Vol.2 No.1 2009
35/94

研究論文−32−Synthesiology Vol.2 No.1 pp.32-41(Feb. 2009)1 はじめに近年、ネットワーク技術の進歩およびネットワーク基盤の普及にともない、高速ネットワークで接続された高性能計算機、データベース、大規模記憶装置、実験装置などの様々な資源を統括的に利用し、科学技術における新発見や融合研究領域などの新たな研究分野の創出を促進する科学技術研究手法であるE-サイエンスに関する研究が盛んに行われている。グリッド[1]は、高速ネットワークで接続された様々な資源を安全に、動的に、かつ柔軟に組み合わせて利用する技術であり、E-サイエンスを支える基盤技術として期待されている。グリッドという用語が初めて使われてから約10年が経ち、グリッドの要素技術の研究開発は進み、グリッドは実証実験の段階から実用化に移る時期を迎えている。一方、近年は地球温暖化などの環境問題、地震や洪水などの災害予測・対策、および天然資源探索などの地球観測に関する問題が重要になっている。これらの分野では、衛星データ、センサーデータや地質図などの、複数の組織が保持する複数のデータを参照し、データ解析やシミュレーションを実行する必要がある。データ所有機関のポリシーに従いつつ、複数のデータベースを検索して解析を行う作業は簡単ではなく、それを容易に実現するシステムの開発が期待されていた。これは、まさしくグリッドを用いて実現できるものであり、GEO (Global Earth Observation) Gridの研究開発が進められることとなった。GEO Grid[2]-[4]は、グリッド技術を用い、地球観測衛星データなどの大規模アーカイブおよびその高度処理を行い、分散環境下の各種観測データや地理情報システムデータと統融合した処理・解析を、ユーザが手軽に扱えることを目指したシステムかつコンセプトであり、地球観測に関わる多種多様なデータや計算を研究コミュニティや事業者が安全・安心に利用できる環境の提供を目指している。産総研の有する地質情報と衛星情報との情報融合を進め、さらに広く地球観測情報との融合化を図り、また、国際連携を積極的に推進し、特にアジアにおける高度利用を重点的に展開する計画である。この際に国際的な標準動向に配慮し、情報システムとデータの国際的な相互利用性を確保することを目指している。田中 良夫 本稿では、新たな科学技術手法として注目されているE−サイエンスの実装例として、地球観測グリッド(Global Earth Observation Grid、 GEO Grid)の情報処理基盤の設計と実装について報告する。GEO Gridは、グリッド技術を用いて複数の組織の有するデータや計算を統合し、仮想的な研究環境を構築して提供する。幅広い応用分野のコミュニティにグリッドを用いたE-サイエンスの実例を提示するとともに、多数のソフトウエアコンポーネントを組み合わせて大規模システムを構築する手法を示す。グリッドが実現するE-サイエンス− 地球観測グリッド(GEO Grid)の設計と実装−Yoshio Tanaka How Grid enables E-Science?- Design and implementation of the GEO Grid -In this paper, we report on the design and implementation of the GEO (Global Earth Observation) Grid IT infrastructure as an example of E-Science. Using Grid technologies, the GEO Grid provides an IT infrastructure that integrates wide varieties of data sets and computing services for the Earth science community. This paper presents an example of Grid-based E-Science and its application to a wide range of scientific communities. A methodology for system development based on many different software components is also discussed.キーワード:キーワード:グリッド、GEO Grid、E−サイエンス、ミドルウエア、システム構成論Keywords: Grid, GEO Grid, E-Science, middleware, software design産業技術総合研究所 情報技術研究部門 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 Information Technology Research Institute, AIST Tsukuba Central 2, Umezono 1-1-1, Tsukuba 305-8568, Japan E-mail:Received original manuscript October 16,2008, Revisions received December 21,2008, Accepted December 21,2008

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です