係者、関係部局に感謝申し上げます。

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