Vol.2 No.1 2009
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研究論文:産業技術の社会受容(松本ほか)−30−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)執筆者略歴松本 光崇(まつもと みつたか)1994年京都大学工学部卒業、1996年同修士課程修了。2002年東京工業大学博士課程修了、博士(学術)。NEC中央研究所勤務を経て、2006年産総研入所。修士課程までは人工知能分野で認知現象・言語現象のモデル化研究に従事。博士課程以降は社会現象のモデル化と応用の研究に従事。本論文ではモデル構築、ツール開発、普及分析を担当した。近藤 伸亮(こんどう しんすけ)1999年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)。東京大学人工物工学研究センター、東京都立大学大学院工学研究科を経て、2005年産総研入所。環境調和設計、循環型生産システムな吉川弘之,内藤耕:「産業科学技術」の哲学,東京大学出版会, 東京 (2005).東大先端研:平成18年度 温暖化対策の技術選択モデルに関する調査報告書, (2007).松本光崇、近藤伸亮、藤本淳、梅田靖,槌屋治紀,増井慶次郎,李賢映:クリーンエネルギー自動車の普及評価モデルの構築, エネルギー・資源, 29(3), 49-55 (2008).F. M. Bass: A new product growth model for consumer durables, Management Science, 15(1), 215-227 (1969).V. Mahajan, E. Muller and Y. Wind eds.: New product diffusion models, Kluwer Academic Publishers, New York (2000).片平秀貴:マーケティング・サイエンス,東京大学出版会, 東京 (1987).J. H. Roberts and G. L. Urban: Modeling multi attribute utility, risk and belief dynamics for new consumer durable brand choice, Management Science, 34(2), 167-185 (2000).長谷川貴彦,吉田好邦,松橋隆治:消費者の選好を考慮した燃料電池自動車の普及可能性評価, エネルギー・資源, 27(2), 46-52 (2006).R. Dolan and A. Jeuland: Experience curves and dynamic demand models: implications for optimal pricing strategies. Journal of Marketing, 45, 52-62 (1981).槌屋治紀,小林紀:学習曲線による燃料電池コストの分析, エネルギー・資源 , 24(4), 57-64 (2003).M.Matsumoto, S.Yokota, K.Naito and J.Itoh: Development of a calculation method estimating science-based innovation impact, Proceedings of the R&D Management Conference 2008, (2008).参考文献[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11]注1)例としては森田他によるAIM End-use model 等。注2)出典:資源エネルギー庁「平成16年度電力需給の概要」 直接の出典は省エネルギーセンターHP(http://www.eccj.or.jp/catalog/2006s/memo/3.html)注3)冷暖房兼用・壁掛け型・冷房能力2.8 kWクラス・省エネルギー型の代表機種の年間電力消費量の単純平均値は、1994年に412 kWh、2005年に227 kWhと半分近くに減った。出典:日本エネルギー経済研究所編「2006年版 エネルギー・経済統計要覧」p.101.注4)省エネルギーセンターHP(http://www.eccj.or.jp/catalog/2006s/memo/13.html)注5)普及台数は、100世帯あたりの保有台数255.5台(2007年3月、出典:内閣府「消費動向調査」)と、日本の世帯数5,171万世帯(2007年3月、出典:総務省「住民基本台帳」)とから約1億3000万台と推定した。どの研究に従事。本論文では消費者選好モデルの構築とコンジョイント分析を担当した。査読者との議論 議論1 研究目標の明確化とモデルの検討過程の記述について 質問・コメント(持丸 正明)“構成学”としてみたとき、当該論文の特徴は、3つの技術(特にBassモデルと消費者選好モデルの2つ)を統合した点にあると理解しました。これは、アウフベーヘン型(図a)の構成学であると考えることができそうです。(小林;Synthesiology, 1(2), p.141 (2008)) 本研究論文は、この2つ(もしくは3つ)の技術を統合したという点のみならず、研究目標の設定とモデルの検討を繰り返した工程にも構成学としての情報があるように思います。Synthesiology誌の趣旨は「社会的に意味のある問題を解決するための技術統合に関する知識体系のアーカイブ」にあります。第1節の最後の段落に書かれている工程は、構成学としての知識のアーカイブに値すると思います。これを、単に「何度も繰り返した」と書くだけでなく、どのような目標設定をして、それに応じてどのようなモデルを検討し、それを評価した結果として、なぜ、それを断念したか、また、どういう理由で次の目標設定をしたのかという「技術統合(構成)の検討過程」を具体的に記載していただきたいのです。すべての検討過程を記載するのは冗長であるかも知れませんが、重要な検討過程をピックアップして記述することで、「なぜ、これらのモデルを選び、組み合わせたか」「このモデルの組合せによる(当面の)技術的限界がどこにあるか」などを明らかにできると考えます。その場合、論文の章立てをどのようにするかも難しいところです。第2節(目標の明確化)の末尾に書かれているとおり目標のうち明確に決定されていたものと自由度を持っていたものがあり、これらの自由度のある目標の設定が、第3節のモデルの統合といかに関わったのか、どのような検討過程と評価を経て、目標設定とモデルとが収斂したのかを、第4節(冒頭、もしくは、末尾)に述べて頂くというのではどうでしょうか。回答(松本 光崇)現象をモデル化する場合、特に自然現象よりも人間現象や社会現象をモデル化する場合には、現象の全側面をモデル化することはできませんから、常に「現象のどの側面に焦点を当てるのか(=目標設定)」を明確にしながらモデルを検討していくことが本質的に重要になると考えます。またその過程でモデルの良し悪しを判断する基準は最終的には「説得力」ということになると思いますが、自然現象の場合はモデルや理論がいかに正確に現象を説明し再現するかが説得力の拠り所になるのに対して、人間現象・社会現象の場合には実験が困難なため再現性を説得力にできないことが少なくありません。その場合に何をもってモデルの説得性とするかを考える必要があります。図a 構成方法のタイプ統合技術技術要素A技術要素B統合技術統合技術重要技術要素A技術要素A技術要素B技術要素C周辺技術要素B周辺技術要素C1.アウフヘーベン型2.ブレークスルー型3.戦略的選択型
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