Vol.2 No.1 2009
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研究論文:ユビキタスエネルギーデバイス開発のための材料基礎解析(香山ほか)−47−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)4.3 金/酸化物ナノへテロ触媒のメカニズム金は一般に不活性であるが、ナノ粒子でTiO2やCeO2の酸化物表面に担持すれば、CO低温酸化や水性ガスシフト反応(水素ガスからCOを取り除くための反応、CO+H2O→CO2+H2)など特異な触媒活性を示す[16]。不活性な金を活性化させるメカニズムが解明されれば、金属/無機ナノヘテロ触媒の設計の可能性が大きく広がる。これまで、触媒開発グループと緊密な連携の下、電顕観察、表面科学、第一原理計算を組み合わせた基礎解析を進めてきた。Au/TiO2系について、電顕観察から界面に優先方位関係が存在し、Au-TiO2間の強い相互作用が推定される。走査プローブ顕微鏡観察など表面科学実験から、TiO2表面が通常のstoichiometric表面(化学量論比的表面、アニオンとカチオンが等量の表面)の場合に比べて、酸素欠損を持つ還元表面(Ti-rich表面)でAu-TiO2間相互作用が強いことが判明した。一方、第一原理計算から、界面がTi-richかO-richのように、stoichiometric(化学量論比)からずれている場合に結合が強く、Au-TiO2間の軌道混成や電子移動が顕著で、触媒活性に影響を与えることが示唆された[17][18]。そこで、より掘り下げて、HAADF-STEM法(絞った電子ビームを走査させ、原子からの高角散乱波で原子列の像を得る方法)による界面原子配列の詳細観察を行い、原子列の位置が同定できる詳細観察に初めて成功した。一方、こうした観察モデルに基づく界面の原子・電子構造の第一原理計算から、Ti-rich界面やO-rich界面の各々が雰囲気に応じて安定化しうること、Ti-rich界面やO-rich界面が特異な電子状態を持つことが明確となった。一方、Au/CeO2系について、(i)電顕観察中にCeO2に担持したAuクラスターが層毎に順に消失し(界面Au第1層のみ残留)、(ii)電子線を停めチャンバー内に放置しておくと同じ場所にAuクラスターが復活する、という現象が発見された[19][20]。こうした雰囲気依存構造変化は触媒特性と関係し、メカニズムの解明が重要である。高温でのCeO2上Au粒子成長がH2雰囲気下で抑制されることから、CeO2の表面酸素欠陥の効果が大きいことが推定される。そこで、HAADF-STEM法を適用し、初めて詳細な界面原子配列像を得ることに成功した(図8)[21]。急峻な界面が存在し、Au-Ce原子層間隔が計測できる。この観察を第一原理計算と比較することで、Ce終端界面が形成されていることが結論できる。雰囲気依存の化学ポテンシャルを含めた理論解析から、CeO2表面やバルクの酸素vacancyへのAuのトラップとCe終端界面の強い結合から、一連の現象が説明できた。現時点では、Au/TiO2系やAu/CeO2系の触媒反応のメカニズムそのものは、完全には解明できていないが、金属/酸化物へテロ触媒の界面構造をこれだけの解像度で明らかにした例はない(国際会議での各種受賞、表1)。この観察に基づく第一原理計算から、界面のstoichiometry(化学量論比)と雰囲気によるその制御が機能の鍵をにぎることが強く示唆された。次のステップとして、ガスの存在する雰囲気での電顕観察、現実的な界面モデルや周縁部モデルの分子吸着・反応パスの第一原理計算が進行中である。以上の成果は、ユニット内外の触媒作成グループとの継続的な連携、緊密な情報交換により、課題や計画を有効に策定することで可能となったものである。4.4 最近の各種受賞以上のような研究活動に対して多くの賞が与えられている。表1に最近の一覧を示す。材料開発と緊密に連携した材料基礎解析の研究成果は多くの注目を集め、基礎科学的にも高い評価を得ていると言える。受賞理由は、①新 Position (nm)Intensity (arb. unts)00.51.01.52.02.53.0日本金属学会2004年秋期大会 優秀ポスター賞 (電顕) 市川 聡MRS 2004 Fall Meeting Poster賞 (電顕) 秋田 知樹MRS 2004 Fall Meeting Poster賞 (電顕) 市川 聡日本MRS 2004シンポジウム 奨励賞 (計算) 田中 真悟触媒討論会 優秀ポスター賞 (電顕) 秋田 知樹日本MRS 2005シンポジウム 奨励賞 (計算) 田中 真悟国際顕微鏡学会 ICM-16 ポスター賞 (電顕) 秋田 知樹IUMRS-ICA 2006 Best Paper Award (電顕) 秋田 知樹日本金属学会金属組織写真賞B部門入賞 (電顕) 田中 孝治日本顕微鏡学会第63回学術講演会優秀ポスター賞(電顕)吉川 純第14回リチウム電池国際会議Most Excellent Poster Paper賞(電顕)吉川 純ICC 14 Pre-Symposium Best Poster Presentation賞(電顕) 秋田 知樹2004年度 2005年度2006年度2007年度2008年度図8 Au/CeO2触媒の電子顕微鏡観察。上側の高分解能TEM像は、CeO2上に接合したAuナノ粒子。下側の像は、同じ構造をHAADF-STEM観察したもの。界面に平行な各原子層に沿って原子像の強度を積分することで、原子層間隔が分析できる(下右図)。表1 研究グループからの最近の主な受賞。

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