Vol.2 No.1 2009
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研究論文:ユビキタスエネルギーデバイス開発のための材料基礎解析(香山ほか)−44−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)り、学理の構築・体系化により、普遍性のある設計理論や指針が構築できる可能性がある。①の観点から様々な課題に機動的に対応するとともに、②のスタンスから長期的に知見を蓄積・体系化していく。後者の知見は、材料開発グループを含めた全体で共有するべきものである。基礎解析グループの独自の達成課題として、開発グループとの連携における課題の具体化・明確化を行うとともに、第1に、実際の材料やシステムの観察技術の確立を図った。これは、後述するような燃料電池やリチウムイオン電池用の独創的な電顕観察手法の開拓などである。第2に、複雑構造の第一原理計算技術の検討と確立を図った。また、理論計算と電顕観察・表面科学手法との連携解析技術の開拓にも取り組んだ。こうしたエネルギー環境材料のための基礎解析技術の開拓は、それ自体が容易な課題ではないが、材料の諸現象や機能の解明の課題を進める中で、並行して行わねばならない。以上の取り組みにより、本章のはじめに記した3つの問題点が全て容易に解決できるとは限らない。しかし、各自が問題点を自覚し、上の取り組みを進める中で、問題点の緩和や克服が確かに進んだと言える。次章で具体的な研究成果、5章で取り組みの教訓を論じる。4 いくつかの顕著な成果の例こうした取り組みを続ける中、いくつかの顕著な成果が生まれ、機能材料開発に活かされるとともに、各種受賞など学術的にも高い評価を獲得した。いくつかの例を紹介する。リチウムイオン電池正極材料の例は新規材料開発に直結する成果、燃料電池のPt/C電極触媒と金/酸化物触媒の例は、材料の開発・改良とともに金属/ナノヘテロ界面の学理の構築・体系化にも大きなインパクトを持つ成果である。また、いずれも基礎解析技術を大きく進展させている。4.1 リチウムイオン電池正極材料の大容量化メカニズムリチウムイオン電池は、Liを含む遷移金属酸化物を正極に、炭素やLi金属、合金を負極に用いる蓄電池であり、重量比の容量や出力が従来の蓄電池よりも飛躍的に優れている。モバイル機器のみならず、自動車用への展開が期待されており、そのために更なる大容量化、高出力化、耐久性・安全性の向上が必要である。充電過程では、Liイオンが電解質を介して正極から負極に移動し、放電過程で逆に負極から正極に戻ってくる。Liイオンを高密度に何度も出し入れできる優れた正極材料の開発が最も重要である。現在、正極材料としてLiCoO2が主に使用されているが、希少金属Coを用いずに大容量、高出力を実現する材料が期待される。産総研の田渕らは、FeとMnを含む大容量の複合酸化物Li2MnO3-LiFeO2(xLi2MnO3-(1-x)LiFeO2)(容量>200 mAh/g)を開発した[6]。この材料を構成するLi2MnO3とLiFeO2は、各々単独のバルク体ではLiイオンの出入りをしない不活性物質である。なぜ、複合化すると活性化し大容量化するのか、そのメカニズムが解明さユビキタスエネルギーデバイスの開発リチウムイオン電池など新規蓄電デバイス用の材料開発正極材料の高容量メカニズム解明組成分布観察固体高分子形燃料電池の開発ポータブルエネルギーの貯蔵材料・触媒材料の開発第一原理計算触媒メカニズムの解明電極の劣化機構解明Au/CeO2触媒電顕像AuCeO2第一原理計算開発への貢献 ・ 基礎研究のFrontier開拓の両面で成果タスク③ : 複雑構造の第一原理計算技術の確立、理論計算と電顕観察との連携解析技術の開拓金属/無機ナノへテロ界面の学理の構築第一原理計算電子顕微鏡観察表面科学手法緊密な連携本格研究の一翼としての材料基礎解析の創造的展開タスク①: 材料開発グループとの緊密な連携体制の構築⇒課題の明確化材料開発G基礎研究としてのFrontier開拓材料基礎解析の役割の明確化 : ①死の谷を乗り越えるための解明 ・ 探索、②シーズの発見、普遍化 ・ 体系化⇒(a)開発との機動的な連携と(b)継続的な体系化の活動タスク② : 実際の材料やシステムの観察技術の確立(燃料電池やリチウムイオン電池用の独創的電顕観察手法の開拓)Pt/C電極電顕像Fe-Mn系正極材料①材料開発上の問題点の解明、設計指針の確立②高い学術レベルの達成 : 各種受賞ヘテロ界面効果ナノサイズ効果ヘテロ触媒燃料電池電極触媒金ナノ触媒ナノコーティング技術金属無機材料金属無機材料Pd/MnO2etc.Au/TiO2etc.Cu/AI2O3etc.Pt/C, Pt-Ru/Cetc.CCCCCCCPtPtPtPtPt図1 ユビキタスエネルギーデバイス開発のための材料基礎解析の取り組み。

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