Vol.2 No.1 2009
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研究論文:グリッドが実現するE-サイエンス(田中)−37−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)るサーバ、画像データをWMSとして提供するMap サーバ、WFS、 WCSなどの高次データを提供するGISサーバ、アカウント管理を行うGAMAサーバおよびVOMSサーバにより構成される。本システムにおいては、現在、環境VO、防災VO、情報VOの3つのVOが存在し、それぞれにおいて実際のユーザが利用する実運用を開始している。ASTERはNASAが打ち上げているTerraという衛星に搭載されたセンサーであるが、実際には2台のセンサーが備えられており、それらの観測結果をもとに地上の標高モデルを求めることができる。ASTERデータはTerraの打ち上げ後ERSDAC(Earth Remote Sensing Data Analysis Center、(財)資源・環境観測解析センター))が管理するテープライブラリに保管され、有償データとしてユーザに提供されてきたが、昨年来産総研にもデータが提供され、産総研においては、ASTERデータはテープライブラリではなくクラスタファイルシステムに保存されている。利用するクラスタ(GEO Gridクラスタ)はGiga-bit Ethernetで接続される36台のdual Xeonノードにより構成され、全体で264 TBの容量を備える。クラスタファイルシステムとしてはGfarm v1.4を用いている。現時点で約140 TBの全ASTERデータが格納され、日々NASAから約70~100 GBのデータが転送され、GEO Gridクラスタに保存されている。メタデータの管理にはPostgreSQLに対してGISの拡張を行なっているPostGISを用い、メタデータはOGSA-DAIによりデータサービスとして提供される。また、データ処理にはGiga-bit Ethernetで結合された256ノードのdual Xeonにより構成されるF32クラスタを用いている。GEO GridクラスタとF32クラスタは10 Giga-bit Ethernetで接続されている。また、産総研のASTERデータおよびMODIS(Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)[22]データと、台湾のNSPO (National Space Organization)が保持するFormsat2のデータを同時に検索するDatabase連携アプリケーション「DB連携アプリケーション」を構築して実際に複数の組織に管理される複数のデータベースを統合するGEO Gridの実証実験を行った。「データの検索」「数値地形モデルへの変換」および「結果の転送」のそれぞれが個別のサービスとして実装され、それらがGSIおよびVOMSによる認証認可をベースに連携することにより上位のサービスとして提供され、統合されてVOを構成し、アプリケーションコミュニティに対して研究環境が提供されることを確認した。また、この他にもASTERデータとフリーなセンサーデータを連携させるアプリケーションや、検索結果をWFSで返すアプリケーションなどを通じ、提案したセキュリティアーキテクチャがアプリケーションおよびサービス提供者の要求に応じた適切なアクセス制御を実現することが確認された。6 考察ここでは、今回のシステム構築および実運用を通じて得られた知見、考察を記す。各ソフトウエアコンポーネントの予備評価およびASTER Gridシステムの開発・テストを通じ、我々はGEO Grid情報基盤の設計および実装の妥当性を検証することができた。GAMAとVOMSを用いたセキュリティフレームワークにより、ユーザに対しては簡便なインタフェースを提供し、サービス提供者に対してはポリシーに応じた柔軟なアクセス制御が実現可能であることが確認された。また、VOMSを用いたVOレベルでのアクセス制御により、ユーザ数に対してスケーラブルなセキュリティ機構が実現される。GAMA、 VOMS、 OGSA-DAI、 Globus Toolkitなど、既存のソフトウエアおよびツール群を利用することにより、少ない開発コストで実システムを構築することができた。アプリケーション用ポートレット以外に、情報基盤側で行なった開発はVOMSとGAMAのインタフェースをGridSphereに組み込む部分のみであった。すべての要素技術が標準プロトコルおよび標準インタフェースに基づいて設計・実装されることにより、多数の独立な要素技術を連携させて上位のシステムを容易に構築することができた。グリッドの実システムの構築においては、欧州のEGEEで開発されているgLite Grid Middleware[23]を用いた高エネルギー物理学における大規模加速器実験のデータ解析システムや、日本の超高速コンピュータ網形成プロジェクトで開発されたNAREGIミドルウエア[24]を用いて大学・研究機関上に大規模研究グリッドを構築するCyber Science Infrastructure計画など、巨大なミドルウエアパッケージを開発・利用するものが多い。米国Earth System Grid[25]やGEON[26]などはGEO Gridと同様に地球観測データを統合した研究環境の構築を目指している。いずれも一部でグリッドセキュリティに基づく認証・認可を利用しているが、ほとんどはWebサービスに基づく非グリッド技術により構成される。GEO Gridのように様々なグリッドミドルウエアを用いてサービスとして提供されるデータや計算を組み合わせてVOを構成し、グリッドセキュリティに基づく柔軟なアクセス制御に基づく研究環境を構築する例は独自性が高く、本稿で述べたようにすべてが標準的なセキュリティおよびプロトコルに従って実装されていればグリッドミドルウエアを連携させ、容易に大規模な実システムを構築できることを示した本研究の意義は大きい。今回のシステム構築を通じ、今回利用した要素技術については問題なく利用できることが確認された。今後真の実

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