Vol.2 No.1 2009
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研究論文−1−Synthesiology Vol.2 No.1 pp.1-11(Feb. 2009)1 はじめに情報処理技術の適用領域は益々拡大している。それにともない日常生活を支援する情報サービスが望まれてきている。そのためには様々な状況において人が何を目的としているか、という日常生活行動を計算論的レベルで記述したモデルが必要となる。この計算論的モデルを利用することで、ユーザの行動からその背後にある要求や期待している結果を予測し、システムがそれを速やかに実現することで日常生活を支援する新たなサービス開発が可能となる。またそうした人間との協調動作を日常生活中でシステムが実行し続けることで、これまでの実験室環境では得られなかった大量で意味のあるデータが獲得できるようになる。この大規模なデータを用いて、絶えずモデルを更新しつつサービスを運用し続ける循環を産み出すことができる。しかし、こうした日常生活中においては不確実な情報(例えば、真か偽に断定できないような予測や不完全な観測情報)のもとでの情報処理が本質的に重要となり、これまでのシステムの記述方式で中心的な役割を果たしていた決定論的なアプローチから非決定論的アプローチへのパラダイムシフトが必要になる。非決定論的アプローチとは、あいまいで不確実な情報をできるだけそのまま取扱い、計算するアプローチである。対象となる変数を確率分布として計算し、推論を行う確率的推論もその一つである[1]。この確率的推論は事後確率を最大化するパターン識別器などではナイーブベイズや隠れマルコフモデル(HMM)として自然に用いられてきたものでもある。さらに意思決定理論に基づいてシステムを制御し、有用な知識を表現し、複雑な処理を行うためには、多数の変数からなる高次元確率分布の計算が必要になる。変数の数が膨大になると高次元確率分布の計算は困難になるため、局所的には低次元の確率分布を用いて近似する他なく、そのために変数間の関係を規定したグラフ構造を導入する。このようなグラフ構造を持つ多次元確率分布モデルとしてベイジアンネットワーク(以下ベイジアンネット)[2]がある。ベイジアンネットは多変数の間の依存関係を条件付き確率とネットワーク構造により規定した一般的なモデルである。またベイジアンネットは大規模データからの統計的学習によってモデルを構築でき、これもまた不確実性に対処するためには重要な性質となる。研究論文本村 陽一ベイジアンネットワークの統計的学習、確率推論技術とユーザモデリング技術、大規模データ収集技術を要素技術として構成した生活行動予測モデルの構築技術について述べる。また因果的な構造をグラフィカルモデルであるベイジアンネットワークを状況や文脈も含んだ大規模データから構築するための必然から生まれた「実サービスを通じた調査・研究」の概念についても議論する。大規模データからの日常生活行動予測モデリング− 実サービスを通じたベイジアンネットワークの学習と推論 −Yoichi MotomuraDaily life behavior modeling from large scale data- Statistical learning and probabilistic reasoning of Bayesian networks through real services -Daily life behavior modeling is discussed. This modeling framework consists of statistical learning, probabilistic reasoning, user modeling, and large-scale data collecting technologies. Bayesian networks can represent causality relationship as graphical structures. Such models should include situations and contexts of daily life behavior through real services. In order to collect large-scale data connected with them, we have to provide real services supported by many users. This concept is named “Research as a service” and discussed in this paper.キーワード:ベイジアンネットワーク、統計的学習、確率推論、ユーザモデル、行動分析、知識循環Keywords:Bayesian network, statistical learning, probabilistic reasoning, user model, behavior analysis, knowledge circulation産業技術総合研究所 サービス工学研究センター/デジタルヒューマン研究センター 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2/〒135-0064 江東区青海2-41-6 Center for Service Research/Digital Human Research Center, AIST Tsukuba Central 2, Umezono 1-1-1, Tsukuba 305-8568, Japan/Aomi 2-41-6, koto-ku 135-0064, Japan E-mail:Received original manuscript September 24, 2008, Revisions received January 13, 2009, Accepted January 13, 2009

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